著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Journal of Food Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究のねらい

コンブチャは、茶葉と砂糖に細菌と酵母の共生培養物を加えて発酵させた、酸味と微炭酸をもつ飲料です。発酵によって有機酸やポリフェノールなどの成分が生じ、抗酸化作用や抗炎症作用との関連が論じられてきました。一方で、運動をする人がコンブチャを飲んだときに体内でどのような反応が起きるかは、これまで調べられていませんでした。

ランニングのような有酸素運動は体に大きな負荷をかけます。その結果、血液中の免疫細胞の数や分布が一時的に変わったり、体内で活性酸素などの反応性の高い分子が増え、それを打ち消す抗酸化の仕組みとの釣り合い(酸化還元バランス)が崩れたりすることが知られています。

研究チームは、緑茶コンブチャを飲むことで、運動直後の一時的な反応(急性効果)と、12週間のトレーニング期間を通じた変化(慢性効果)の両方において、免疫と酸化ストレスの指標が変わるかどうかを検証しました。あわせて、アントシアニンなどのポリフェノールを多く含むブドウ果皮の抽出液を加えることで効果が高まるかどうかも調べました。

どのように調べたか

対象は、身体活動量が低〜中程度で、体格指数(BMI)が標準範囲の18〜45歳の男女90人です。参加者は30人ずつ3つの群に割り付けられました。コンブチャを飲まない対照群、緑茶コンブチャ群、ブドウ果皮抽出液を加えた緑茶コンブチャ群です。コンブチャ群の参加者は、毎日200mLを12週間飲みました。全員が指導者の監督のもとで週3回のランニングトレーニングを行い、強度の大部分を低強度とする方式で、走る量を少しずつ増やしていきました。

コンブチャは味や酸味ですぐに見分けがつくため、偽の飲料(プラセボ)は用いていません。参加者も研究者も、どの群に入ったかを知っている「非盲検」の試験です。ただし、血液を分析する検査担当者には群の割り付けを伏せていました。

試験の初日と12週間後には、空腹時に採血したあと、コンブチャ(対照群は水)を飲み、陸上トラックで疲れ切るまで速度を段階的に上げて走るテストを行い、その直後にも採血しました。血液からは、白血球の種類別の数や比率、抗酸化能、酸化ダメージの指標などを測定しました。

主要評価項目、つまり試験で最も重視した指標は、12週間後の血漿の総抗酸化能(FRAP)です。FRAPは、血液中の抗酸化物質が鉄イオンを還元する力を測るものです。このほか、過酸化水素を分解する酵素カタラーゼの活性や、脂質が酸化されたときにできる物質(マロンジアルデヒド、MDA)の量なども調べました。

主な結果

90人全員が初日の評価を終え、12週間の試験を完了したのは各群21人の計63人でした。著者らは、コンブチャの摂取に直接関連すると判断された有害事象はなかったと報告しています。

1回の運動の前後で比べると、どの群でも運動によって白血球、好中球、リンパ球、単球、血小板の数が増え、カタラーゼ活性も上昇しました。ただし、こうした運動直後の反応に、群による差は見られませんでした。

最も重視した総抗酸化能(FRAP)は、12週間後もコンブチャ群と対照群の間に差がありませんでした。

副次的な指標では、緑茶コンブチャ群でいくつかの変化が見られました。空腹時の白血球に占める好中球の割合が増え、リンパ球の割合が減りました。空腹時のカタラーゼ活性は、対照群が低下したのに対し緑茶コンブチャ群ではわずかに上昇し、両群に差がありました。運動後のMDAも、緑茶コンブチャ群では54.19%減少しました。ただし、MDAについては、群を個別に比べた検定では有意な差は確認されていません。

さらに重要な点として、多くの指標を同時に検定したことによる偶然の当たりを補正すると、これらの副次的な結果はいずれも統計的な有意性を保てませんでした。そのため研究チームは、これらを確定的な効果ではなく、探索的な所見と位置づけています。

ブドウ果皮入りコンブチャ群は、これらの指標で対照群と目立った違いを示しませんでした。ブドウ果皮のポリフェノールがコンブチャの抗酸化作用を高めるという当初の仮説は、今回の結果では支持されなかったと著者らは述べています。

群に関係なく見られた変化もあります。12週間のトレーニングの後、全体として過酸化水素が増え、カタラーゼや抗酸化酵素SODの活性が低下し、空腹時のMDAが増えていました。著者らはこれを、今回のトレーニング内容によって体が酸化に傾いた状態が生じたものと解釈しています。

この研究が示すこと

著者らによれば、この研究はランナーを対象にコンブチャの影響を調べた初めてのランダム化比較試験です。結果として、緑茶コンブチャを12週間飲んでも、主要な指標である血液の総抗酸化能は変わりませんでした。白血球の構成やカタラーゼ活性などに見られた変化は、多重比較の補正後には有意でなくなる、探索的な段階の手がかりにとどまります。

また、ブドウ果皮を加えても上乗せの効果は確認されませんでした。運動によって起こる免疫や酸化ストレスの変化は、主に運動そのものによって生じていたというのが、この試験から読み取れる全体像です。

原著論文の著者・所属:Dandara Baia Bonifácio(Department of Nutrition and Health Universidade Federal de Viçosa Viçosa Brazil)、Rayanne Santos de Paulo(Department of Nutrition and Health Universidade Federal de Viçosa Viçosa Brazil)、Pedro Henrique Viana Mendes(Department of Physical Education Universidade Federal de Viçosa Viçosa Brazil)、Udielle Vermelho Lacerda(Department of Food and Technology Universidade Federal de Viçosa Viçosa Brazil)、Rodrigo Rezende Cardoso(Department of Food and Technology Universidade Federal de Viçosa Viçosa Brazil)、Helton de Sá Souza(Department of Physical Education Universidade Federal de Viçosa Viçosa Brazil)、Frederico Augusto Ribeiro de Barros(Department of Food and Technology Universidade Federal de Viçosa Viçosa Brazil)、Josefina Bressan(Department of Nutrition and Health Universidade Federal de Viçosa Viçosa Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dandara Baia Bonifácio, Rayanne Santos de Paulo, Pedro Henrique Viana Mendes, et al. Acute and Chronic Effects of Green Tea Kombucha With and Without Grape Skin Extract on Immune and Oxidative Stress Markers in Beginner Runners: A Randomized Controlled Trial. Journal of Food Science 2026-09-01. DOI: 10.1111/1750-3841.71505. 原著ライセンス:CC BY.