家畜の飼料に使われる大豆粕は、たんぱく質源として重要な原料です。しかし大豆粕には消化を妨げる成分(抗栄養因子)が含まれており、これを乳酸菌で発酵させることで酸性化を進め、栄養的な質を高められる可能性があるとされています。今回紹介する研究は、こうした発酵に使える乳酸菌を、身近な発酵野菜から探し出そうという試みです。研究を行ったのはタイのColotex bio-technology (Thailand)社の研究開発部門に所属する研究者らです。
研究チームがまず注目したのは、伝統的な発酵野菜という分離源です。地域で手に入りやすく安価であるうえ、自然に乳酸菌が豊富に含まれていることから選ばれました。この発酵野菜のサンプルから、炭酸カルシウムを加えたMRS寒天培地を用いて、酸を生成する細菌が9株分離されました。これらはまずグラム染色とカタラーゼ試験によって基礎的な性質が調べられ、その中からCLT-35、CLT-51、CLT-33、CLT-52、CLT-53、CLT-L01という6株が、酸を作る効率を比較する次の試験に進みました。
もっとも速く酸を作った菌株はどれか
MRSブロスという液体培地で培養し、pHの下がり方を比較したところ、CLT-L01という株がもっとも速く酸を生成し、培養24時間後にはpHが3.21(±0.02)まで低下しました。他の候補株よりも酸生成の速さで優れていたことから、CLT-L01が大豆粕の固体発酵に使う候補として選ばれ、次の段階の実験に進みました。
続いて、大豆粕にCLT-L01を接種して固体発酵を行う実験が行われました。その結果、乳酸含量は発酵開始から急速に増加し、96時間後には10%を超えたと報告されています。もっとも高い乳酸含量は127時間の時点で11.13%(±0.06)に達しました。一方、菌を接種せず自然の発酵にまかせた対照区では、151時間経過してもわずか2.43%(±0.12)にとどまったとされています。この比較から、CLT-L01を加えることで、何も加えない場合に比べて酸の生成と発酵の進み方が速まったことが示されています。
さらに、CLT-L01がどのような菌であるかを確認するため、16S rDNAという遺伝子配列を調べる分子同定が行われました。その結果、参照株であるLactiplantibacillus plantarumと99%を超える配列の一致が確認され、CLT-L01はこの種に属する菌であると判定されました。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、伝統発酵野菜という身近な材料から有用な乳酸菌株を見つけ出し、その中から大豆粕の発酵に適した性質を持つ株を選び出す、いわば「スターター菌の候補探し」の段階に相当する内容です。今回得られた結果は、CLT-L01という特定の菌株を使った実験条件のもとでの数値であり、他の条件や大規模な生産現場でも同じように酸生成が進むかどうかは、この要旨の範囲だけでは分かりません。あくまで一つの研究であり、結論が確定したものではない点には注意が必要です。
まとめ
今回の研究では、伝統的な発酵野菜からLactiplantibacillus plantarum CLT-L01という乳酸菌株が分離され、大豆粕の固体発酵において自然発酵よりも速く乳酸を蓄積させる働きを持つことが示されました。飼料用大豆粕の発酵をより効率よく進めるためのスターター菌候補として、CLT-L01には可能性があると報告されています。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Phongsupha Chanthachaiyaphum, Yue Wang, Wenbo Wang. Isolation and selection of Lactiplantibacillus plantarum CLT-L01 (TISTR P088) from traditional fermented vegetables for solid-state fermentation of soybean meal (SBM). 応用科学技術研究ジャーナル(JARST) (2026). DOI: 10.60101/jarst.2026.268321. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.