著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:Food Science & Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
セリアック病は、小麦などに含まれるたんぱく質「グルテン」を摂ることで腸に免疫反応による障害が起きる病気です。患者はグルテンを除いた食事を続ける必要があります。ただ、市販のグルテンフリー食品は糖分・脂肪・塩分が多く、たんぱく質や食物繊維が少ない傾向があり、味の面でも劣りやすいと指摘されてきました。ビスケットのような焼き菓子は手軽に選ばれやすい一方、トウモロコシや米の粉を主原料にすると栄養面が乏しくなりがちです。
そこで研究チームは、白キヌア粉、チアシード粉、ひよこ豆粉のいずれか1種類だけを主原料にしたグルテンフリービスケットを作り、小麦粉のビスケットと比べました。これまでの類似研究ではコーンスターチや米粉が主な材料に使われており、他の粉を混ぜずにこれらの粉だけで作った点が本研究の特徴だと著者らは述べています。また著者らによれば、チアシードを粉にしてグルテンフリービスケットに使った研究はこれまでありませんでした。さらに、脂肪を減らした場合に品質がどう変わるかも調べています。
何を調べたか
ビスケットは、小麦粉・白キヌア粉・チアシード粉・ひよこ豆粉の4種類の粉それぞれについて、脂肪を粉の量に対して40%使う「全脂肪」と20%に減らした「半脂肪」の2通りで作られました。
比較した項目は、たんぱく質や食物繊維などの栄養成分、植物に含まれ抗酸化作用などが知られる「フェノール化合物」、脂肪の中身を示す脂肪酸の組成、pH、焼いたときの生地の広がり具合、硬さ、色、エネルギー量、そして5段階で好ましさを評価する官能評価(割れ方、見た目、風味、噛みごたえ、総合評価)です。統計解析では、粉の種類と脂肪量という二つの要因が結果にどう影響するかが検討されました。
主な結果
原料の粉を比べると、3種類のグルテンフリー原料はいずれも小麦粉よりたんぱく質、脂肪、食物繊維、灰分(ミネラル分の目安)が多く、炭水化物が少なくなっていました。中でもチアシード粉は、たんぱく質、脂肪、食物繊維、灰分が最も多く、炭水化物が最も少ない原料でした。
ビスケットにすると、チアとひよこ豆のビスケットは小麦のビスケットよりたんぱく質が多く、チアのビスケットは食物繊維が最も多く、炭水化物が最も少ないという結果でした。一方、これらの栄養成分に対して脂肪量の違いによる有意な影響は見られませんでした。
フェノール化合物は粉によって違いがあり、チアのビスケットではバニリン酸とロスマリン酸、ひよこ豆のビスケットではカフェ酸、キヌアのビスケットではナリンギンがほかのビスケットより有意に多く含まれていました。脂肪酸では、3種類のグルテンフリービスケットはいずれも小麦のビスケットよりリノール酸が多く、チアのビスケットは小麦のビスケットよりリノレン酸が多くなっていました。フェノール化合物と脂肪酸のいずれについても、脂肪量の違いによる有意な影響は報告されていません。
性質の面では、小麦のビスケットのpHが9.30〜9.35だったのに対し、グルテンフリービスケットは7.40〜7.93でした。グルテンフリービスケットは小麦のビスケットより焼いたときの広がりが有意に大きく、硬さには粉の種類による有意な差がありませんでした。硬さに影響したのは脂肪量で、脂肪を減らしたビスケットのほうが硬くなりました。色は粉によって異なり、小麦のビスケットとの色の差は人の目で見分けられる程度でした。チアのビスケットは黒っぽい色をしていました。
官能評価では小麦のビスケットが最も高い点数を得ましたが、グルテンフリービスケットも、満足できる目安とされる4点を上回りました。キヌアとひよこ豆のビスケットの点数は小麦に近かった一方、チアのビスケットは見た目や割れ方の点数がやや低くなりました。脂肪の多いビスケットは、柔らかさを反映して割れ方の評価が高めでした。
研究が示すこと
この研究は、小麦粉を使わず、白キヌア、チアシード、ひよこ豆の粉だけでも、受け入れられやすい味や食感のビスケットを作れることを示しました。あわせて、たんぱく質やフェノール化合物、多価不飽和脂肪酸といった成分の面で小麦のビスケットとの違いを報告しています。著者らは、栄養・食感・評価点を総合するとひよこ豆のビスケットが有力な選択肢になると考えており、最もエネルギーが低かったことから、脂肪を減らしたひよこ豆のビスケットは肥満の人にも向く可能性があるとしています。グルテンフリー食品の選択肢を栄養と食べやすさの両面から広げる手がかりとなる研究です。
原著論文の著者・所属:Seda Yalcin(Food Processing Department, Afyon Vocational School Afyon Kocatepe University Afyonkarahisar Türkiye)、Azize Atik(Food Processing Department, Afyon Vocational School Afyon Kocatepe University Afyonkarahisar Türkiye)、İlker Atik(Food Processing Department, Afyon Vocational School Afyon Kocatepe University Afyonkarahisar Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Seda Yalcin, Azize Atik, İlker Atik. Nutritional Quality, Phenolic Compounds, Fatty Acid Composition, Texture, and Sensory Properties of Full‐Fat/Semi‐Fat Quinoa, Chia, or Chickpea Biscuits Developed for Celiac Patients. Food Science & Nutrition 2026-09-01. DOI: 10.1002/fsn3.72399. 原著ライセンス:CC BY.