著者の所属・活動拠点の国は、イタリア、アルジェリア、アルバニアです。
掲載誌:Animals
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
家畜の飼料では、主なたんぱく源として大豆粕や魚粉が使われています。しかし、環境への負荷や飼料コストの上昇が課題となり、代わりになる原料が探されています。その候補の一つが昆虫です。昆虫はたんぱく質や脂質を多く含み、環境負荷が比較的小さいとされています。なかでもヨーロッパイエコオロギ(Acheta domesticus)は粗たんぱく質が多く、アミノ酸の構成も良いため、胃が一つの動物(単胃動物)の飼料として期待されています。
ウサギは繁殖力が高く成長も速い家畜で、その肉はたんぱく質が多く脂肪が少ないことで評価されています。ただし、ウサギに昆虫由来の原料を与えた研究は少なく、コオロギ粉を使った先行研究は1件しかありません。その研究では、コオロギ粉で大豆粕を置き換えても成長や消化に悪影響はないと報告されましたが、枝肉や肉質への影響は調べられていませんでした。なお著者らによると、欧州連合(EU)の現行規制では、昆虫由来の加工動物性たんぱく質をウサギの飼料に使うことは認められておらず、こうした研究は実験段階にとどまっています。
そこで研究チームは、育成期のウサギの飼料に含まれる大豆粕の一部をコオロギ粉に置き換えたとき、枝肉の特性、肉の物理的な品質、成分、そして脂肪酸の組成がどう変わるかを調べました。
どのように調べたか
試験はアルバニアのティラナ農業大学獣医学部で行われました。ウサギを、通常の飼料を与える対照群と、大豆粕の一部をコオロギ粉に置き換えた飼料を与える群に分けて育て、85日齢でと畜しました。著者らによると、2つの飼料はエネルギー量とたんぱく質量をそろえて設計されていましたが、脂質の量と組成は厳密には同じではありませんでした。
と畜後は、枝肉の重さ、部位ごとの割合、体内の脂肪の量、後ろ脚の肉・脂肪・骨の割合を測りました。肉の品質については、背中の筋肉(背最長筋)で、と畜後のpH、保水性(肉が水分を保つ力)、加熱したときに失われる重さの割合(加熱損失)、色を測定しました。さらに背中の筋肉ともも肉について、水分・たんぱく質・脂肪などの成分と、脂肪を構成する脂肪酸の種類と量を分析しました。
主な結果
と畜時の体重と枝肉の重さには、2つの群で統計的に意味のある差はありませんでした。主な部位(前脚部・胸部・後部)の割合にも差はありませんでした。一方、脂肪のつき方ははっきり変わりました。コオロギ粉を与えた群では、肩甲骨周辺の脂肪と腎臓周辺から骨盤にかけての脂肪が対照群より多くなっていました。また後ろ脚では、肉の割合が低く、脂肪などの割合が高くなっていました。
肉の物理的な品質では、pH、保水性、色に差はありませんでした。ただし加熱損失は、コオロギ粉を与えた群のほうが高くなりました(28.65%対26.62%)。肉の成分では、コオロギ粉を与えた群で脂肪の割合が高くなっていました。
脂肪酸の組成には大きな変化がありました。コオロギ粉を与えた群では、n-6系の多価不飽和脂肪酸、主にリノール酸が増えました。その一方で、α-リノレン酸やDHAなどのn-3系脂肪酸は減り、n-6とn-3の比率が大きく上がりました。動脈硬化や血栓のなりやすさの目安として使われる指数には、ほとんど変化がありませんでした。多価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の比率は、コオロギ粉を与えた群で高くなりました。こうした飼料による変化は、背中の筋肉ともも肉の両方で同じように見られました。なお、オスとメスの間に有意な差は検出されませんでした。ただし著者らは、メスの数が少なく性別の構成も偏っていたため、この結果は慎重に解釈すべきだとしています。
研究が示すこと
著者らは、サンプル数が比較的少ない点に注意が必要だとしたうえで、育成期のウサギの飼料で大豆粕の一部をコオロギ粉に置き換えても、と畜時の成績、枝肉の歩留まり、肉の主な品質特性は損なわれないことが示唆されたと結論づけています。その一方で、コオロギ粉への反応は主に脂肪の蓄積と脂肪酸組成の変化として現れました。特にn-3系脂肪酸が減ってn-6とn-3の比率が上がったことについて、著者らは肉の脂質の栄養的な質が低下したことを示すとしています。
また、この試験ではコオロギ粉を加えることと大豆粕を減らすことが同時に起きているため、どちらがどの変化をもたらしたのかを完全には切り分けられない、と論文は述べています。この研究は、代替のたんぱく源を評価するときには、たんぱく質の供給だけでなく、それに伴う飼料中の脂質の変化にも目を向ける必要があることを示しています。
原著論文の著者・所属:Alda Quattrone(Department of Veterinary Medicine and Animal Sciences, University of Milan, Via dell’Università 6, 26900 Lodi, Italy)、Naouel Feknous(Biotechnologies Related to Animal Reproduction, Institute of Veterinary Sciences, University Blida 1, B.P 270, Road of Soumaa, Blida 9000, Algeria)、Nour Elhouda Fehri(Department of Veterinary Medicine and Animal Sciences, University of Milan, Via dell’Università 6, 26900 Lodi, Italy)、Gabriele Brecchia(Department of Veterinary Medicine, University of Perugia, Via San Costanzo 4, 06126 Perugia, Italy)、Michela Contò(Consiglio per la Ricerca in Agricoltura e l’Analisi Dell’Economia Agraria (CREA), Centro di Ricerca Zootecnia e Acquacoltura, Research Centre for Animal Production and Aquaculture, Via Salaria 31, 00015 Rome, Italy)、Majlind Sulçe(Faculty of Veterinary Medicine, Agricultural University of Tirana, Koder Kamez, 1029 Tirana, Albania)、Giulio Curone(Department of Veterinary Medicine and Animal Sciences, University of Milan, Via dell’Università 6, 26900 Lodi, Italy)、Gerald Muça(Faculty of Veterinary Medicine, Agricultural University of Tirana, Koder Kamez, 1029 Tirana, Albania)、Daniele Vigo(Department of Veterinary Medicine and Animal Sciences, University of Milan, Via dell’Università 6, 26900 Lodi, Italy)、Laura Menchetti(School of Biosciences and Veterinary Medicine, University of Camerino, Via Circonvallazione 93/95, 62024 Matelica, Italy)、Olimpia Barbato(Department of Veterinary Medicine, University of Perugia, Via San Costanzo 4, 06126 Perugia, Italy)、Egon Andoni(Faculty of Veterinary Medicine, Agricultural University of Tirana, Koder Kamez, 1029 Tirana, Albania)、Valentina Serra(Department of Veterinary Medicine and Animal Sciences, University of Milan, Via dell’Università 6, 26900 Lodi, Italy)、Sabrina Di Giovanni(Consiglio per la Ricerca in Agricoltura e l’Analisi Dell’Economia Agraria (CREA), Centro di Ricerca Zootecnia e Acquacoltura, Research Centre for Animal Production and Aquaculture, Via Salaria 31, 00015 Rome, Italy)、Francesca Falcinelli(Department of Veterinary Medicine, University of Perugia, Via San Costanzo 4, 06126 Perugia, Italy)、Grazia Pastorelli(Department of Veterinary Medicine and Animal Sciences, University of Milan, Via dell’Università 6, 26900 Lodi, Italy)、Marta Castrica(Department of Life Science, Health and Health Professions, Università degli Studi “Link Campus University”, Via del Casale di S. Pio V 44, 00165 Rome, Italy)、Sebastiana Failla(Consiglio per la Ricerca in Agricoltura e l’Analisi Dell’Economia Agraria (CREA), Centro di Ricerca Zootecnia e Acquacoltura, Research Centre for Animal Production and Aquaculture, Via Salaria 31, 00015 Rome, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alda Quattrone, Naouel Feknous, Nour Elhouda Fehri, et al. Effect of Dietary Inclusion of House Cricket (Acheta domesticus) Meal on Carcass Characteristics and Meat Quality in Rabbits. Animals 2026-08-19. DOI: 10.3390/ani16162596. 原著ライセンス:CC BY.