乳牛の飼料には、タンパク質源として大豆粕(ダイズを搾油したあとに残る粕)が広く使われています。一方で、大豆粕以外のタンパク質源を活用できれば、飼料設計の選択肢を広げられる可能性があります。今回紹介する研究は、酵母で発酵させた蒸留粕由来のタンパク質源(論文中ではFPSと表記)を使い、大豆粕の一部を置き換えたときに、交雑種の乳牛の乳生産や血液の状態にどのような変化が起きるかを調べたものです。著者はトルコのエスキシェヒル・オスマンガジ大学農学部動物科学科に所属しています。
研究でわかったこと
この研究では、乾物あたりの粗タンパク質含量が454g/kgの大豆粕(SBM)と、635g/kgの発酵タンパク質源(FPS)という、2種類のタンパク質源が飼料中でどのような効果を示すかを比較しました。乳牛は無作為に4つのグループ(各グループ6頭)に分けられ、次の飼料が与えられました。
- 対照群:大豆粕120g/kg
- FPS30群:FPS30g/kgと大豆粕75g/kg
- FPS40群:FPS40g/kgと大豆粕60g/kg
- FPS50群:FPS50g/kgと大豆粕45g/kg
21日間の馴化期間のあと45日間の給餌試験を行い、合計66日間観察されました。その結果、乾物摂取量、乳タンパク質含量、乳の比重にはグループ間で明確な差は見られませんでした。しかし、乳量はFPS50群で有意に高くなりました(p=0.043)。また、乳脂肪(p=0.021)、乳の乾物含量(p=0.013)、無脂固形分(p=0.047)、乳糖含量(p=0.007)についても、FPSを給与したグループで有意に高い値が示されました。
血液の状態については、試験開始時(0日目)にはグループ間で差はありませんでしたが、66日目の時点で、血中尿素窒素(BUN、p=0.044)と血清中のカルシウム(p=0.041)、リン(p=0.039)、マグネシウム(p=0.041)の濃度が、FPSを給与したグループで有意に低くなっていました。さらに、FPSの摂取量は、乳量(相関係数0.680)、乳の乾物含量(0.706)、乳脂肪(0.665)、無脂固形分(0.566)、乳糖含量(0.653)、脂肪とタンパク質の比率(0.507)と正の相関を示す一方、乳の比重(マイナス0.429)やミネラル含量(マイナス0.271)とは負の相関を示したと報告されています。
著者は、こうした結果について、FPSを一定量給与することで乳生産性の向上や乳質特性の改善・維持につながる可能性があるとし、血中尿素窒素の低下はタンパク質の利用効率が高まったことを示している可能性があると考察しています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は交雑種乳牛を対象とした一つの試験であり、飼料中のタンパク質源の違いが乳量や乳成分、血液中の特定の指標に関連していたことを報告するものです。効果や仕組みの断定的な結論を示すものではなく、今回の結果がどの範囲の条件(牛の品種、飼育環境、飼料の組成など)に当てはまるかは、この要旨の情報だけでは分かりません。血清中のミネラル濃度が低下した点についても、それが望ましい変化か注意すべき変化かは、この記事の根拠となった情報だけでは判断できません。
まとめ
この研究では、酵母発酵させた蒸留粕由来のタンパク質源で大豆粕の一部を置き換えた飼料を交雑種乳牛に与えたところ、乳量や乳脂肪、乳固形分、乳糖含量が高まる一方、血中尿素窒素や一部の血清ミネラル濃度が低下したことが報告されました。今後さらに研究が積み重ねられることで、こうした飼料設計が乳牛の生産性や健康にどのように関わるのか、理解が深まっていくと考えられます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:酵母発酵蒸留粕由来タンパク質源による大豆粕の部分代替:交雑種乳牛の乳量、乳成分および血清生化学への影響(メタボライツ・2026年07月)