著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Journal of Tropical Biodiversity.
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
豆の栄養を妨げるタンニンに着目した研究
インゲン豆の一種であるレッドキドニービーン、黄大豆、黒大豆といった豆類は、たんぱく質や食物繊維、ビタミン、ミネラルを多く含む食品です。植物性のプロバイオティクス食品への関心が高まるなか、豆から作った飲料の素材としても期待されています。
一方で、豆にはタンニンと呼ばれる成分が含まれています。タンニンは植物に広く存在するポリフェノールの一種です。論文の背景説明によると、タンニンはたんぱく質や鉄・亜鉛・カルシウムなどのミネラルと結びつき、消化や吸収を妨げることがあります。苦味や渋味の原因にもなります。こうした栄養面で不利に働く成分は「抗栄養因子」と呼ばれます。
タンニンを減らす方法としては、浸水、発芽、皮むき、焙煎、加熱などが知られており、微生物の働きを利用する発酵も有力な方法の一つとされています。著者らが注目したのは「ピーグルト」です。これは豆乳を乳酸菌で発酵させたプロバイオティクス飲料です。研究チームは、乳酸菌3種の組み合わせによって、3種類の豆乳から作ったピーグルトのタンニンがどの程度減るのかを比較しました。著者らは、この点を体系的に比べた研究はまだ少ないと述べています。
4通りの乳酸菌と3種類の豆乳を比較
研究チームは、レッドキドニービーン、黒大豆、黄大豆をそれぞれ浸水・加熱してから水と一緒に砕き、こして豆乳を作りました。この豆乳に砂糖を加えて殺菌したものを発酵の材料にしています。
使った乳酸菌は、ラクトバチルス・ブルガリクス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・プランタルムの3種です。組み合わせは4通りで、ブルガリクスとサーモフィルス、ブルガリクスとプランタルム、サーモフィルスとプランタルム、そして3種すべてです。
4通りの乳酸菌と3種類の豆乳を掛け合わせた計12通りの条件で、それぞれ3回ずつピーグルトを作りました。いずれも37度で24時間発酵させています。発酵前の豆乳と発酵後のピーグルトに含まれるタンニンは、試薬で発色させた液の色の濃さを測る分光光度法で定量しました。そのうえで、発酵によってタンニンが何%減ったかを算出し、統計的に比較しています。
3種混合の乳酸菌で最も大きく減少
発酵前の豆乳に含まれるタンニンの量は、豆の種類によって大きく異なりました。1グラムあたりで比べると、黒大豆の豆乳が約24.81ミリグラムと最も多く、レッドキドニービーンが約13.81ミリグラム、黄大豆が約7.89ミリグラムと最も少ない値でした。
発酵後は、どの乳酸菌の組み合わせでも、3種類すべての豆乳でタンニンが減りました。減少率は12.79%から46.18%の範囲でした。
最も減少率が大きかったのは、3種の乳酸菌をすべて組み合わせた場合です。減少率はレッドキドニービーンで42.92%、黒大豆で44.60%、黄大豆で46.18%で、黄大豆の条件が全条件のなかで最大でした。統計的にも、3種混合はほかの組み合わせと有意に異なる結果を示しました。
反対に、ブルガリクスとサーモフィルスの2種だけを使った場合は減少率が最も小さく、レッドキドニービーンで12.79%、黒大豆で13.51%、黄大豆で16.37%にとどまりました。分析では、乳酸菌の組み合わせ、豆乳の種類、さらに両者の組み合わせのいずれもが、タンニンの減少に有意な影響を与えていたと報告されています。
乳酸菌の酵素が鍵とする著者らの見方
著者らは、タンニンが減った主な理由を、乳酸菌が発酵中に作る「タンナーゼ」という酵素の働きによるものと考えています。タンナーゼはタンニンを没食子酸とブドウ糖に分解する酵素です。3種混合で減少が大きかった点について、著者らは菌の種類が多いことに加え、プランタルムのタンナーゼ活性の高さを理由に挙げています。その根拠として引用された既存の報告は、プランタルムのタンナーゼ活性がブルガリクスより高いことを示したものです。一方、サーモフィルスのタンナーゼ活性はまだ測定・研究されていないと著者らは述べています。
黄大豆の豆乳で減少率が特に高かった点について、著者らは、乳酸菌の増殖を支える成分構成の違いが関係している可能性を指摘しています。
この研究は、豆乳を乳酸菌で発酵させたピーグルトでタンニンが減ること、そして減り方が乳酸菌の組み合わせと豆の種類によって変わることを報告しました。豆を使った発酵飲料を作るとき、どの菌を組み合わせるかがタンニンの量を左右しうることを伝える成果です。
原著論文の著者・所属:Noorhadi, Fathimah Azzahra(Biology Study Program, Faculty of Biology and Agriculture, Universitas Nasional. Jl. Sawo Manila 61, Pejaten, Pasar Minggu, 12520, South Jakarta, Indonesia)、Yulneriwarni(Universitas Nasional)、Zulfa, Astri(Biology Study Program, Faculty of Biology and Agriculture, Universitas Nasional. Jl. Sawo Manila 61, Pejaten, Pasar Minggu, 12520, South Jakarta, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Noorhadi, Fathimah Azzahra, Yulneriwarni, Zulfa, Astri. Reduction of Tannin on Red Kidney Bean, Yellow Soybean, and Black Soybean Through Peaghurt Fermentation. Journal of Tropical Biodiversity. 2026-08-05. DOI: 10.59689/bio.v6i3.380. 原著ライセンス:CC BY.