著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。
掲載誌:LWT
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
乳製品に機能性のある素材を取り入れて配合を見直す「リフォーミュレーション」は、栄養面の質を高める有効な方法として注目されています。一方で、配合を変えたときに食品内部の化学的な環境や、そこにすむ微生物の集団がどう変わるのかは、まだよく分かっていません。
研究チームは、塗り広げられるタイプの酸性スプレッドチーズを題材に、原料のクリームをホエイタンパク質濃縮物(WPC)に置き換えた場合の影響を調べました。WPCは、チーズ製造で出る乳清(ホエイ)からタンパク質を濃縮した素材です。なお、ここで紹介する内容は論文の抄録に記載された範囲に基づいています。
何をどのように調べたか
著者らは、クリームをWPCに置き換え、WPCの量を1キログラムあたり15グラム、20グラム、30グラムの3段階としたチーズを作り、置き換えをしていない対照のチーズ(CTR)と比べました。
評価には複数の手法を組み合わせています。成分や物理的な性質を測る分析に加え、食品に含まれる多様な小さな分子をまとめて調べるメタボロミクス、香りのもとになる揮発性成分を調べるボラティロミクス、試料中の微生物の遺伝情報から微生物の構成を調べるメタゲノミクスを用い、化学的な変化と微生物の変化、そして製品としての性質を結びつけて捉えようとしました。
主な結果
論文によると、WPCを加えることでチーズのタンパク質含量は1キログラムあたり158グラムまで高まり、製造の歩留まり(原料からどれだけ製品が得られるか)は30.5%になりました。
WPCの量を増やすと、チーズから水分が分離してしみ出す「離水」が減り、対照の16.0%に対し、試作品の一つ(CW3)では9.14%でした。また、測定で得られた最大の力(ピーク力)は、対照の41ニュートンに対してWPCを含むチーズでは21〜28ニュートンと低く、著者らはこれを塗りやすさの向上を示すものと報告しています。
成分面では、メタボロミクス解析で配合に応じた変化が見られ、WPCを加えると乳糖やガラクトシルプロリンが増え、遊離のグルコース・ガラクトースやジヒドロリポ酸が減りました。一方、香りに関わる揮発性成分の組成には、配合変更による有意な変化は見られませんでした。
これに対して微生物の構成は大きく変わりました。メタゲノミクス解析では、初期の微生物集団が、プロテオバクテリアと呼ばれる細菌のグループが多い状態から、乳酸菌が優勢な状態へと組み替わっていたことが示されました。
研究が示すこと
著者らは、これらの結果がタンパク質を強化した酸性スプレッドチーズの開発にWPCを用いることを支持するとしています。あわせて、乳製品の配合を変えることが、食品の化学的な中身、初期の微生物のまとまり方、そして離水や塗りやすさといった製品としての性質に、同時に影響しうることを示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Niccolò Renoldi(Department of Agricultural, Food, Environmental and Animal Sciences, University of Udine, 33100, Udine, Italy)、Giulia Di Filippo、Maria Christina Chotzara(Laboratory of Chimica Sperimentale, SCS8, Istituto Zooprofilattico Sperimentale delle Venezie, Vicenza, Italy)、Greta Morbin(Laboratory of Chimica Sperimentale, SCS8, Istituto Zooprofilattico Sperimentale delle Venezie, Vicenza, Italy)、Francesca Asson(Laboratory of Chimica Sperimentale, SCS8, Istituto Zooprofilattico Sperimentale delle Venezie, Vicenza, Italy)、Carmela Zacometti(Laboratory of Chimica Sperimentale, SCS8, Istituto Zooprofilattico Sperimentale delle Venezie, Vicenza, Italy)、Andrea Massaro(Laboratory of Chimica Sperimentale, SCS8, Istituto Zooprofilattico Sperimentale delle Venezie, Vicenza, Italy)、Alessandra Tata(Laboratory of Chimica Sperimentale, SCS8, Istituto Zooprofilattico Sperimentale delle Venezie, Vicenza, Italy)、Arianna Peruzzo(Laboratory of Microbial Ecology and Genomics, Istituto Zooprofilattico Sperimentale delle Venezie, Viale dell'università 10, 35020 Legnaro, Italy)、Carmen Losasso(Laboratory of Microbial Ecology and Genomics, Istituto Zooprofilattico Sperimentale delle Venezie, Viale dell'università 10, 35020 Legnaro, Italy)、Marilena Marino(Department of Agricultural, Food, Environmental and Animal Sciences, University of Udine, 33100, Udine, Italy)、Nadia Innocente(Department of Agricultural, Food, Environmental and Animal Sciences, University of Udine, 33100, Udine, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Niccolò Renoldi, Giulia Di Filippo, Maria Christina Chotzara, et al. Reformulating spreadable cheese with whey protein concentrate: linking microbial community shifts to technological functionality. LWT 2026-10-27. DOI: 10.1016/j.lwt.2026.120174. 原著ライセンス:CC BY.