著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Animals

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

産卵後期の鶏に合ったミネラル量を探る

採卵用の鶏は年齢が進むと、産卵数が減り、卵の質も落ちていきます。産卵率がピーク時の8割まで下がると「産卵後期」に入るとされ、長い生産期間のおよそ半分を占めます。この時期には、脂質代謝の変化や酸化ストレスの増加といった体の変化も伴うと考えられています。

カルシウムとリンは卵殻づくりをはじめ多くの生理機能に関わる重要なミネラルで、飼料費の中でもエネルギーやたんぱく質に次ぐ大きな割合を占めます。著者らは、リンの量を「非フィチンリン」で扱いました。これは飼料中のリンのうち、植物に多いフィチン酸と結びついた形を除いた部分で、鶏に必要なリンの量をより正確に見積もる指標とされています。

研究チームが対象にしたのは、中国の在来品種である北京油鶏です。肉や卵の質が評価される一方、年間の産卵数は150〜170個ほどで、高産卵の商業品種より少なく、必要なミネラル量も異なる可能性があります。そこで、産卵後期の北京油鶏について、カルシウムと非フィチンリンの量が単独で、また組み合わせとして、産卵成績、卵質、血液中の脂質代謝や抗酸化の指標、卵胞の発達にどう影響するかを調べました。

9通りの飼料で14週間飼育

実験には44週齢の北京油鶏900羽が使われました。飼料のカルシウム濃度を3.0%、3.4%、3.8%の3段階、非フィチンリン濃度を0.31%、0.36%、0.41%の3段階とし、これらを掛け合わせた9通りの飼料を各100羽に与えました。1週間の慣らし期間の後、45週齢から58週齢まで飼育し、毎日の産卵数と卵重を記録しました。

52週齢と58週齢には卵を抜き取り、卵殻の強度や厚さ、卵黄の色、卵白の高さなどを測りました。卵の鮮度を示す代表的な指標「ハウユニット」は、濃厚卵白の高さと卵重から計算される値です。試験の最後には血液を採取して脂質やミネラル、酸化の指標を測り、一部の鶏では卵巣の卵胞の大きさと数を調べました。

単独よりも「組み合わせ」が効いた

カルシウムや非フィチンリンの量を単独で変えても、45〜58週齢の産卵成績に差は見られませんでした。一方で両者の組み合わせは、期間中の卵の総重量(産卵量)に影響し、カルシウム3.0%・非フィチンリン0.31%の組み合わせが最も高い値を示しました。この組み合わせは産卵率も最も高い傾向にありました。

卵殻の強度は、どちらの量を単独で変えても影響を受けませんでしたが、58週齢の卵殻の厚さは両者の組み合わせによって変化しました。卵の内部の質では、卵白の高さやハウユニット、卵黄の色が両週齢で組み合わせの影響を受けました。特にカルシウム3.0%・非フィチンリン0.41%の組み合わせでは、52週齢・58週齢とも卵白の高さとハウユニットが最も高く、58週齢では卵の等級も最も高くなりました。

血液では、カルシウム濃度は飼料の違いによって変わりませんでした。悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロールは組み合わせの影響を受け、カルシウム3.0%・非フィチンリン0.41%の群で最も低くなりました。ただし、非フィチンリン0.41%の飼料では、脂質の酸化の程度を示すマロンジアルデヒドが他の濃度より高くなりました。

卵胞については、大きく育った卵胞の数に違いはありませんでしたが、その手前の段階にある小さな黄色卵胞は、非フィチンリン0.36%と0.41%で多くなりました。組み合わせではカルシウム3.4%・非フィチンリン0.36%の群が最多でした。この結果は各群4羽の観察に基づいており、著者らはより多くの数での確認が必要だとしています。

量そのものより比率に目を向ける

著者らは、今回の範囲ではカルシウムや非フィチンリンの量そのものより、両者の組み合わせ、つまり比率が産卵量や卵質、脂質代謝、小さな卵胞の数に関わっていたとまとめています。目的によって有利な組み合わせが異なった点も特徴で、産卵量にはカルシウム3.0%・非フィチンリン0.31%、卵質と脂質代謝にはカルシウム3.0%・非フィチンリン0.41%が良い結果を示しました。

一方で、非フィチンリンを0.41%まで増やしても産卵成績に上乗せの効果は見られず、脂質の酸化が進む可能性も示されました。産卵数の少ない在来品種の産卵後期では、リンを多めに与えればよいわけではなく、カルシウムとのバランスを考えることが大切だという見方を、この研究は示しています。

原著論文の著者・所属:Zhixun Yan(Institute of Animal Husbandry and Veterinary Medicine, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences, Beijing 100097, China)、Qianqian Zhang(Institute of Animal Husbandry and Veterinary Medicine, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences, Beijing 100097, China)、Weiyu Zhao(Institute of Animal Husbandry and Veterinary Medicine, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences, Beijing 100097, China)、Cheng Chang(Institute of Animal Husbandry and Veterinary Medicine, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences, Beijing 100097, China)、Yafang Zhao(Institute of Animal Husbandry and Veterinary Medicine, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences, Beijing 100097, China)、Jian Zhang(Institute of Animal Husbandry and Veterinary Medicine, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences, Beijing 100097, China)、Huagui Liu(Institute of Animal Husbandry and Veterinary Medicine, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences, Beijing 100097, China)、Ailian Geng(Institute of Animal Husbandry and Veterinary Medicine, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences, Beijing 100097, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zhixun Yan, Qianqian Zhang, Weiyu Zhao, et al. Effects of Dietary Calcium and Non-Phytate Phosphorus Interaction on Performance, Egg Quality and Lipid Metabolism of Aged Local Laying Hens. Animals 2026-09-25. DOI: 10.3390/ani16193017. 原著ライセンス:CC BY.