著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Journal of Dairy Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

チーズを作る過程では、乳からチーズを分離した後に液体の「ホエイ(乳清)」が残ります。このホエイからたんぱく質などを取り除いた液体が「ホエイパーミエイト」で、チーズ製造の重要な副産物です。ホエイパーミエイトは一般に、濃縮、乳糖の結晶化、噴霧乾燥を経て粉末(ホエイパーミエイト粉末)に加工されます。

この粉末の成分は一定ではありません。どのようなチーズを作ったか、製造時にどのような条件で処理したかによって変わります。さらに粉末は保管や輸送のあいだに、褐色に色づく「メイラード反応」や、粉が固まってしまう「ケーキング(固結)」といった物理的・化学的変化を起こすことがあり、製品の性質に影響します。

そこで研究チームは、粉末の物理的・化学的な安定性に関わる指標と、乳糖、単糖類、有機酸、たんぱく質などの窒素を含む成分、ミネラルといった主要成分・微量成分の含有量とのあいだに、どのような相関があるかを明らかにすることを目指しました。

何を調べたか

著者らは、米国の4つの製造元から市販のホエイパーミエイト粉末を15試料集め、成分を分析しました。あわせて、温度25℃前後、相対湿度50%前後の条件で6か月間保管する試験を行い、褐色化を起こさせて変化を観察しました。

論文によると、15試料の成分の幅は、これまでの文献で報告されているこの種の粉末の値を代表する範囲にあり、結果をある程度一般化できると著者らは判断しています。成分と安定性指標の関係は、相関の強さを色分けして一覧にする「ヒートマップ」と、多数の変数の関係を少数の軸にまとめて全体像をつかむ「主成分分析」によって整理されました。

安定性の指標として用いられたのは主に二つです。一つは「ガラス転移温度」で、粉末中の分子がどれだけ動きやすいかの目安となり、固結の起こりやすさと関係するとされます。もう一つは保管中の色の変化量で、メイラード反応による褐色化の程度の目安として使われました。

主な結果

ガラス転移温度は、乳糖の含有量が多いほど高い傾向(正の相関)を示しました。一方で、ブドウ糖(グルコース)、ガラクトース、乳酸の含有量とは負の相関を示しました。著者らは、これら三つの成分はいずれも、物質を柔らかく分子を動きやすくする強い「可塑剤」として働くと説明しています。

保管中の色の変化は、乳糖の含有量と負の相関を示しました。著者らはこの結果を、分子の動きやすさが褐色化の速さに決定的な影響を与えることを示すものと位置づけています。また色の変化は、ブドウ糖、ガラクトース、乳酸の含有量と正の相関を示しました。ブドウ糖とガラクトースは、メイラード反応に関わる「還元糖」であり、かつ強い可塑剤でもあるため、この結果は特に予想どおりだったと論文は述べています。

これに対し、たんぱく質やペプチドの含有量は、ガラス転移温度とも褐色化の程度とも弱い相関しか示しませんでした。ミネラルの影響はより複雑で、とくに粉末の物理的な安定性との関係で単純には整理できないことが報告されています。

研究が示すこと

この研究は、市販のホエイパーミエイト粉末の成分にばらつきがあること、そしてそのばらつきが保管中の固結や褐色化のしやすさと結びついていることを、相関という形で示しました。著者らは、この成果が製造工程の最適化や配合の見直しに向けた具体的な手がかりとなり、変化の仕組みをさらに詳しく調べる研究の土台になるとまとめています。

原著論文の著者・所属:Didem Sözeri Atik(Department of Food Science and Nutrition, University of Minnesota, 1334 Eckles Ave., St. Paul, MN 55108, USA)、Job Ubbink(Department of Food Science and Nutrition, University of Minnesota, 1334 Eckles Ave., St. Paul, MN 55108, USA. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Didem Sözeri Atik, Job Ubbink. Factors influencing the physical and chemical stability of whey permeate powders: A correlational study based on industry samples. Journal of Dairy Science 2026-09-01. DOI: 10.3168/jds.2026-28819. 原著ライセンス:CC BY.