著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

超加工食品(工業的な加工を多く経た食品)を多く食べることと、がんとの関係を調べる疫学研究は、近年急速に増えています。ただし、がんの部位によって証拠の量や確かさには差があります。著者らはこれまでの研究を整理し、がんの部位ごとの疫学的な証拠、考えられる生物学的な仕組み、研究方法上の課題をまとめる総説を発表しました。

著者らによると、この総説には同じテーマの既存の総説と異なる点が三つあります。一つ目は、証拠をがんの部位ごとに評価し、加工の程度で食品を分類する「NOVA分類」で超加工食品の摂取を直接測った研究と、食事パターンや個別の食品群から推測する間接的な研究を分けて扱ったことです。二つ目は、提案されている仕組みのそれぞれについて、支える証拠が人を対象とした研究なのか、動物や細胞の実験なのかを示したことです。三つ目は、NOVA分類そのものの妥当性を、西洋以外の伝統的な食品への当てはめも含めて検討したことです。

何をどう調べたか

この研究は、決まった手順で文献を網羅的に集める系統的レビューではなく、著者らが文献を読み解いて整理する「ナラティブレビュー」です。主要な医学文献データベースで2026年8月までに出版された英語の論文を検索し、長期間にわたって人々を追跡する前向きコホート研究や、複数の研究を統合した解析を優先して取り上げました。

著者ら自身も、文献の選び方が系統的ではないこと、研究の偏りや証拠の確かさを正式に評価していないこと、英語以外の論文を含めていないことを限界として挙げています。そのため、この総説は証拠を網羅的に評価したものではなく、解釈を交えた統合として読むべきだと述べています。

がんの部位によって異なる証拠の強さ

著者らの整理では、大腸がんとの関連は比較的一貫していました。多くの前向きコホート研究と統合解析で、超加工食品の摂取が多いほど大腸がんの発生が多いという関連が報告されています。この関連は、体格指数(BMI)や腹囲で肥満の影響を調整した後も残っていました。ただし著者らは、調整後も関連が残ることは肥満以外の仕組みの存在を示唆するにとどまり、証明にはならないと注意しています。研究による違いもあり、米国の三つのコホートでは男性でのみ関連がみられ、英国のUKバイオバンクの解析では大腸がんとの関連は認められませんでした。

乳がんとの関連は控えめで、他の要因を調整すると一部弱まるとされています。たとえばフランスの約10万5千人を対象とした研究では、食事に占める超加工食品の割合(重量ベース)が10%増えるごとに、がん全体のハザード比(発症リスクを比べる指標)が1.12、乳がんでは1.11と報告されています。

肺がん、膵臓がん、腎臓がん、前立腺がんについては、証拠が限られていました。一つのコホート研究だけに基づく場合や、間接的な研究が中心の場合が多いためです。肺がんでは、超加工食品そのものではなく、加工肉の多い「西洋型」の食事パターンを調べた研究が主でした。また喫煙が食習慣とも肺がんとも強く結びつくため、その影響を取り除ききれない可能性があります。前立腺がんでは、炎症の指標やトランス脂肪酸、亜硝酸塩など個別の成分を調べた研究が中心で、超加工食品と直接結びつける証拠は乏しいとされています。

最近、複数の総説をさらに統合した評価では、超加工食品とがんの関連を示す証拠の確かさは「低い」から「非常に低い」と判定されています。著者らは、現在の証拠は関連の方向については一貫しているものの、その大きさについては確定的とはいえないとまとめています。

考えられる仕組みと分類の課題

著者らは、超加工食品とがんを結びつけうる仕組みを三つに分けて整理しました。一つ目は肥満を介した代謝の乱れと慢性的な炎症です。この経路は、人を対象に食事を管理した試験や疫学研究によって支えられています。二つ目は加工や包装の過程で生じたり食品へ移ったりする化学物質で、加熱で生じるアクリルアミドや、容器などに由来するビスフェノールAが例に挙がっています。三つ目は乳化剤や亜硝酸塩などの食品添加物です。二つ目と三つ目の経路は主に動物や細胞の実験に基づいており、実験で示された可能性が、そのまま人の通常の摂取量で発がんにつながることを意味するわけではないと著者らは強調しています。

人での証拠と実験での証拠が食い違う例も紹介されています。約9万2千人を対象としたフランスの研究では、乳化剤の一種カラギーナンの摂取が多いと乳がんリスクが高い関連(ハザード比1.32)がみられました。一方、実験では腸への影響が強く示唆されているにもかかわらず、大腸がんと有意に関連した乳化剤はありませんでした。

分類そのものの課題も指摘されています。NOVA分類の超加工食品には、甘い飲料や加工肉から、栄養を強化した全粒粉パンやヨーグルトまで、性質の大きく異なる食品が含まれます。研究では、好ましくない関連は甘味飲料や加工された動物性食品などに集中しやすく、一部のパンや朝食用シリアル、乳製品では関連がない、あるいは逆向きの関連がみられることもあるといいます。さらに、食品表示や一般的な食事データベースには加工の情報が乏しいため、研究者の判断で分類せざるをえず、誤分類が起こりうることも課題として挙げられています。

この総説から伝わること

著者らは、今後の研究の焦点を「超加工食品全体ががんと関連するか」から、「どの超加工食品、どの加工由来の物質、どのような人々が関連を生んでいるのか」へ移すべきだと結論しています。そして、そうした証拠がそろうまでは、健康的な食事パターンについての確立した原則を重視し、超加工食品に分類される食品がすべて同じようにがんリスクをもたらすという過度に広い想定は避けるべきだと述べています。

原著論文の著者・所属:Menglin Zhao(College of Life Science, North China University of Science and Technology, Tangshan 063210, China; School of Public Health, North China University of Science and Technology, Tangshan 063210, China)、Xuemei Zhang(College of Life Science, North China University of Science and Technology, Tangshan 063210, China; School of Public Health, North China University of Science and Technology, Tangshan 063210, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Menglin Zhao, Xuemei Zhang. Cancer Risk Linked to Ultra-Processed Foods: Epidemiological Findings, Potential Mechanisms, and Research Outlook. Foods 2026-10-30. DOI: 10.3390/foods15213887. 原著ライセンス:CC BY.