著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:Asian Journal of Dairy and Food Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
乳製品を使わないシュリカンドを目指して
シュリカンドは、発酵させた乳を布でこして水分(ホエイ)を切った「チャッカ」と呼ばれる凝乳に、甘味料や果物、香りづけの材料を混ぜて作るインドの伝統的な発酵デザートです。半固形のなめらかな口当たりと甘酸っぱさが特徴ですが、本来は乳製品です。
乳糖不耐症への配慮や健康志向、倫理的な理由から、植物性の食品を求める人が増えています。ただし、植物性の原料は乳と成分が異なるため、とろみや食感、色、味わいを乳製品並みに整えるのは技術的に難しいとされています。研究チームによると、乳製品を使わないプロバイオティクス入りシュリカンドの品質を体系的に調整した研究は限られていました。
そこで著者らは、豆乳とココナッツミルクを乳の代わりに使い、マンゴーとパパイヤの果肉、そしてジャガリー(サトウキビなどから作る未精製の砂糖)を加えたプロバイオティクス入りの植物性シュリカンドを開発し、その品質を評価しました。
配合を変えた4種類を試作
研究チームは、ココナッツミルクと豆乳の割合を変えた4種類の試作品(T1〜T4)を用意しました。豆乳の割合はT1が40%、T2が30%、T3が20%、T4が10%で、残りがココナッツミルクです。豆乳の割合を減らすにつれて、マンゴーとパパイヤを同量ずつ合わせた果肉の量を5%から20%まで増やしました。比較対象には、水牛乳から作ったチャッカに砂糖を加えた従来型のシュリカンドを用いました。
作り方は、混ぜ合わせた植物性ミルクを加熱して冷ました後、乳酸菌などの複数の菌株を含むスターターを加えて10〜12時間発酵させ、固まったものを布でこしてチャッカにするというものです。そこにジャガリーと果肉を混ぜ、なめらかになるまで泡立てて仕上げました。
評価では、大学院生や教員からなる15人の評価者が、色、味、食感、風味などを「非常に好き(9点)」から「非常に嫌い(1点)」までの9段階で採点しました。あわせて、機器を使って粘度(とろみの強さ)、色、食感(硬さや弾力など)を測定し、酸性度や水分、脂肪などの成分も分析しました。
ココナッツミルク80%の配合が最も好まれた
官能評価では、植物性の試作品はいずれも色、食感、風味、味で従来型を上回る傾向を示し、なかでもココナッツミルク80%・豆乳20%のT3が総合評価で最も高い8.25点を得ました。従来型は7.25点でした。研究チームはT3を最適な配合として選び、従来型と詳しく比較しました。
論文によると、T3は従来型と比べてpHが低く(4.1と4.5)、糖度は低め(49.40度と55.60度)でした。著者らは糖度の低下を、砂糖をジャガリーに置き換えたためと説明しています。水分はT3のほうが多く、果肉を加えたことによると考えられています。
粘度はT3が234センチポアズ、従来型が230センチポアズで、T3がわずかに高い結果でした。色の測定では、従来型のほうが白く明るい一方、T3は赤みと黄色みが強く出ており、著者らはこれを果肉とジャガリーによるものとしています。食感の測定では、T3は硬さが65.92ニュートンと従来型の52.61ニュートンより高く、まとまりやすさや弾力もやや上回りました。研究チームは、T3が従来型よりしっかりとした食感をもつとまとめています。
伝統の味を植物性で再現する一つの道筋
この研究は、豆乳とココナッツミルクを組み合わせ、果肉とジャガリーで味や色を整えることで、乳製品を使わずにシュリカンドらしいデザートを作れることを示しました。評価者による採点では、最適化した配合が従来の水牛乳製を上回る好まれ方をしています。
著者らは、このプロバイオティクス入り植物性シュリカンドが、ビーガンの人や乳糖不耐症の人に向けた植物性デザートとして有望だと結論づけています。原料の配合を工夫することで、伝統的な発酵食品の特徴を保ちながら植物性に置き換えられる可能性を示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Amol Prakashrao Dukare、Vijaya S. Pawar、Rajesh Baliram Kshirsagar、Kunal Machindra Naik、Ashwini Mugale、Kishor Kashinatrao Anerao、Sachin Arun Giri
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Amol Prakashrao Dukare, Vijaya S. Pawar, Rajesh Baliram Kshirsagar, et al. Development and Quality Assessment of Plant based Probiotic Shrikhand as a Dairy Alternative. Asian Journal of Dairy and Food Research 2026-11-03. DOI: 10.18805/ajdfr.dr-2501. 原著ライセンス:CC BY.