この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

白米やパン、麺類などの「主食」を全粒穀物に置き換えると、体にどのような変化が起きるのでしょうか。2型糖尿病は発症前の段階から、脂質異常や体のインスリンへの反応の鈍さ、お腹まわりへの脂肪の蓄積などが同時に進んでいることが多いとされています。今回紹介する研究は、そうした2型糖尿病の高リスク成人を対象に、全粒穀物による主食置換が心臓や代謝に関わる複数の指標にどのような影響を与えるかを、詳しく調べたものです。

研究でわかったこと

この研究は、12週間にわたって行われた3群ランダム化比較試験(全粒穀物を1日100g、1日50g、あるいは通常食を続ける対照群に無作為に割り付け)のデータをもとにした追加的な探索的解析で、144人の参加者(各群48人)が対象となりました。研究チームは、割り付けられた群に沿って、血中脂質、体格、体組成、そして複数の指標を組み合わせた心代謝関連の指標を長期的に、また時間経過にともなう累積的な変化として統計的に評価しました。

その結果、全粒穀物を多く摂取した群(HWG群)と対照群を比べたとき、時間経過にともなう累積的な変化として、中性脂肪、動脈硬化の指標とされる「動脈硬化指数(AIP)」、そして血糖と中性脂肪の関係を示す「中性脂肪-血糖指数(TyG指数)」において、統計的に意味のある差が認められたと報告されています。一方で、従来からある脂質関連の各指標については、それぞれ異なる時間的な変化のパターンを示したとされています。

あわせて、糖尿病のない米国成人30,769人(うち前糖尿病状態にある人が12,169人含まれる大規模健康調査「NHANES」のデータ)を用いた分析も行われました。ここでは、全粒穀物の摂取量が多く、精製穀物と全粒穀物の摂取バランスがより良好な人ほど、肥満やインスリン抵抗性に関連する指標が良い傾向にあり、逆に精製穀物の摂取が多いとおおむね逆の傾向がみられたと報告されています。さらに、国ごとの全粒穀物摂取量、高血糖に起因する糖尿病負担、穀物供給状況についても記述的な分析が行われ、国や地域によって大きなばらつきがあることが示されました。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、あくまで一つの試験データをもとにした追加的な探索的解析であり、これ単独で「全粒穀物への置き換えが病気を予防する」といった結論が確定したわけではありません。NHANESの分析結果は、ある時点での摂取状況と指標との関連を横断的に見たものであり、原因と結果の関係を直接示すものではない点にも注意が必要です。国レベルの分析についても、あくまで各国の状況の違いを記述したものとされています。

まとめ

今回の研究では、2型糖尿病の高リスクにある成人において、全粒穀物への主食置換が、中性脂肪や動脈硬化指数、血糖と中性脂肪の関係を示す指標など、いくつかの心代謝関連の側面で短期的な変化と関連していたことが報告されました。また、より大規模な集団を対象としたNHANESの分析からも、全粒穀物摂取や穀物の質と、肥満・インスリン抵抗性に関連する指標との関連が示されています。今後さらに研究が積み重ねられることで、食事と代謝の関係についての理解が深まっていくことが期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):2型糖尿病高リスク成人における全粒穀物主食置換と心代謝表現型:NHANESおよび国レベル背景を用いた拡張ランダム化試験解析(ニュートリエンツ・2026年08月)

著者:Weihua Dong(Key Laboratory of Public Nutrition and Health of National Health Commission, National Institute for Nutrition and Health, Chinese Center for Disease Control and Prevention & Chinese Academy of Preventive Medicine, Beijing 100050, China)、Yongjun Wang(Key Laboratory of Public Nutrition and Health of National Health Commission, National Institute for Nutrition and Health, Chinese Center for Disease Control and Prevention & Chinese Academy of Preventive Medicine, Beijing 100050, China)、Ziyuan Liu(Key Laboratory of Public Nutrition and Health of National Health Commission, National Institute for Nutrition and Health, Chinese Center for Disease Control and Prevention & Chinese Academy of Preventive Medicine, Beijing 100050, China)、LingLing Ou(Key Laboratory of Public Nutrition and Health of National Health Commission, National Institute for Nutrition and Health, Chinese Center for Disease Control and Prevention & Chinese Academy of Preventive Medicine, Beijing 100050, China)、Qin Zhuo(Key Laboratory of Public Nutrition and Health of National Health Commission, National Institute for Nutrition and Health, Chinese Center for Disease Control and Prevention & Chinese Academy of Preventive Medicine, Beijing 100050, China)、Zhaolong Gong(Key Laboratory of Public Nutrition and Health of National Health Commission, National Institute for Nutrition and Health, Chinese Center for Disease Control and Prevention & Chinese Academy of Preventive Medicine, Beijing 100050, China)、Tingting Liu(Key Laboratory of Public Nutrition and Health of National Health Commission, National Institute for Nutrition and Health, Chinese Center for Disease Control and Prevention & Chinese Academy of Preventive Medicine, Beijing 100050, China)