著者の所属・活動拠点の国は、フィンランド、アメリカ、カナダです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:同じ植物性の食事でも「質」に差がある
心血管疾患、2型糖尿病、がんなどの慢性疾患は世界の主要な死因であり、食事はその中でも改善できる危険因子とされています。野菜や果物、全粒穀物、豆類、ナッツなどを中心とする植物性の食事パターンは、こうした病気のリスク低下と結びつくことが多くの研究で報告されてきました。
ただし著者らは、植物性の食事にも質の幅があると指摘します。加工の少ない食品を中心とした食事はリスク低下と関連する一方、精製穀物や加糖飲料、加工された植物性食品が多い食事では、そうした関連が見られないか、むしろリスク上昇と関連するという報告があります。
この論文は、質の高い「ホールフード(加工の少ない丸ごとの食品)中心の植物性食」の中で、さらに追加の塩・抽出された植物油・精製された砂糖(頭文字をとって「SOS」と呼ばれます)を減らしたり除いたりすると、上乗せの利点があるのかを検討した総説です。SOSの有無を直接比べた長期の比較試験はまだないため、著者らは既存の研究を整理して仮説を立てることを目的としています。
何を調べたか:三つの指標に沿って証拠を整理
研究チームは、PubMedを中心に文献を検索し、系統的レビューやメタ解析(複数研究を統合した分析)を優先しながら、主要な臨床試験や、遺伝的な違いを利用して因果関係を推定するメンデルランダム化研究なども加えて、成人を対象とした研究を叙述的にまとめました。網羅的な系統的レビューではなく、仮説を生み出すための整理であると著者ら自身が位置づけています。
整理の軸としたのは、心血管リスクと段階的に関係することが確立している三つの指標です。悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロール、血圧、そしてお腹まわりを中心とした体脂肪です。塩・油・砂糖それぞれが、これらにどう影響しうるかを検討しています。また、SOSという言葉はこれまで研究用に正式に定義されていなかったため、「SOSなし」「SOS制限」「SOSを含む」という区分の定義案も示しています。
主な報告:塩・油・砂糖それぞれの位置づけ
塩については、ナトリウムの摂取を減らすほど血圧がほぼ直線的に下がるという証拠が示されています。85件のランダム化比較試験をまとめた分析では、ナトリウム摂取を約1150mg減らすごとに、収縮期血圧(上の血圧)が平均1.10mmHg下がったと紹介されています。ただし、もともとナトリウムが少なくカリウムやマグネシウムが豊富なホールフード中心の植物性食で、追加の塩をなくすことでどれだけ上乗せの効果があるかは、まだよく分かっていないとしています。また、ヨウ素添加塩を使わない場合はヨウ素を別の食品などから確保する必要があること、ハーブやスパイスを使えば受け入れやすさを損なわずに減塩できるという研究があることにも触れています。
油については、植物油が飽和脂肪の代わりとしてLDLコレステロールを下げる点では有益であることを認めたうえで、ホールフード中心の植物性食に油を加える場合の影響を検討しています。最も関連の深い研究として、心血管リスクがやや高い成人40人がエキストラバージンオリーブオイルを多く使う時期と、ほとんど使わずナッツやアボカドなどから脂肪をとる時期を入れ替えて試した試験が紹介されています。どちらの時期も開始時よりLDLコレステロールが下がり、オイルの少ない時期の方が下がり幅が数値上は大きかったものの、統計的な差は確認されませんでした。順番による影響も見られたため、著者らはこの結果を仮説の段階と位置づけています。一方で、ナッツなどの丸ごとの脂肪源は、心血管面で油と少なくとも同程度の利点が期待できると整理しています。
砂糖については、加糖飲料がとりすぎのカロリーや体脂肪の増加と最もはっきり結びついている一方、固形の砂糖についての証拠は弱く、全体のエネルギー摂取量や食事の内容に左右される可能性があると述べています。
さらに著者らは、塩・油・砂糖が食べ物をおいしくしすぎることで、気づかないうちに食べすぎてしまう「受動的な過食」を招き、体脂肪の増加につながる可能性を共通の経路として挙げています。ただし、ホールフード中心の植物性食の中でこれが起きるかどうかは、長期の試験では直接調べられていないとしています。
この研究が伝えること
この総説は、植物性の食事であれば何でもよいわけではなく、食品の加工の度合いや追加の塩・油・砂糖の扱いが、食事の質を左右しうるという見方を整理したものです。
同時に著者らは、質の高い植物性食からSOSを完全になくすことが上乗せの利点をもたらすとは、まだ示されていないと明言しています。もし利点があるとすれば、高血圧や肥満がある人、心血管や代謝のリスクが高い人、もともと塩・油・砂糖を多くとっている人で最も大きいだろうというのが、論文の示す見通しです。
原著論文の著者・所属:David M. Goldman(Department of Public Health, University of Helsinki, 00014 Helsinki, Finland; Department of Research and Development, Metabite, Inc., New York, NY 10036, USA)、Matthew Nagra(Department of Family Practice, University of British Columbia, Vancouver, BC V6T 1Z3, Canada)、Alan C. Goldhamer(TrueNorth Health Center, Santa Rosa, CA 95404, USA)、Toshia R. Myers(TrueNorth Health Foundation, Santa Rosa, CA 95404, USA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):David M. Goldman, Matthew Nagra, Alan C. Goldhamer, et al. Dietary Quality Along a Plant-Based Continuum: The Role of Added Salt, Oil, and Sugar in Chronic Disease Risk. Nutrients 2026-08-04. DOI: 10.3390/nu18152526. 原著ライセンス:CC BY.