著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられがちな副産物を食物繊維の資源として見直す

穀物、果物、野菜、豆類などを加工すると、ふすま、果実の搾りかす、野菜の葉、おからなどの副産物が大量に出ます。これらには食物繊維が多く含まれていますが、多くはそのまま廃棄され、資源の無駄や環境汚染につながっていると著者らは指摘しています。この論文は、こうした副産物を価値ある食物繊維の供給源として活用するための知見を整理した総説です。

食物繊維とは、ヒトの小腸では消化されず、大腸で全部または一部が腸内細菌によって発酵される炭水化物を指します。水に溶ける「水溶性食物繊維」と、溶けない「不溶性食物繊維」に大きく分けられます。著者らによると、これまでの総説は抽出技術や性質、一般的な植物由来の食物繊維の健康効果などに焦点を当てたものが中心で、副産物由来の食物繊維を持続可能な資源として幅広く扱ったものは限られていました。そこで本総説は、副産物から得た食物繊維について、構造と機能の関係、健康との関わり、食品への応用を体系的にまとめることを目指しています。

文献の分析から見えた研究の流れ

著者らはまず、論文データベースを使って研究の動向を調べました。「食物繊維」をキーワードに検索すると、2010年から2026年までに190,322件の関連論文が見つかり、2010年から2025年にかけて件数は年々増えていました。一方で、廃棄物や副産物に由来する食物繊維を扱った研究は、食物繊維研究全体の半分に満たないことも示されました。

さらに、副産物由来の食物繊維に関する論文のキーワードを分析ツールで整理したところ、主な研究の方向性は四つのまとまりに分かれました。原料の物理的・化学的な性質や機能、副産物の資源化、消化と腸内環境、そしてリンゴやブドウの搾りかすなどに含まれるフェノール化合物と抗酸化作用です。本総説の構成は、この分析で浮かび上がったテーマに沿って組み立てられています。

二種類の食物繊維と、それぞれの活用の方向

著者らは、副産物の種類によって含まれる食物繊維の構成が異なる点を重視しています。果物や野菜の加工副産物にはペクチンなどの水溶性食物繊維が多く、穀物のふすまやおからにはセルロースやヘミセルロースといった不溶性食物繊維が多い傾向があります。

水溶性食物繊維は水になじみやすく、腸内で発酵されやすい性質から、糖や脂質の代謝、腸内細菌叢への作用が注目されてきました。論文では、ドラゴンフルーツの皮から取り出したペクチンで分解されやすいフィルムを作った研究や、パッションフルーツの皮由来のペクチンが増粘剤やゲル化剤として期待される例などが紹介されています。ただし、ふだんの食品に含まれる水溶性食物繊維は不溶性のものより少なく、食品そのものから抽出すると効率が悪く費用もかかります。そのため、食物繊維を多く含む副産物を使う意義は大きいと著者らは述べています。

不溶性食物繊維は、従来は腸の働きを整える成分として見られてきましたが、構造が安定していて加工しやすいことから、新しい食品素材の原料としても注目されています。たとえば、パイナップルの皮の残さから取り出した微細なセルロースの結晶を、乳化を安定させる粒子として使った研究や、キシランというヘミセルロースで被覆したフィルムが包装材として良い性質を示した研究が挙げられています。一方で、食品に加えると食感が粗くなるといった品質面の課題もあり、改良が続けられていると整理されています。

食物繊維は、物理的、化学的、生物的な処理を組み合わせて性質を変える「改質」も行われています。トウモロコシのふすまを押し出し加工と酵素で処理すると、水溶性食物繊維の取り出せる割合や保水性、抗酸化活性が高まったという報告などが紹介されています。ただし、抽出効率の低さや品質の不安定さ、工業生産の少なさは今も課題だとされています。

他の成分との組み合わせと健康との関わり

著者らは、食物繊維が体内で単独で働くのではなく、同じ食品に含まれるポリフェノール、タンパク質、プロバイオティクス(有用な生きた菌)などと影響し合う点にも注目しています。食物繊維はポリフェノールと結びついて腸まで運ぶ役割を果たしうること、適量であればタンパク質のゲルの保水性や強さを高めることなどが紹介されています。また、腸内のビフィズス菌などの栄養源となるほか、プロバイオティクスを胃酸から守る包み込み材料としての利用も検討されています。ただし、食物繊維が多すぎるとゲルの食感を損なうことや、すべての食物繊維が有用菌に良い影響を与えるわけではないことにも触れています。

健康面では、食物繊維が腸内細菌によって発酵されて短鎖脂肪酸がつくられ、腸内環境や免疫に関わることが整理されています。一方で著者らは、副産物由来の食物繊維の健康効果は、試験管内の実験、動物実験、ヒトの臨床試験など、さまざまな水準の証拠に基づいており、その強さや確かさは効果の種類や食物繊維の原料、研究の方法によって異なると注意を促しています。食物繊維が腸内細菌を通じて代謝や免疫にどう作用するのかについても、さらに調べる必要があるとしています。

副産物の食物繊維が持つ意味

この総説が示すのは、食品加工の副産物が、廃棄されるものから食物繊維の供給源へと見方を変えうるということです。副産物は加工の過程で大量かつ継続的に出て、比較的安く手に入り、新たな農地も必要としません。著者らは、水溶性と不溶性の食物繊維の違いを踏まえて目的に応じて取り出して使えば、食品の機能性素材から環境に配慮した包装材料まで幅広い用途が考えられると整理しています。研究の蓄積はまだ十分とはいえないものの、本総説は副産物の食物繊維を資源として生かすための見取り図を示しています。

原著論文の著者・所属:Xue Chen(College of Food Science and Engineering, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China; College of Medicine and Health, Tonghua Normal University, Tonghua 134002, China; Division of Soybean Processing, Soybean Research & Development Center, Chinese Agricultural Research System, Changchun 130118, China)、Khalid Amin(College of Food Science and Engineering, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China; Division of Soybean Processing, Soybean Research & Development Center, Chinese Agricultural Research System, Changchun 130118, China)、Peng Liu(College of Medicine and Health, Tonghua Normal University, Tonghua 134002, China)、Xiaochun Yu(College of Medicine and Health, Tonghua Normal University, Tonghua 134002, China)、Hongling Fu(College of Food Science and Engineering, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China; Division of Soybean Processing, Soybean Research & Development Center, Chinese Agricultural Research System, Changchun 130118, China)、Ming Li(College of Medicine and Health, Tonghua Normal University, Tonghua 134002, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xue Chen, Khalid Amin, Peng Liu, et al. Advances in Dietary Fiber: Classification, Functional Properties, Interactions, and Valorization of Dietary Fiber from Food Processing By-Products. Foods 2026-08-13. DOI: 10.3390/foods15162826. 原著ライセンス:CC BY.