この研究は、イランの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Diabetology & Metabolic Syndrome
ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
近年、食生活の乱れや代謝異常を背景に、肝臓に脂肪がたまる「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」が世界的に増加していると言われています。一方で「EATランセット食(プラネタリー・ヘルス・ダイエット)」は、人の健康と地球環境の両方に配慮した食事パターンとして近年注目されてきました。ただし、この食事パターンと脂肪肝リスクとの関係について、中東地域の人々を対象にした長期の追跡データはこれまで限られていたとされています。今回紹介する研究は、イランの成人を対象に、この食事パターンへの順守度合いとMASLD発症との関連を5年間追跡して調べたものです。
研究でわかったこと
この研究は、MMRT研究に参加した20〜70歳のイラン人成人5,058人を対象とした前向きコホート研究です。対象者は研究開始時点でMASLDを発症していない人に限定されました。食事内容は125項目からなる食物摂取頻度調査票を用いて評価され、EATランセット食への順守度は「プラネタリー・ヘルス・ダイエット指数(PHDI)」というスコアで数値化されました。5年間の追跡期間中のMASLD発症は、代謝異常が存在する状態で肝脂肪化(CAP値238dB/m以上)が認められた場合と定義されています。
追跡期間中に562人がMASLDを発症し、5年間の累積発症率は11.1%だったと報告されています。さまざまな要因を統計的に調整した分析では、PHDIスコアが最も低いグループと比べて、3番目に高いグループでは39%、4番目(最も高い)グループでは34%、MASLD発症のオッズが低かったとされています(傾向性の検定でP<0.001)。また、PHDIスコアが標準偏差1つ分高くなるごとに、MASLDリスクが16%低いという関連も示されています。この関連はおおむね直線的で、スコアが高い範囲ではやや頭打ちになる傾向も示唆されたとしています。
さらに、この関連がどのような経路で生じているかを調べる媒介分析では、食物繊維摂取量(71.4%)、インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IR(69.3%)、肝脂肪化の指標CAP(53.8%)、炎症マーカーであるCRP(44.0%)が、それぞれ関連の一部を説明する要因として挙げられています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、あくまで一つの前向きコホート研究であり、これによってEATランセット食がMASLDを「予防する」と結論づけられたわけではありません。観察研究であるため、食事パターンと発症リスクの間に関連が見られたことと、原因と結果の関係が証明されたこととは区別して理解する必要があります。また、対象者はイランの成人に限られており、他の地域や集団にそのまま当てはまるとは限りません。今後、他の地域や集団を対象とした追加の研究によって、今回の知見が確認されていくことが期待されます。
まとめ
今回紹介した研究では、環境と健康の両方に配慮した食事パターンであるEATランセット食への順守度が高いイランの成人ほど、5年間の追跡でMASLD発症リスクが低い傾向にあったと報告されています。この関連には、インスリン抵抗性や炎症、肝脂肪化、食物繊維摂取量の違いが関わっている可能性が示唆されていますが、今後さらなる研究による検証が待たれるところです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):EATランセット食事への高い順守は代謝機能障害関連脂肪性肝疾患のリスク低下と関連する:5年間の中東コホート研究(ダイアベトロジー・アンド・メタボリック・シンドローム・2026年06月)
著者:Farzam Kamrani(Department of Nutrition, Faculty of Medicine, Mashhad University of Medical Sciences, Mashhad, Iran)、Mobina Imannezhad(Department of Nutrition, Faculty of Medicine, Mashhad University of Medical Sciences, Mashhad, Iran)、Elahe Etesami(Department of Nutrition, SR.C, Islamic Azad University, Tehran, Iran)、Nazanin Zamanian(Department of Clinical Nutrition, School of Nutritional Sciences and Dietetics, Tehran University of Medical Sciences, Tehran, Iran)、Jalaledin Mirzay Razaz(Department of Community Nutrition, Faculty of Nutrition and Food Technology, National Nutrition and Food Technology Research Institute, Shahid Beheshti University of Medical Sciences, Tehran, Iran)、Sayed Hossein Davoodi(Faculty of Nutrition Sciences and Food Technology, National Nutrition and Food Technology Research Institute (WHO Collaborating Center), Shahid Beheshti University of Medical Sciences, P.O. 19395- 4741, Tehran, Iran)、Reza Homayounfar(Faculty of Nutrition Sciences and Food Technology, National Nutrition and Food Technology Research Institute (WHO Collaborating Center), Shahid Beheshti University of Medical Sciences, P.O. 19395- 4741, Tehran, Iran. [email protected])、Ali Nikparast(Department of Clinical Nutrition and Dietetics, Faculty of Nutrition Sciences and Food Technology, National Nutrition & Food Technology Research Institute, Shahid Beheshti University of Medical Sciences, Tehran, Iran. [email protected])