著者の所属・活動拠点の国は、ベトナムです。

掲載誌:Food Research

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

脂肪を減らしてもおいしさを保てるか

アイスクリームは一般に重量の8〜10%ほどの脂肪を含み、高級品では15〜20%に達するものもあります。脂肪は空気の泡を安定させ、なめらかな口当たりを生み、溶けるのを遅らせ、脂溶性の香りを運ぶ役割を担っています。近年は脂肪を減らしたアイスクリームへの関心が高まっていますが、脂肪を減らすと食感や風味が損なわれやすいという課題があります。そのため、脂肪の代わりに炭水化物系の素材を使う方法が研究されてきました。

ペクチンは果物に含まれる多糖類で、食品工業ではゲル化剤や安定剤、増粘剤として広く使われています。水を抱え込む力が強いことから、ソーセージやクッキーなどで脂肪の代替素材としても利用されています。研究チームによると、ベトナムではオレンジが多く生産されており、ジュース製造で大量の皮が廃棄物として出ます。一方、皮から熱い酸性の液でペクチンを取り出す方法は実用的でよく使われていますが、この方法で得たペクチンが低脂肪アイスクリームの品質にどう影響するかは、ほとんど調べられていませんでした。そこで著者らは、オレンジの皮から得たペクチンがアイスクリームの脂肪代替素材として使えるかを検証しました。

オレンジの皮からペクチンを取り出し、アイスクリームに配合

研究チームは、ホーチミン市のジュース製造業者から集めたオレンジの皮を乾燥させて粉末にしました。この粉末をクエン酸で酸性にした水の中で80℃に加熱し、溶け出した成分にエタノールを加えてペクチンを沈殿させて回収しました。赤外線の吸収を調べる分析により、得られた物質が市販のペクチンと同じ特徴を持つことを確認しています。

次に、バニラアイスクリームの原料のうち生クリームの一部をこのペクチンと水に置き換え、ペクチンの割合を0%(対照)、0.1%、0.15%、0.2%とした4種類を作りました。生クリームの配合は、対照の29.1%から、それぞれ19.0%、13.95%、8.9%に減らしています。そのうえで、成分組成とカロリー、凍らせる前の原料液の流れやすさや粘り気、空気の含み具合、溶け方、硬さ、べたつき(付着性)を測定しました。さらに、訓練を受けていない30人のパネリストが、色、におい、味、なめらかさ、総合的な好ましさを9段階で評価しました。

脂肪とカロリーは減り、形は崩れにくく

ペクチンで生クリームを置き換えると、脂肪の量は対照に比べて30.4〜60.8%減り、カロリーは14〜31%減りました。最も置き換えの多い試料では、100グラムあたりのカロリーが対照の約228キロカロリーから約158キロカロリーに下がったと報告されています。ペクチンに残ったクエン酸の影響とみられる、わずかなpHの低下も見られました。

凍らせる前の原料液は、ペクチンが多いほど粘り気が強くなりました。ペクチンが0.2%の試料では、一定の条件で測った見かけの粘度が対照の約2倍でした。凍らせたアイスクリームは、ペクチンの量が増えるにつれて硬さとべたつきが増しました。一方、アイスクリームが空気をどれだけ含んでいるかを示す「オーバーラン」は、ペクチンの量を変えても統計的に意味のある差はありませんでした。著者らは、脂肪を減らした3種類の試料のオーバーランが、高級アイスクリームとして許容される範囲(60〜90%)に収まっていたとしています。

溶ける速さは、脂肪の少ない試料のほうが対照より速くなりました。著者らは、乳脂肪が熱を伝えにくいため、脂肪が多い対照は溶けにくかったと説明しています。ただし、25℃で30分置いたときの形の保ち方は、ペクチンを加えた試料のほうが対照より明らかに良好でした。著者らは、ペクチンが作る網目状の構造が泡を安定させたためと考えています。

官能評価では、色、におい、なめらかさ、総合的な好ましさについて、ペクチン入りの試料と対照の間に大きな差は見られませんでした。味については、ペクチン0.2%の試料が対照よりやや高く評価されました。

果物の皮を生かした低脂肪化の可能性

この研究は、ジュース製造で出るオレンジの皮から取り出したペクチンが、バニラアイスクリームの脂肪とカロリーを減らしながら、形の保ちやすさを高め、食べた人の評価もほぼ維持できたことを示しています。著者らは、オレンジの皮由来のペクチンが、低脂肪アイスクリームづくりに使える天然の脂肪代替素材になりうると結論づけています。

原著論文の著者・所属:T.S.M. Tran(Department of Food Technology , Faculty of Chemistry and Life Sciences , Ho Chi Minh City University of Technology and Engineering , No. 1 Vo Van Ngan Street , Thu Duc Ward , Ho Chi Minh City , Vietnam)、L.T.K. Vu(Department of Food Technology , Faculty of Chemistry and Life Sciences , Ho Chi Minh City University of Technology and Engineering , No. 1 Vo Van Ngan Street , Thu Duc Ward , Ho Chi Minh City , Vietnam)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):T.S.M. Tran, L.T.K. Vu. Effects of orange peel pectin as a fat substitute on the physicochemical property, rheology and sensory qualities of vanilla ice cream. Food Research 2026-10-02. DOI: 10.26656/fr.2017.10(5).257. 原著ライセンス:CC BY.