著者の所属・活動拠点の国は、カナダ、アメリカです。

掲載誌:Journal of the American Heart Association

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

この論文は、まだ結果の出ていない臨床試験の計画(プロトコル)を報告したものです。著者らは、高血圧と肥満のある成人を対象に、二つの食事法を組み合わせた食事が血圧などをどれだけ下げるか、またその食事に「超加工食品」に分類される大豆食品を使っても効果が損なわれないかを確かめるため、SWITCH試験を設計しました。

背景には、心血管疾患が世界の死亡と入院の主要な原因であり、高い血圧、食事、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の高さが、改善できる危険因子の上位3つに挙げられているという事情があります。診療ガイドラインでは植物性食品を中心とした食事法が勧められており、血圧を主な対象とする「DASH食」と、LDLコレステロールを主な対象とする「ポートフォリオ食」があります。論文は、両者の要素を組み合わせることで心血管疾患のリスク低減を高められる可能性があると述べています。

一方で、ポートフォリオ食の柱である大豆食品の多くは、加工の度合いで食品を分類する「Nova分類」で最も加工度の高いグループ4、つまり超加工食品に分類されます。観察研究では超加工食品全体と健康への悪影響との関連が報告されていますが、論文によれば、食品の種類によって関連の向きが異なることを示す研究もあり、無作為化試験は少ないとされています。栄養が豊富でも超加工に分類される大豆食品は、推奨と分類が食い違い、一般向けのメッセージが混乱しているという問題意識が示されています。

試験の設計

試験が答えようとする問いは二つです。一つ目は、DASH食の要素を加えたポートフォリオ食が、通常の診療(標準治療)と比べて臨床的に意味のある血圧低下をもたらすかどうか。二つ目は、超加工度の高い大豆食品を使った場合でも、加工度の低い大豆食品を使った場合と比べて血圧低下の効果が劣らない(非劣性である)といえるかどうかです。

計画では、高血圧と肥満のある成人300人(うち半数は2型糖尿病)を3つのグループに無作為に振り分け、12週間追跡します。主な評価項目は収縮期血圧(いわゆる上の血圧)で、ほかの心臓・代謝に関わる指標も調べます。グループは、超加工度の高い大豆食品を使う食事、加工度の低い大豆食品を使う食事、標準治療の3つです。まず二つの食事グループが標準治療より優れているかを確かめ、そのうえで二つの食事グループの比較に進む段階的な検定を採ることで、偏りを防ぐ設計になっていると著者らは説明しています。

食事の内容として、ポートフォリオ食の部分では1日あたり植物性たんぱく質50g、オートムギや大麦などに含まれる粘り気のある食物繊維20g、ナッツ・種実45g、植物ステロール2g、オリーブ油などの一価不飽和脂肪酸45gが示されています。DASH食の要素としては野菜と果物を1日10サービング(1サービングは1回分の目安量)とし、その一部を乾燥野菜・果物のブレンドで補います。

大豆食品は、どちらの食事グループも1日4サービング以上(1サービングあたりたんぱく質10g)とされています。超加工度の高いグループでは豆乳と、大豆バーガーなどの肉代替食品といったNovaグループ4の食品を使います。加工度の低いグループでは、加工度の低い豆乳や枝豆、ローストした大豆に加え、豆腐やテンペを使います。

試験計画上の工夫と留意点

著者らは、食事を守り続けることが成功に欠かせないとして、主要な食品の提供、研究栄養士による食事記録の確認、行動変容の理論を取り入れた教育プログラムやデジタル支援を計画しています。ただし、食品を提供することで、結果をそのまま日常生活に当てはめにくくなる可能性があることも認めています。

また、二つの大豆食品グループはたんぱく質量だけをそろえているため、血圧に影響するナトリウムやカリウムの摂取量に差が出るかもしれないと論文は述べています。著者らは、これは現実の食品の置き換えを反映させるための設計だとしたうえで、尿中のナトリウムとカリウムの比などを測定し、結果の解釈で考慮するとしています。非劣性の判断基準には、収縮期血圧で4mmHgの差が用いられます。これは、心血管への効果が証明された降圧薬を最初の用量で使ったときに見られる最小の低下幅に基づくと説明されています。

この研究の意味

この論文が示しているのは試験の計画であり、食事の効果についての結果はまだ報告されていません。著者らは、この試験によって、血圧とコレステロールの双方を意識した食事の組み合わせの効果と、栄養豊富な超加工の大豆食品が加工度の低い大豆食品と同等に扱えるかという問いに、無作為化試験の形で答えることを目指しています。超加工食品をめぐる評価が分かれるなかで、加工度だけでなく食品の中身に注目して検証しようとする試みといえます。

原著論文の著者・所属:Zeinab Houshialsadat(St. Michael's Hospital, Unity Health Toronto; University of Toronto)、Gabrielle Viscardi(St. Michael's Hospital, Unity Health Toronto; University of Toronto)、Antonio G. Rossi(St. Michael's Hospital, Unity Health Toronto; University of Toronto)、Sabrina Ayoub‐Charette(St. Michael's Hospital, Unity Health Toronto; University of Toronto)、Dayana El Chaar(St. Michael's Hospital, Unity Health Toronto; University of Toronto)、Brighid McKay(St. Michael's Hospital, Unity Health Toronto; University of Toronto)、Amy Symington(University of Toronto)、Meaghan E. Kavanagh(Harvard University, US)、Madeline N. Erlich(St. Michael's Hospital, Unity Health Toronto; University of Toronto)、Russell J. de Souza(McMaster University)、Michael Vallis(Dalhousie University)、D. Dan Ramdath(University of Saskatchewan)、Adam H. Metherel(University of Toronto)、Kevin Hall(Independent Researcher Kensington MD USA.)、Christopher D. Gardner(Stanford University)、Elena Jovanovski(St. Michael's Hospital, Unity Health Toronto)、Subodh Verma(St. Michael's Hospital, Unity Health Toronto; University of Toronto)、Cyril W. C. Kendall(St. Michael's Hospital, Unity Health Toronto; University of Saskatchewan; University of Toronto)、David J. A. Jenkins(St. Michael's Hospital, Unity Health Toronto; University of Toronto)、Vladimir Vuksan(University of Toronto)、John L. Sievenpiper(St. Michael's Hospital, Unity Health Toronto; University of Toronto)、Laura Chiavaroli(St. Michael's Hospital, Unity Health Toronto; University of Toronto)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zeinab Houshialsadat, Gabrielle Viscardi, Antonio G. Rossi, et al. Rationale and Design of a Parallel Randomized Trial of a DASH‐Enhanced Portfolio Diet With or Without Ultra‐Processed Plant Proteins for Blood Pressure and Other Cardiometabolic Risk Factors in Adults With Hypertension and Obesity: The Substitution of High With Low Ultra‐Processed Soy Protein Foods in a Guideline‐Based Diet Intervention on Cardiometabolic Health Trial. Journal of the American Heart Association 2026-10-30. DOI: 10.1161/jaha.126.049902. 原著ライセンス:CC BY.