著者の所属・活動拠点の国は、スペインです。
掲載誌:Applied Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
食事療法は「続けられるか」が鍵になる
線維筋痛症は、全身の広い範囲に続く痛み、強い疲労感、睡眠の問題、記憶や集中の困難などを特徴とする慢性の病気です。薬による治療の効果は限られることが多く、運動や患者教育、生活習慣への取り組みを組み合わせることが重視されています。その一つとして、野菜や果物、豆類、全粒穀物、ナッツなどを中心とする植物性の食事が注目されています。
研究チームは以前、FIBROVEGと呼ばれるランダム化比較試験で、動物性食品を使わない「ヴィーガン地中海食」が、魚や卵、乳製品なども含む従来型の地中海食に比べて、血中の脂質や痛み・疲労などの症状を改善したと報告していました。ただし、食事療法の効果は、参加者が指示された食事をどれだけ実際に守れたか(遵守度)に左右されると考えられます。線維筋痛症の人がヴィーガン地中海食をどの程度守れるのか、守りにくくする要因は何か、そしてよく守れた人ほど体調の変化が大きいのかは、ほとんど分かっていませんでした。
そこで著者らは、この試験のデータを改めて解析し、食事の遵守度を数値で示すこと、遵守度に影響する要因を探ること、遵守度と体調の変化との関係を調べることを目的としました。研究チームは当初、ヴィーガン地中海食の方が遵守度は低くなるだろうと予想していました。
6週間の食事試験と「守れた度合い」の点数化
試験に参加したのは、線維筋痛症と診断された18〜50歳の女性です。くじ引きのような方法で二つのグループに分け、一方はヴィーガン地中海食を、もう一方は従来型の地中海食を6週間続けました。どちらの食事も、管理栄養士が一人ひとりの必要エネルギーに合わせて作成し、エネルギー量や三大栄養素の割合をそろえています。主な違いは、ヴィーガン地中海食では肉や魚、卵、乳製品などをとらず、豆類やナッツなど地中海食に昔からある植物性食品でたんぱく質を補った点です。ヴィーガン群にはビタミンB12のサプリメントも提供され、期間中は研究チームによる毎週の個別サポートが行われました。最後までやり遂げたのは各グループ11人、計22人でした。
遵守度を測るため、著者らは事前に独自の点数表を作りました。果物、野菜、穀類、オリーブオイル、ナッツ・種子類、豆類、菓子や加工肉などの嗜好的な食品という7つの項目について、目標を達成すれば2点、ある程度近ければ1点、それ以外は0点とし、合計14点満点で評価します。食べた内容は、6週目に3日分の聞き取りと食事の写真をもとに記録されました。
あわせて、食事への満足度や、「忙しい」「調理に時間がかかる」「なじみのない食品がある」といった実践上の障壁を質問票で尋ねました。体調の変化としては、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)、中性脂肪、全身の炎症の目安とされる好中球とリンパ球の比率、疲労の程度、線維筋痛症が生活に与える影響の大きさを、試験の前後で比べています。
予想に反して高かったヴィーガン群の遵守度
遵守度は両グループとも中程度から高い水準でしたが、満点に対する割合の平均は、ヴィーガン地中海食のグループで86.4%、従来型の地中海食のグループで72.7%と、ヴィーガン群の方が高い結果でした。研究チームの当初の予想とは逆の結果です。なお、オリーブオイルについては、両グループとも全員が目標量を上回っていました。
ヴィーガン群では、忙しい生活を送っている、食事の準備に時間がかかる、なじみのない食品があると答えた人ほど、遵守度が低い傾向が見られました。一方、食事への満足度は、どちらのグループでも遵守度との関連が見られませんでした。
遵守度と体調の変化との関係では、ヴィーガン群において、遵守度が高い人ほどLDLコレステロール、炎症の目安である好中球とリンパ球の比率、そして疲労の程度が大きく下がっていました。中性脂肪や、線維筋痛症が生活に与える影響の大きさについては、関連は見られませんでした。従来型の地中海食のグループでは、遵守度と体調の変化の間にはっきりした関連は見つかりませんでした。
「何を食べるか」に加えて「実践できるか」
著者らは、きちんとした支援のある条件のもとでは、線維筋痛症の女性にとってヴィーガン地中海食は短期的に実行可能だったと結論づけています。また、よく守れた人ほど一部の心血管・代謝の指標や疲労が改善していたことから、植物性の食事療法の効果は、処方された食事の中身だけでなく、参加者がそれを実際に実践し続けられるかどうかにも左右される可能性があると述べています。
ただし、これは参加者22人という少人数での探索的な解析で、遵守度と体調の変化は関連が示されたにとどまり、どちらが原因かは分かっていません。期間も6週間と短く、対象は18〜50歳の女性に限られています。著者らは、今回の結果を確かめるには、より大規模で長期の研究が必要だとしています。
原著論文の著者・所属:Paula Marrero-Fernández(Department of Chemical Engineering and Pharmaceutical Technology, University of La Laguna, 38071 Santa Cruz de Tenerife, Spain; Diet, Planetary Health and Performance, Faculty of Health Sciences, Universidad Francisco de Vitoria, Pozuelo de Alarcón, 28223 Madrid, Spain)、Siobhan Nicaudie(Faculty of Experimental Sciences, Universidad Francisco de Vitoria, Pozuelo de Alarcón, 28223 Madrid, Spain)、Nuria Pérez-Díaz-Del-Campo(Diet, Planetary Health and Performance, Faculty of Health Sciences, Universidad Francisco de Vitoria, Pozuelo de Alarcón, 28223 Madrid, Spain; Institute of Health and Sport Sciences, Faculty of Health Sciences, Universidad Francisco de Vitoria, Pozuelo de Alarcón, 28223 Madrid, Spain)、Gabriele Bertotti(Diet, Planetary Health and Performance, Faculty of Health Sciences, Universidad Francisco de Vitoria, Pozuelo de Alarcón, 28223 Madrid, Spain; Institute of Health and Sport Sciences, Faculty of Health Sciences, Universidad Francisco de Vitoria, Pozuelo de Alarcón, 28223 Madrid, Spain)、Alberto Roldán-Ruiz(Diet, Planetary Health and Performance, Faculty of Health Sciences, Universidad Francisco de Vitoria, Pozuelo de Alarcón, 28223 Madrid, Spain; Institute of Health and Sport Sciences, Faculty of Health Sciences, Universidad Francisco de Vitoria, Pozuelo de Alarcón, 28223 Madrid, Spain)、Carlos Díaz-Romero(Department of Chemical Engineering and Pharmaceutical Technology, University of La Laguna, 38071 Santa Cruz de Tenerife, Spain)、Miguel López-Moreno(Diet, Planetary Health and Performance, Faculty of Health Sciences, Universidad Francisco de Vitoria, Pozuelo de Alarcón, 28223 Madrid, Spain; Institute of Health and Sport Sciences, Faculty of Health Sciences, Universidad Francisco de Vitoria, Pozuelo de Alarcón, 28223 Madrid, Spain)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Paula Marrero-Fernández, Siobhan Nicaudie, Nuria Pérez-Díaz-Del-Campo, et al. Determinants of Adherence and Their Relationship with Clinical Response to a Vegan Mediterranean Diet in Women with Fibromyalgia: A Secondary Analysis of the FIBROVEG Randomized Trial. Applied Sciences 2026-08-03. DOI: 10.3390/app16157696. 原著ライセンス:CC BY.