著者の所属・活動拠点の国は、ブルガリアです。

掲載誌:Acta Scientiarum Polonorum Technologia Alimentaria

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

ビスケットは広く食べられている菓子で、食事に加わる糖分の供給源にもなります。研究チームは、材料の見直しによって栄養面を改善しつつ、おいしさも保てる焼き菓子の開発に取り組みました。

この研究の目的は、古代穀物の一種であるヒトツブコムギの粉とオーツ麦を主な原料とするビスケットに、ブルガリア産サクランボ品種「コサラ」の乾燥果実を加え、その性質を調べることです。調べた性質は、物理化学的な特性、栄養組成、生理活性に関わる成分、食感です。著者らは、この地元の品種をビスケットに使う試みは既存の研究で十分に調べられておらず、そこに本研究の新しさがあると述べています。

どのように調べたか

研究チームは、生のコサラを洗って種を取り、果物用乾燥機で35℃、60時間乾燥させました。ビスケットは3種類作りました。比較の基準となる対照品は、押しオーツ麦、ヒトツブコムギ粉、アカシア蜂蜜、ヒマワリ油、ベーキングパウダー、チアシードに、レーズンを加えたものです。「バリエーション1」はレーズンを同じ割合の乾燥サクランボに置き換えたもの、「バリエーション2」は蜂蜜を除き、乾燥サクランボの割合をさらに増やしたものです。

測定項目は多岐にわたります。重さや大きさ、水分、酸度、色合い、焼き色の度合いを示す褐変指数、ビタミンC、総ポリフェノール量、総フラボノイド量、抗酸化活性、硬さなどの食感を測りました。総ポリフェノール量とは、植物に含まれるポリフェノール類の総量を表す指標です。栄養成分は、各材料の成分値をもとに計算で求めました。さらに、焼き菓子の評価に慣れた10人のパネルが、外観、色、香り、味、食感、総合的な好ましさを9段階で評価しました。

主な結果

乾燥サクランボを加えたビスケットでは、ポリフェノールとフラボノイドが増えました。論文の報告によると、総ポリフェノール量は対照品で1グラムあたり没食子酸換算0.40ミリグラムでした。バリエーション1では0.46ミリグラム、サクランボの多いバリエーション2では0.81ミリグラムとなり、いずれも統計的に有意な差がありました。フラボノイドは対照品では検出されず、バリエーション1と2では検出されました。抗酸化活性も、多くの測定方法でサクランボの割合が高いほど大きい傾向でした。

一方、ビタミンCは全体に低い値でした。3種類の間に統計的な差は見られず、レーズンをサクランボに置き換えてもビタミンCは大きく増えませんでした。著者らは、果実の乾燥と180℃での焼成によってビタミンCが分解された可能性を挙げています。

見た目と食感も変わりました。新しいビスケットは対照品より明るさと鮮やかさが低く、褐変指数も低い値でした。硬さとまとまりの度合いも低下しました。計算上の栄養成分では、糖質と炭水化物が対照品より少なく、脂質とたんぱく質に大きな違いはありませんでした。ただし食物繊維は減りました。

官能評価では、色と味の点数がバリエーション2で対照品より有意に高くなりました。総合的な好ましさは、対照品が7.5点、バリエーション1と2がいずれも8.1点で、統計的な差はありませんでした。

この研究が示すこと

著者らは、乾燥コサラをビスケットに加えると、ポリフェノールやフラボノイドの量と抗酸化活性が高まると報告しています。また、計算上の糖質も少なくなり、食べた人の評価も損なわれなかったと結論づけています。

一方で著者らは、解釈の注意点も明記しています。血糖値の上がり方は調べていないため、糖質の減少は計算上の栄養組成の改善にとどまり、血糖への効果を示すものではありません。また、サクランボの量と成分・色・食感の関係は、正式な相関分析をしていないため慎重に解釈すべきだとしています。これらの点を踏まえると、この研究は、地元産の果物の品種を焼き菓子の材料として活かせる可能性を、成分と食べやすさの両面から示したものといえます。

原著論文の著者・所属:Maria Dimitrova-Dimova(Department of Biochemistry and Nutrition , University of Food Technologies Maritza Blvd. 26 , Plovdiv , Bulgaria)、Maritza Blvd. , Plovdiv, Bulgaria、Pavlina Doykina(Department of Biochemistry and Nutrition , University of Food Technologies Maritza Blvd. 26 , Plovdiv , Bulgaria)、Aneta Popova(Department of Biochemistry and Nutrition , University of Food Technologies Maritza Blvd. 26 , Plovdiv , Bulgaria)、Dasha Mihaylova(Department of Microbiology and Biotechnology , University of Food Technologies Maritza Blvd. 26 , Plovdiv , Bulgaria)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Maria Dimitrova-Dimova, Maritza Blvd. , Plovdiv, Bulgaria, Pavlina Doykina, et al. Physicochemical, bioactive, and textural evaluation of biscuits enriched with dried cherry fruit [pdf]. Acta Scientiarum Polonorum Technologia Alimentaria 2026-11-03. DOI: 10.17306/j.afs.001564. 原著ライセンス:CC BY.