著者の所属・活動拠点の国は、トリニダード・トバゴです。

掲載誌:Frontiers in Animal Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

カリブ海地域では、肉用ウサギの商業生産が動物性たんぱく質の新たな供給源として期待されています。一方で、飼料の原料の多くを輸入に頼っており、地元の原料や熱帯の飼料植物を活用して飼料源を多様化する必要性が指摘されています。

研究チームが注目したのは、トリニダードのような熱帯気候でよく育つものの、ウサギの飼料としてはほとんど研究されていないツルムラサキ(マラバールホウレンソウ、学名Basella alba)です。著者らによると、ウサギの栄養にツルムラサキを用いた研究はこれまで見当たらないといいます。そこで本研究は、ツルムラサキを補助的な飼料原料として加えた場合に、肉用ウサギの成長や枝肉(食肉として利用する部分)の性質に悪影響が出ないかを調べることを目的としました。ウサギへの利用が新しい試みであることから、配合割合は用心のため1%という低い水準に設定されています。

どのように調べたか

試験はトリニダードの西インド諸島大学の農場内にあるウサギ飼育施設で、2024年1月11日から2月15日までの乾季に行われました。期間中の気温はおおむね24〜31℃でした。生後35日で離乳したニュージーランドホワイトとカリフォルニアンの交雑種のウサギ20匹(雌雄混合)を、体重が偏らないよう2群に10匹ずつ分け、個別のケージで35日間飼育しました。

一方の群には市販のウサギ用ペレット飼料を、もう一方の群には、乾燥させて粉末にしたツルムラサキの葉・茎・実を1%の割合で混ぜて再びペレットにした飼料を与えました。分析によると、ツルムラサキの粉末は粗たんぱく質が21.3%、粗繊維が22.0%と、たんぱく質と繊維がともに多い原料でした。ただし1%を加えた飼料と通常の飼料との間で、栄養成分に統計的に意味のある差は見られませんでした。

研究チームは、1日あたりの増体量、乾物摂取量(水分を除いた飼料の摂取量)、飼料要求率(体重を1増やすのに必要な飼料の量で、低いほど効率が良い)を記録しました。試験終了後には、生体重、枝肉重量、枝肉歩留まり(生体重に占める枝肉の割合)、各臓器の重さ、背中の筋肉に含まれるたんぱく質や脂肪の量を比較しました。

主な結果

成長については、すべての指標で両群の間に統計的に意味のある差はありませんでした。数値の上では、ツルムラサキを与えた群のほうが1日あたりの増体量と摂取量がやや多く、飼料要求率がやや低かったものの、偶然の範囲を超える差とは判断されませんでした。

枝肉の性質もほぼ同じで、枝肉歩留まりは両群とも48.76%でした。消化管、肝臓、心臓、肺の重さにも差はありませんでした。差が見られたのは腎臓の重さで、通常飼料の群の平均14.00gに対し、ツルムラサキを与えた群は10.89gと統計的に意味のある差で軽くなっていました。著者らは、どちらの値も文献で報告されているウサギの腎臓の標準的な範囲に収まっていること、ほかの成長指標に差がないことを踏まえて、この違いは植物に含まれる栄養を妨げる成分によるものではないとの見方を仮説として示しています。

肉の成分では、たんぱく質の量に差はありませんでしたが、脂肪の量はツルムラサキを与えた群で1.64%と、通常飼料の群の2.93%より統計的に意味のある差で低くなっていました。著者らはこれを植物に含まれる成分と関連づける可能性に触れつつ、腎臓の重さとあわせて、より詳しい検証が必要だとしています。

試験期間中には5匹が死亡しました。両群ともに寄生虫のコクシジウムが検出され、通常飼料の群の4匹は下痢を伴うコクシジウム症で、ツルムラサキの群の1匹は解剖の結果、暑熱ストレスによるものと判断されました。成長の解析には死亡した個体のデータは含まれていません。この試験で記録されたのは死亡数と死因であり、腸の粘膜の状態を守る効果そのものは測定されていません。著者らは、ウサギでツルムラサキの殺菌・抗菌作用を調べた研究がないため、治療的な性質があるとは結論できないと述べています。そのうえで、フラボノイドなどの成分によって腸の内壁が守られた可能性が高いとの推測を示し、この推測的な役割を確かめるための実験室での検証を勧めています。

この研究が示すこと

研究チームは、ツルムラサキを1%の割合で飼料に加えても、通常のペレット飼料と同程度の成長、枝肉、肉の性質が保たれたと結論づけています。あまり利用されてこなかった地元の植物を、ウサギの補助的な飼料原料として使える可能性を示す基礎データという位置づけです。

一方で著者らは、1群10匹という小さな規模であること、試した配合割合が1%の1種類だけで最適な割合は分からないこと、消化率や腸内環境などは調べていないことを、この予備試験の限界として挙げています。今回の結果は、低い配合割合での利用について得られた予備的な知見として受け止めるのが適切です。

原著論文の著者・所属:Arianna Sadiyah Jahoor(Department of Food Production, Faculty of Food and Agriculture, The University of the West Indies)、Kegan Romelle Jones(Department of Basic Veterinary Science, School of Veterinary Medicine, Faculty of Medical Sciences, The University of the West Indies)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Arianna Sadiyah Jahoor, Kegan Romelle Jones. Preliminary assessment of the effects of Malabar spinach (Basella alba L.) as a dietary supplement on growth and carcass characteristics of broiler rabbits (Oryctolagus cuniculus) in Trinidad. Frontiers in Animal Science 2026-08-06. DOI: 10.3389/fanim.2026.1885596. 原著ライセンス:CC BY.