著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Pedagogika Jurnal Ilmu-Ilmu Kependidikan
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
食品は生命と健康を支える基本的な必需品であり、栄養を満たすだけでなく、健康を害するおそれのある物質を含まないことが求められます。著者らによると、インドネシアでは、ホルマリン、ホウ砂、ローダミンB、メタニルイエローといった本来は食品用ではない化学物質が、使用を禁じられているにもかかわらず、日持ちの延長や見た目の改善、コスト削減のために一部の食品で使われている実態が報告されてきました。報告されている食品は、生麺、豆腐、肉団子、干し魚、せんべい類から子ども向けの軽食まで幅広いとされています。
これまでの研究の多くは、こうした物質を検出・特定する方法や検査技術の開発に重点を置いていました。著者らは、有害物質の種類、混入の経路、健康への影響、食品安全教育への意味を一つにまとめた総合的な整理はまだ少ないと指摘しています。そこで本研究は、新しい有害物質を見つけることではなく、すでに発表された研究成果を統合し、食品中の有害物質の全体像を示すことを目的としています。
どのように調べたか
研究チームは、既存の資料を読み込んで分析する文献研究の手法を用いました。対象としたのは、学術誌の論文、インドネシア食品医薬品監督庁(BPOM)の公式報告、食品安全の教科書、保健省などの政府規則です。テーマとの関連性、情報源の信頼性、研究目的との整合性を基準に資料を選び、内容が重複するものや関係の薄いものは除きました。
選んだ資料は、記述内容を分類・比較して共通するテーマや傾向を探る「内容分析」という方法で整理されました。著者らは、有害物質の種類、汚染源、健康への影響、予防策ごとに文献をまとめ、研究間の共通点や違いを比べています。
主な結果:三つのタイプの有害物質と健康への影響
文献の統合から、食品中の有害物質は大きく三つのタイプに整理されました。一つ目は、ホルマリン、ホウ砂、ローダミンB、メタニルイエローといった食品用ではない化学物質の不正使用です。ホルマリンは保存期間を延ばし食感や見た目を保つ目的で使われ、食品への使用が認められる量は存在しないため、検出されること自体が規則違反を意味するとされています。ホウ砂は肉団子やせんべいなどで弾力や歯ごたえを出すために使われ、見た目では通常の製品と区別しにくいと報告されています。繊維用の染料であるローダミンBは赤い食品に、メタニルイエローは黄色い食品に多く見られる傾向があり、色鮮やかな軽食を口にしやすい子どもが特に影響を受けやすいと論じられています。
二つ目は、本来使用が認められている食品添加物の過剰使用です。サッカリンやチクロなどの人工甘味料、保存料の安息香酸ナトリウムは、定められた上限内であれば使用できますが、問題は上限を超えた使い方にあると著者らは整理しています。三つ目は、サルモネラ菌や大腸菌、黄色ブドウ球菌などの細菌、湿った環境で保管された豆類や穀物にカビが生み出すアフラトキシンといった、生物由来・天然由来の汚染です。これらは不衛生な調理や不適切な保管温度、衛生環境の不備と結びついて報告されています。
健康への影響について、文献では、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの短期的な症状と、肝臓や腎臓の障害、神経系への影響、がんリスクの上昇といった長期的な影響の両方が報告されています。著者らは、症状がゆっくり進む慢性的な摂取のほうが、一度きりの少量の摂取よりも重大になりうるという見方が文献間で共通していると述べています。
背景にある要因と研究の意味
著者らは、有害物質の使用が続く原因は化学物質そのものの性質だけでなく、経済的な圧力、生産者の規則遵守の低さ、監視体制の限界、消費者の食品安全に関する知識の不足が絡み合った結果であると整理しています。行政の取り締まりを重視する研究と消費者教育を重視する研究がありますが、両者は補い合うもので切り離せないというのが本レビューの見立てです。
この研究の意義は、有害物質の特徴、不正使用の要因、健康への影響、規制上の課題を一つの枠組みにまとめた点にあります。論文は、食品の安全を高めるには規制と検査だけでは不十分であり、生産者と消費者への教育、地域社会の理解の向上、行政・教育機関・事業者・市民の協力が必要だと結論づけています。なお著者ら自身が述べるとおり、本研究は既存文献に基づくもので、現場の実態を直接調べたものではありません。
原著論文の著者・所属:Nurpita Sari(Sekolah Tinggi Ilmu Keguruan dan Pendidikan Al Maksum)、Nursyifa Mustabsirah(Sekolah Tinggi Ilmu Keguruan dan Pendidikan Al Maksum)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nurpita Sari, Nursyifa Mustabsirah. Kajian Literatur tentang Pembelajaran Zat Berbahaya pada Makanan dalam Pendidikan Sains. Pedagogika Jurnal Ilmu-Ilmu Kependidikan 2026-08-02. DOI: 10.57251/ped.v6i1.2114. 原著ライセンス:CC BY.