著者の所属・活動拠点の国は、ロシアです。

掲載誌:Fisheries

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究のねらい

都市化が進むにつれて、すぐに食べられる調理済み食品の需要が高まっています。その中で魚を使った調理済み食品は大きな位置を占めており、健康に役立つ性質を持たせた「機能性」食品の品ぞろえを広げることが課題になっています。

著者らは、アゾフ海などでとれるハゼの一種ラウンドゴビー(Neogobius melanostomus)を原料に、褐藻のシストセイラ(Cystoseira barbata)を加えた調理済み食品を開発し、その製造条件を裏づけることを目的としました。シストセイラはヨウ素を多く含む海藻で、著者らは、これを食品に加えることでヨウ素不足に関連する病気の予防に役立つ可能性があると述べています。

加熱には「スーヴィード(Sous Vide)」と呼ばれる低温調理法を用いました。食材を真空パックにして比較的低い温度で加熱する方法で、やわらかくジューシーな食感と良い香りの製品が得られるとされています。

どのように作り、何を調べたか

原料には2024年9月にとれたハゼと、同年7月にケルチ湾で嵐の後に打ち上げられたものを集めたシストセイラが使われました。ハゼの切り身を洗って冷やし、ひき肉状にしたうえで、玉ねぎ、豚の背脂、卵、粉乳、でんぷん、塩、こしょう、粉末にした乾燥シストセイラを混ぜ合わせます。試作の結果、官能評価(見た目・味・香りなどを人が評価する方法)で最も高い評価を得たのは、シストセイラ入りのカツレツでした。配合では、製品100に対して乾燥シストセイラが4の割合で含まれます。

生地は1個100グラムの丸い形に成形し、形が崩れないようにマイナス18度で4〜5時間ほど凍らせてから真空包装し、スーヴィードで加熱しました。加熱温度は58〜73度、加熱時間はおよそ15〜33分の範囲で条件を変えて試しています。

加熱が十分かどうかを判断する主な目安としたのは、食品中の一般的な細菌数を示す指標(中温性の好気性菌・通性嫌気性菌の数)です。ユーラシア経済連合の技術規則では、冷凍の調理済み料理について、この値は1グラムあたり2×10の4乗個以下と定められています。研究チームは、温度と時間がこの細菌数にどう影響するかを数式で表す回帰モデルを作り、統計ソフトを使って最適な加熱条件を求めました。論文では、このモデルの当てはまりの良さを示す決定係数が0.92と報告されています。

主な結果

モデルによる最適化の結果、最適な加熱条件は温度67度、時間26分と導かれました。この条件で作ったカツレツは、官能面と微生物面の基準をいずれも満たしたと報告されています。製品はやわらかな食感とジューシーさ、良い香りに加え、海藻らしい風味を持っていたといいます。

完成したカツレツの成分は、水分約70%、たんぱく質14%、脂質6.3%、炭水化物5.9%で、エネルギーは124.6キロカロリーと示されています。ヨウ素は100グラムの1食分あたり260マイクログラム含まれ、著者らはこの量で成人1日分のヨウ素の必要量をまかなえるとしています。

たんぱく質の質については、国連食糧農業機関(FAO)などが示す理想的なたんぱく質のアミノ酸組成と比べて評価しました。体内で十分につくれない必須アミノ酸のうち、メチオニンは基準の約71%にとどまり、最も不足しがちなアミノ酸(制限アミノ酸)とされました。一方、リシンは基準を約76%、ロイシンとイソロイシンの合計は約20%上回り、条件によって必須となるヒスチジンは基準の約2倍でした。著者らは、メチオニン以外の必須アミノ酸の評価から、たんぱく質の栄養価は高いと結論づけています。

研究が示すこと

この研究は、身近な地域の魚であるハゼと、打ち上げられた海藻を組み合わせ、低温調理で安全性と食感を両立させる加熱条件を数式モデルによって絞り込んだ事例です。著者らは、乾燥シストセイラを1食分あたり4グラム加えることで成人のヨウ素の1日必要量を満たせることから、このカツレツを機能性食品に位置づけられると述べています。

原著論文の著者・所属:O. N. Krivonos(Southern branch of the State Research Center of the Russian Federation FGBNU "VNIRO" ("Yuzhny"))、L. M. Yesina(Southern branch of the State Research Center of the Russian Federation FGBNU "VNIRO" ("Yuzhny"))、O. V. Bredikhina(The State Scientific Center of the Russian Federation Research Institute of Fisheries and Oceanography (VNIRO))

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):O. N. Krivonos, L. M. Yesina, O. V. Bredikhina. Development of functional culinary products derived from the round goby (Neogobius melanostomus Pallas, 1814) with addition of Cystoseira barbata. Fisheries 2026-07-31. DOI: 10.36038/0131-6184-2026-3-163-169. 原著ライセンス:CC BY.