掲載誌:Agricultural Science Digest - A Research Journal

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

地元の作物でチーズに近い食品を作る

牛乳を使わず植物原料で作る「植物性チーズ」への関心は、ここ数年高まり続けています。研究チームは、イラク国内で入手しやすい作物を使い、地元で生産できる植物性チーズ代替品の開発に取り組みました。

著者らが選んだのは、炭水化物源としてのジャガイモと、たんぱく質源としてのピーナッツです。従来の乳製品のチーズに近い性質を持つ製品を作ることが目標でした。あわせて、プロバイオティクス(体に良い働きが期待される生きた微生物)として使われる乳酸菌の一種、ラクトバチルス・プランタルムを加えると品質がどう変わるかも調べています。

どのように作り、何を調べたか

ジャガイモはやわらかくなるまでゆでて皮をむき、マッシュ状にしました。ピーナッツは、すりつぶしたもの125グラムに水100ミリリットルを加え、60℃で15〜20分かき混ぜながら加熱して乳液状にしました。この二つを重量比18対80で混ぜ合わせて土台とし、脱脂乳、キサンタンガム(食感と安定性を整える増粘剤)、酸味と酸性度の調整に使うクエン酸、食塩、チェダーチーズ風味の香料、オレンジ色の着色料を加えています。

加熱後に35℃まで冷まし、乳酸菌を加えない試料(A1、対照)と、乳酸菌を5%の割合で加えた試料(A2)を用意しました。どちらも型に入れて4℃で21日間冷蔵保存し、その間に酸性度を示すpH、水分・たんぱく質・脂質などの成分、微生物の増え方を調べました。見た目や食感、風味は、バグダッド大学食品科学科の訓練を受けた専門パネルが評価しました。

主な結果

保存中、どちらの試料も酸性に傾きました。pHは乳酸菌なしのA1で初日の6.5から21日目に5.02へ、乳酸菌入りのA2では5.8から4.04へと下がり、A2のほうがより酸性になりました。

成分では、たんぱく質の割合が保存中に大きく減り、A1は11.22%から3.5%、A2は7.72%から3.6%になりました。著者らは、たんぱく質が分解されたことが原因と考えています。A1の脂質も14.29%から11%に減りました。一方、水分はどちらの試料でも増え続け、21日目に最大68.77%に達しました。著者らは、水を引き寄せやすいキサンタンガムの性質などが関係していると説明しています。

品質の持ちには、はっきりした差が出ました。A1は保存15日を過ぎると劣化が見られ、21日目にはカビや酵母が現れました。A2は21日目まで安定を保ち、カビや酵母は確認されませんでした。ブドウ球菌はどちらの試料にも見られませんでした。研究チームは、乳酸菌が酸などを作って酸性度を下げ、腐敗の原因となる微生物の増殖を抑えたと考えています。

官能評価(人の感覚による評価)では、調べたすべての項目で乳酸菌入りのA2が有意に高い評価を得ました。著者らは、乳酸菌が風味、食感、見た目の改善に大きく寄与し、配合した脱脂乳とも相乗的に働いて、21日間の冷蔵中も特性が保たれたと報告しています。

この研究が示すこと

著者らは、地元で手に入る植物原料からチーズ代替品を作れることを示したとしています。キサンタンガムやチェダー風味の香料で感覚的な特性を整え、さらに乳酸菌を加えることで食感、風味、まとまりが良くなり、受け入れられやすくなったと結論づけています。また、こうした代替品の普及には、ビタミンなど必要な栄養素を加えることが重要だとも述べています。身近な作物と乳酸菌を組み合わせ、地域で作れる手頃なチーズ代替品を目指した試みといえます。

原著論文の著者・所属:Sumayah Amer Ahmed、Shaymaa Saady Lafta

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sumayah Amer Ahmed, Shaymaa Saady Lafta. Innovative Production of Sustainable Plant-based Cheese Substitute using Local Potato and Peanut Protein Supplemented with Lactobacillus plantarum. Agricultural Science Digest - A Research Journal 2026-07-30. DOI: 10.18805/ag.df-870. 原著ライセンス:CC BY.