この研究は、中国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
お肉を冷蔵庫で保存していると、時間の経過とともに色や香り、食感が少しずつ変化していくことがあります。これは肉に含まれる脂質やタンパク質が酸素と反応して劣化していく「酸化」という現象が関係しています。食品の保存性を高めるために合成の保存料が使われることもありますが、近年では植物由来の天然成分を活用しようとする研究が世界各地で進められています。今回紹介する研究では、忍冬(スイカズラ、学名:Lonicera japonica Thunb.)から得られた抽出物が、生のウサギ肉の保存中の品質にどのような影響を与えるかが調べられました。
研究でわかったこと
この研究では、生のウサギ肉に濃度の異なるスイカズラ抽出物(1〜7% w/v)、あるいは対照として脱イオン水を処理し、4℃で5日間保存したときの変化が比較されました。調べられたのは、肉の酸性度(pH)や色合いといった基本的な品質指標に加え、脂質の酸化度を示すTBARS値、微生物による分解の指標となるTVB-N(揮発性塩基窒素)値、そして生菌数(TVC)といった項目です。
結果として、スイカズラ抽出物を処理した肉では、対照群と比べてTBARS、TVB-N、TVCの値がいずれも有意に低下したと報告されています。これは、脂質の酸化や微生物による腐敗の進行が抑えられた可能性を示す結果です。
さらに、肉の主要なタンパク質成分である筋原線維タンパク質(MP)についても詳しく調べられました。タンパク質が酸化すると「カルボニル」という酸化生成物が増える一方、「スルフヒドリル基」と呼ばれる構造は減少する傾向があります。この研究では、スイカズラ抽出物を処理した肉でカルボニル量が有意に減少し、逆にスルフヒドリル含量は増加したことが示されました。これはタンパク質の酸化が抑制されたことを示唆する結果です。
加えて、スイカズラ抽出物の処理によって、筋原線維タンパク質の保水性(WHC)と溶解性が保存期間中に高まり、表面疎水性は低下したと報告されています。タンパク質の保水性や溶解性は、肉の食感やジューシーさに関わる機能的な性質とされており、これらが保たれたことは、肉としての品質維持につながる変化と考えられます。
これらの結果を総合し、著者らはスイカズラ抽出物が生ウサギ肉に対する天然の保存料として機能し、酸化や微生物による劣化を抑えることで保存品質の維持と保存期間の延長に役立つ可能性があると結論づけています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、4℃・5日間という特定の保存条件下で、生のウサギ肉を対象に行われた実験に基づくものです。要旨の中では研究の限界について具体的な記述はありませんが、一つの実験結果として捉え、他の食肉や保存条件、あるいはヒトが実際に摂取した際の健康影響にまでそのまま当てはまるかどうかは、この要旨だけからは判断できません。天然の抽出物であっても、食品としての安全性や実用化に向けては、さらなる研究や検証が必要になる場合があります。
まとめ
今回の研究では、スイカズラ抽出物を処理した生ウサギ肉において、脂質酸化や微生物増殖の指標が低下し、筋原線維タンパク質の酸化も抑えられ、保水性や溶解性といった機能面も保たれたことが報告されました。植物由来の成分が食肉の保存性維持にどう関わりうるかを考えるうえで、興味深い知見を提供する研究だといえるでしょう。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):ウサギ肉の天然保存料としてのスイカズラ(Lonicera japonica Thunb.)抽出物:脂質・タンパク質酸化の抑制と筋原線維タンパク質機能の維持(フーズ・2026年08月)
著者:Xiaohua Huang(Meat Processing Key Laboratory of Sichuan Province, College of Food and Biological Engineering, Chengdu University, Chengdu 610106, China)、Wenjiao Chen(Meat Processing Key Laboratory of Sichuan Province, College of Food and Biological Engineering, Chengdu University, Chengdu 610106, China)、Zhengqiang Tong(Zigong Eighty Salt Gang Food Co., Ltd., Zigong 643000, China)、Peiyin Tang(Sichuan Aishi Rabbit Food Co., Ltd., Bazhong 636700, China)、Siyi Yang(Meat Processing Key Laboratory of Sichuan Province, College of Food and Biological Engineering, Chengdu University, Chengdu 610106, China)、Xin Zhang(Meat Processing Key Laboratory of Sichuan Province, College of Food and Biological Engineering, Chengdu University, Chengdu 610106, China)、Feixia Duan(Department of Food Engineering, College of Biomass Science and Engineering, Sichuan University, Chengdu 610065, China)、Jiamin Zhang(Meat Processing Key Laboratory of Sichuan Province, College of Food and Biological Engineering, Chengdu University, Chengdu 610106, China)