著者の所属・活動拠点の国は、オーストラリアです。
掲載誌:Small Ruminant Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
産業用ヘンプ(産業用大麻)の茎や葉などの植物体(バイオマス)を羊の飼料に加えると、肉の品質はどう変わるのか。研究チームは、メリノ種の羊にペレット状に加工したヘンプバイオマスを与え、肉の品質と酸化安定性を調べました。酸化安定性とは、保存中に脂質やタンパク質の酸化による劣化がどの程度起こりにくいかを示す性質です。
何を調べたか
実験には、個別に飼育された生後12か月の去勢雄羊15頭を用いました。56日間、ヘンプバイオマスを飼料全体の乾物量の0%(対照)、28%、56%の割合で含むペレット飼料を与えました。ヘンプを減らした分は、えん麦を刻んだ粗飼料で補っています。
と畜後、腰の背側にある筋肉(ロース部分にあたる胸最長筋の腰部)と、腰の内側にある筋肉(ヒレ部分にあたる大腰筋)を採取しました。これらを真空包装し、2〜3℃で7日間熟成させてから分析しています。調べた項目は、肉の色、pH、加熱や解凍で失われる水分、肉汁の流出、かたさの指標となるせん断力、抗酸化能、脂質やタンパク質の酸化の指標、筋肉内脂肪を含む成分組成などです。
主な結果
論文によると、飼料の違いと筋肉の部位の間に、肉質や酸化安定性への統計的に有意な相互作用はありませんでした。つまり、ヘンプを加えたときの影響は、2つの筋肉で同じように現れたと考えられます。
部位に関係なく、ヘンプを56%含む飼料を与えた羊の肉では、保存中に自然ににじみ出る肉汁の量(ドリップロス)と、圧力をかけて搾り出される肉汁の割合が高くなりました。著者らは、この配合割合では肉が水分を保つ力(保水性)が低下したことを示すとしています。
一方、飼料に関係なく、部位による違いも報告されています。ロース側の筋肉は、ヒレ側の筋肉に比べて色の黄色みや鮮やかさの指標、加熱・解凍時の水分損失、ドリップロス、抗酸化能の指標の一つが高い値でした。ヒレ側の筋肉は、明るさ、最終的なpH、せん断力が高い値でした。
フェノール化合物の量、脂質酸化やタンパク質酸化の指標、別の方法で測った抗酸化能、肉の赤い色素であるミオグロビンの総量、筋肉内脂肪を含む成分組成などは、飼料の間でも部位の間でも有意な差はありませんでした。
研究から分かること
著者らは、筋肉の部位による違いはヘンプの有無にかかわらず存在する一方、産業用ヘンプバイオマスを飼料に加えた影響は主に羊肉の保水性に現れ、その他の主要な品質や酸化安定性の特性は変わらなかったとまとめています。ヘンプの配合を高めた場合に、羊肉の品質のどこに影響が出て、どこに出ないのかを具体的に示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Benjamin W.B. Holman(Gulbali Institute, Charles Sturt University, Wagga Wagga, New South Wales, 2678, Australia)、Emma E.M. Lynch(School of Agricultural, Environmental and Veterinary Sciences, Charles Sturt University, Wagga Wagga, New South Wales 2678, Australia; School of Environmental and Rural Sciences, University of New England, Armidale, New South Wales, 2350, Australia)、Sarah A. Stevens(School of Agricultural, Environmental and Veterinary Sciences, Charles Sturt University, Wagga Wagga, New South Wales 2678, Australia)、Gaye L. Krebs(Gulbali Institute, Charles Sturt University, Wagga Wagga, New South Wales, 2678, Australia; School of Agricultural, Environmental and Veterinary Sciences, Charles Sturt University, Wagga Wagga, New South Wales 2678, Australia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Benjamin W.B. Holman, Emma E.M. Lynch, Sarah A. Stevens, et al. Quality and oxidative stability of the longissimus lumborum and psoas major muscles collected from sheep fed different levels of industrial hemp biomass. Small Ruminant Research 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.smallrumres.2026.107909. 原著ライセンス:CC BY.