著者の所属・活動拠点の国は、イタリア、カタールです。

掲載誌:Best Practice & Research Clinical Gastroenterology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

総説のねらい

肝臓に脂肪がたまる病気の中で、近年「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」と呼ばれるものが、世界で最も多い慢性肝疾患になっています。著者らによると、この病気は肥満、インスリンが効きにくくなる状態(インスリン抵抗性)、2型糖尿病と深く結びついています。

著者らは、肝臓の脂肪蓄積(脂肪肝)を肝臓だけの問題ではなく、全身の代謝の乱れが肝臓に現れたものととらえる見方が広がっていると説明しています。また、長期的な経過を左右するのは、肝臓が硬くなっていく「線維化」の進行だとしています。治療薬の選択肢がまだ限られているため、生活習慣の改善が治療の中心になっているといいます。

こうした背景から、著者らは地中海食が肥満に関連する脂肪肝の治療方法としてどこまで有効かについて、現在の研究成果をまとめました。地中海食は、地中海沿岸地域の伝統的な食事をもとにした食事の型です。

どのような研究をまとめたか

この論文は、著者らが既存の研究を読み解いて整理する「ナラティブレビュー(叙述的総説)」です。新たな実験や臨床試験を行ったものではありません。

抄録によると、地中海食が体にどう作用するかを調べた研究(作用の仕組みに関する研究)や臨床研究のデータを取り上げています。臨床研究には、人々の食事と健康状態の関係を観察した観察研究と、参加者を無作為にグループ分けして比較するランダム化臨床試験の両方が含まれています。

主な報告内容

著者らによると、作用の仕組みと臨床のデータからは、地中海食が肝臓に脂肪がたまる主な要因と、心臓や代謝の病気のリスクの両方に働きかけることが示されています。

観察研究とランダム化臨床試験では、肝臓の脂肪や代謝に関する指標の改善が示されたと報告されています。さらにその改善は、減量だけで得られる効果を上回ることが多かったとされています。

これらの知見を踏まえ、著者らは地中海食を安全で長く続けやすい食事法と評価し、消化器内科の診療に取り入れられるものだと結論づけています。

この総説が示すこと

この総説は、治療薬の選択肢が限られている脂肪肝の管理において、地中海食という食事の型が有力な選択肢になりうることを、既存の研究をもとに示しています。

一方で著者らは、今後取り組むべき課題も挙げています。食事をどれだけ守れたかを測る基準の統一、実際の病気の経過を評価するより長期の試験、代謝の特徴や腸内細菌の構成を考慮して一人ひとりに合わせる栄養の考え方です。これらからは、地中海食の効果をより確かに評価するには、まだ検討の余地があるという著者らの認識がうかがえます。

原著論文の著者・所属:Ludovico Abenavoli(Center for Chronic Liver Diseases, “Renato Dulbecco” University Hospital, 88100 Catanzaro, Italy; Department of Health Sciences, University Magna Graecia of Catanzaro, 88100 Catanzaro, Italy)、Giuseppe Guido Maria Scarlata(Center for Chronic Liver Diseases, “Renato Dulbecco” University Hospital, 88100 Catanzaro, Italy; Department of Health Sciences, University Magna Graecia of Catanzaro, 88100 Catanzaro, Italy)、Maria Luisa Gambardella(Center for Chronic Liver Diseases, “Renato Dulbecco” University Hospital, 88100 Catanzaro, Italy; Department of Health Sciences, University Magna Graecia of Catanzaro, 88100 Catanzaro, Italy)、Anna Giulia Loricchio(Center for Chronic Liver Diseases, “Renato Dulbecco” University Hospital, 88100 Catanzaro, Italy; Department of Health Sciences, University Magna Graecia of Catanzaro, 88100 Catanzaro, Italy)、Francesco Di Giovanni、Ghizlane Bendriss(Premedical Department, Weill Cornell Medicine Qatar, Doha, Qatar)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ludovico Abenavoli, Giuseppe Guido Maria Scarlata, Maria Luisa Gambardella, et al. Mediterranean diet, obesity, and liver steatosis: Clinical evidence and implications for gastroenterology practice. Best Practice & Research Clinical Gastroenterology 2026-08-01. DOI: 10.1016/j.bpg.2026.102131. 原著ライセンス:CC BY.