著者の所属・活動拠点の国は、イランです。
掲載誌:Health Promotion Perspectives
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
なぜ「朝食」に注目したのか
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、お酒を多く飲まない人の肝臓の細胞に中性脂肪などの脂肪がたまる病気で、世界で最も多い慢性疾患の一つです。著者らによると、世界の有病率は32.4%、イランでは38%と推定されています。肥満、脂質異常、インスリン抵抗性、2型糖尿病と深く関わることも知られています。
NAFLDには専用の治療薬がなく、食事や運動など生活習慣の見直しが治療の中心です。食事と病気の関係を調べた研究の多くは、特定の栄養素一つひとつに注目してきました。これに対し、人が実際にどのような組み合わせで食べ物をとっているかという「食事パターン」は、あまり調べられてきませんでした。
研究チームが注目したのは朝食です。朝食は昼食や夕食より習慣が安定しやすい食事とされています。一方で、朝食のパターンとNAFLDの関係を調べた研究はこれまでありませんでした。そこで研究チームは、NAFLDの成人を対象に、朝食の食べ方のパターンと、血液中の脂質・血糖・肝臓の酵素、肥満の指標、病気の重さとの関連を調べました。
どのように調べたか
対象は、イラン北東部のゴナーバード市に住む18〜65歳の成人280人です。いずれもNAFLDと新たに診断され、朝食を週5回以上とっていました。調査は2024年6月から12月に行われました。糖尿病、心血管疾患、がんなどの持病がある人、喫煙や飲酒をする人、妊娠・授乳中の人、交代勤務の人は対象から除かれています。
肝臓に脂肪がたまっている程度は、超音波検査で1〜3の段階(グレード)に分けられました。参加者の内訳は、グレード1が24.6%、グレード2が63.2%、グレード3が12.2%でした。あわせて、身長・体重から求める体格指数(BMI)、腹囲、空腹時血糖、コレステロールや中性脂肪、肝臓の状態を反映する血液中の酵素(ALTとAST)を測りました。
食事は、前日に食べたものをくわしく聞き取る方法で、平日2日と休日1日の計3日分を調べました。そのうえで「因子分析」という統計手法を使い、一緒に食べられやすい食品のまとまりから朝食のパターンを見つけ出しました。参加者一人ひとりには、それぞれのパターンにどれだけ当てはまるかを示す点数が付けられました。点数をもとに参加者を低・中・高の3グループに分けた比較も行っています。分析では、年齢、性別、身体活動量、1日の総摂取エネルギーの影響を差し引いています。
見つかった2つの朝食パターンと主な結果
分析の結果、2つの朝食パターンが見つかりました。研究チームはこれを「健康的なパターン」と「不健康なパターン」と名付けています。健康的なパターンは、野菜、トマト、低脂肪の乳製品、全粒穀物、ナッツ類、紅茶・コーヒーを多くとる傾向です。不健康なパターンは、赤身肉、加糖ジュースや清涼飲料、マヨネーズ、動物性の油脂やバター、高脂肪の乳製品、精製した穀物、菓子類を多くとる傾向です。参加者の朝食は、平均で1日の摂取エネルギーの約4分の1を占めていました。
健康的なパターンの点数が高い人ほど、総コレステロールとBMIが低い傾向がありました。不健康なパターンの点数が高い人ほど、肝臓の酵素であるALTとAST、BMI、腹囲が高い傾向がありました。点数を3グループに分けて比べると、不健康なパターンに最もよく当てはまるグループでは、最も当てはまらないグループに比べて、総コレステロール、中性脂肪、空腹時血糖、ALT、AST、BMIが高くなっていました。
病気の重さとの関係も示されました。健康的なパターンへの当てはまりが中程度のグループと高いグループでは、低いグループに比べて、より重いグレードにあたるオッズ(起こりやすさを表す指標)がそれぞれ79.6%、84%低くなっていました。反対に、不健康なパターンへの当てはまりが最も高いグループでは、最も低いグループに比べて、より重いグレードにあたるオッズが約13.8倍でした。
この研究が示すこと
著者らは、NAFLDの人では、野菜や全粒穀物、ナッツなどを中心とした朝食のとり方が、脂質の状態や体脂肪、病気の重さが良好であることと結びついていたと結論づけています。一方、赤身肉や甘い飲み物、高脂肪の食品などを中心とした朝食は、NAFLDの危険因子が悪いことと結びついていました。そのうえで、健康的な朝食パターンをNAFLDの管理で考慮しうると述べています。
ただし、この研究は一時点の状態を調べた横断研究です。そのため、示されたのは関連であり、朝食の内容が病気の重さを変えたという因果関係までは確かめられていません。著者ら自身も、因果関係を明らかにするには、長期間追跡する研究や介入研究が必要だとしています。毎日の食事の中でも朝食という一食の「組み合わせ」に目を向けた点に、この研究の特徴があります。
原著論文の著者・所属:Mehrdad Kianmehr(Department of Medical Physics, Faculty of Medicine, Gonabad University of Medical Sciences, Gonabad, Iran; Student Research Committee, Tabriz University of Medical Sciences, Tabriz, Iran)、Maryam Rafraf(Nutrition Research Center, Department of Community Nutrition, Faculty of Nutrition and Food Science, Tabriz University of Medical Sciences, Tabriz, Iran)、Alireza Hosseini(Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, Gonabad University of Medical Sciences, Gonabad, Iran)、Mojtaba Kianmehr(Department of Medical Physics, Faculty of Medicine, Gonabad University of Medical Sciences, Gonabad, Iran; Student Research Committee, Tabriz University of Medical Sciences, Tabriz, Iran)、Roghayeh Molani-Gol(Nutrition Research Center, Department of Community Nutrition, Faculty of Nutrition and Food Science, Tabriz University of Medical Sciences, Tabriz, Iran)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mehrdad Kianmehr, Maryam Rafraf, Alireza Hosseini, et al. Breakfast Dietary Patterns and Their Associations with Metabolic Indicators and NAFLD Severity: A Cross-Sectional Study Among Iranian Adults. Health Promotion Perspectives 2026-08-21. DOI: 10.34172/hpp.45534. 原著ライセンス:CC BY.