著者の所属・活動拠点の国は、エチオピアです。
掲載誌:African Journal of Food Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
肉や肉製品は良質なたんぱく質や微量栄養素の供給源ですが、扱い方や加工が不適切だと有害な微生物が増えるおそれがあります。エチオピアでは、加熱をあまり加えない肉や、買ってそのまま食べる「調理済み食品(RTE食品)」の肉が広く食べられています。しかし、都市部の小売市場でこうした製品の微生物学的な安全性を包括的に調べたデータは限られていると研究チームは指摘しています。
著者らが調査地に選んだのは、エチオピア南西部の商業拠点ジマ市です。論文によれば、この町の食肉小売は非公式な販売が中心で、低温で流通させる仕組みや継続的な行政の監視が不足しています。それにもかかわらず、これまでの研究は単一の製品や限られた微生物に絞ったものが多く、複数の肉製品をまとめて比較した最新の情報が乏しかったといいます。そこで研究チームは、7種類の肉製品について微生物の量と種類を調べ、製品の種類や加工方法による違いと、微生物どうしの関係を明らかにしようとしました。
何をどのように調べたか
調査は2023年4月1日から30日にかけて行われました。対象は、生のひき牛肉、鶏肉、軽く揚げた牛肉、ドゥレット、市販のハンバーガー用パティ、冷蔵魚、軽く揚げた魚の7種類で、各25検体、合計175検体です。ドゥレットはレバーや胃袋などの内臓肉と赤身のひき肉に香辛料を混ぜたエチオピアの伝統料理で、作った後に再加熱せずに食べられます。著者らは、内臓肉はもともと細菌が多く、しかも追加の加熱がないことから、ドゥレットを特にリスクの高い調理済み食品として重点的に取り上げました。
検体は精肉店12店、スーパーマーケット5店、屋外の地元市場8か所から無菌的に集められ、冷やした状態で運ばれて、採取から2時間以内に分析されました。調べた微生物は、酸素のある環境で中程度の温度で増える細菌の総数を示す「一般生菌数」、ブドウ球菌の仲間、腸内細菌科の細菌、大腸菌群、酵母、カビ、そしてリステリア属菌です。腸内細菌科の細菌や大腸菌群などは、衛生状態の良し悪しを示す「指標菌」として使われます。リステリアの中には、冷蔵温度でも増えることができ、妊婦や新生児、高齢者、免疫の弱い人で重い病気を起こしうる種がいるため、特に注目されました。
菌の量は、1グラムあたりの菌数を10の何乗かで表す対数値で示されています。この値が1違うと、菌数はおよそ10倍違うことになります。分析には国際的な標準法が用いられ、製品間の違いは統計的に比較されました。
主な結果
一般生菌数が最も多かったのはドゥレット(6.72)で、次いで生のひき牛肉(6.38)でした。著者らは、これらの値が国際食品微生物規格委員会(ICMSF)による調理済み肉の許容基準5.0を上回ったと報告しています。一方、市販のハンバーガー用パティは最も少ない値(5.21)でした。研究チームは、ドゥレットで菌数が多い理由として、内臓肉が使われていることに加え、調理後に常温で置かれることや、手で取り分ける際の二次汚染の可能性を挙げています。
ブドウ球菌、腸内細菌科の細菌、大腸菌群、酵母、カビについても同じような傾向がみられました。軽く揚げた製品や工場で加工された製品では菌数が統計的に有意に少なかったものの、ゼロにはなりませんでした。ブドウ球菌の量はすべての製品でICMSFの基準値6.0を下回っていました。ただし著者らは、常温で保存されると、菌数が基準に達する前でも毒素がつくられうる点に注意を促しています。腸内細菌科の細菌は生のひき牛肉で最も多く、生の製品や加熱の少ない製品は、欧州などの基準で「不満足」とされる水準を超えていたと報告されています。酵母とカビはすべての種類の製品から検出されました。
リステリア属菌が見つかった割合は、ドゥレットが最も高く36.0%(25検体中9検体)でした。生のひき牛肉は24.0%、鶏肉は20.0%で、軽く揚げた魚とハンバーガー用パティはそれぞれ4.0%と最も低い割合でした。
さらに、一般生菌数とブドウ球菌の量、腸内細菌科の細菌と大腸菌群の量の間には、強い正の相関がみられました。一方が多い製品ではもう一方も多い傾向があったということです。著者らはこの結果から、一般生菌数のような基本的な指標を監視すれば、複数の微生物リスクを同時に把握する手がかりになると述べています。
研究が示すこと
この研究は、ジマ市の小売市場で売られる肉製品の微生物汚染が、製品の種類や加工方法によって大きく異なることを示しました。特に、再加熱せずに食べるドゥレットと生のひき牛肉で汚染が多く、加熱は菌を減らすものの取り除ききれていないことが報告されています。なお著者らは、軽く揚げる際の時間や温度は記録できておらず、カビの種類も特定していないことを、研究の限界として挙げています。
研究チームは、複数の微生物がそろって多いという結果は、販売の現場全体に衛生上の課題があることを反映していると考えています。そのうえで、定期的な微生物検査、販売現場での衛生管理の徹底、温度管理された保存、食品を扱う人や消費者への教育が必要だと結論づけています。
原著論文の著者・所属:Abas Juhar(¹School of Plant Sciences , College of Agriculture and Environmental Sciences , Haramaya University , P. O. Box 138 , Dire Dawa , Ethiopia)、Bekeko Zelalem(¹School of Plant Sciences , College of Agriculture and Environmental Sciences , Haramaya University , P. O. Box 138 , Dire Dawa , Ethiopia)、Abrahim Abdisha(²Department of Biology , College of Natural and Computational Sciences , Haramaya University , P. O. Box 138 , Dire Dawa , Ethiopia; ¹School of Plant Sciences , College of Agriculture and Environmental Sciences , Haramaya University , P. O. Box 138 , Dire Dawa , Ethiopia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Abas Juhar, Bekeko Zelalem, Abrahim Abdisha. Microbial quality and safety evaluation of raw and ready-to-eat meat in retail markets of Jimma Town, Ethiopia. African Journal of Food Science 2026-07-31. DOI: 10.5897/ajfs2026.2396. 原著ライセンス:CC BY.