この研究は、バングラデシュの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Asian-Australasian Journal of Food Safety and Security
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を明らかにしようとした研究か
タマネギは世界中で栽培・消費されている野菜ですが、生のままでは傷みやすく、とくに気温の高い地域では収穫後に大きな損失が出ます。そこでタマネギをすりつぶしてペースト状に加工すれば、すぐ調理に使える便利な素材になり、損失も減らせると考えられてきました。ただし、著者らによれば、ペーストにする過程で細胞がこわれて水分や酵素が出てくるため、保存中の品質変化や微生物による腐敗が起こりやすくなるという課題があります。
この研究では、保存料の組み合わせ、容器の材質、保存温度が、タマネギペーストの性質の安定性と「酸度の減り方の速さ」にどう影響するかを8か月にわたって調べています。著者らは、これまで丸ごとのタマネギや乾燥タマネギ粉の研究は行われてきたものの、ペーストについて温度別に品質低下の速さを数量的に表す研究は限られていると述べ、そこを埋めることを目的に掲げています。
どのように調べたか
研究チームは、バングラデシュの品種BARI Piaj 5のタマネギを皮をむいて洗い、ミキサーで均一なペーストにしました。そこに3通りの処理を施しています。SBは食塩10%とクエン酸1%に安息香酸ナトリウム1000 ppmを加えたもの、KMSは食塩10%とクエン酸1%にピロ亜硫酸カリウム1000 ppmを加えたもの、CAはクエン酸1%だけを加えたものです。比較のため、市販のタマネギペースト(MS)も調べました。
処理したペーストはプラスチック容器とガラス瓶に詰め、室温(25±5℃)と冷蔵(7±2℃)で8か月保存しました。市販品はもともとのプラスチック包装のまま評価しています。2か月ごとに、pH(酸性・アルカリ性の度合い)、滴定酸度(含まれる酸の量)、可溶性固形分(おおむね糖などの溶けている成分の量で、°Brixという単位で表します)、水分、灰分(燃やしたあとに残る無機成分で、加えた塩の量を反映します)を測定しました。
さらに酸度の減り方については、一次反応モデルと呼ばれる計算式をあてはめ、減少の速さを表す速度定数と、酸度が半分になるまでの期間(半減期)を求めています。
報告された主な結果
著者らの分析では、保存料の処理、容器、温度、保存期間のいずれも、多くの品質項目に統計的に意味のある影響(P<0.001)を与えていました。中でも処理の内容と容器の種類が、水分や可溶性固形分のばらつきの主な要因だったと報告されています。
保存が進むにつれてpHはどの条件でも徐々に上がり、酸度はおおむね下がっていきました。pHの上昇は室温のほうが冷蔵より大きかったと述べられています。処理別にみると、KMSは酸度の保持が比較的良好で、可溶性固形分は29.36〜31.60°Brix、水分は71.88〜73.55%、灰分は8.35〜8.98%の範囲を保ちました。SBも可溶性固形分28.06〜29.56°Brix、水分71.34〜71.97%、灰分8.30〜8.50%と安定していました。一方、クエン酸だけのCAは可溶性固形分が21.16〜24.70°Brixと低く、水分は74.08〜80.30%と高め、灰分は0.30〜0.96%とごく低い値でした。灰分の大きな差は、SBとKMSに10%の食塩を加えていることを反映しています。市販品は可溶性固形分が9.10〜12.02°Brixで最も低く、水分は84.10〜90.03%で最も高い値を示しました。
酸度の減り方に一次反応モデルをあてはめた結果は、条件によってあてはまりの良さが大きく異なりました。最もよくあてはまったのは、KMS処理のペーストをガラス容器で冷蔵保存した場合(決定係数R²=0.9153)で、このとき予測された酸度の半減期は1.58年でした。論文は、ピロ亜硫酸カリウム、ガラス容器、冷蔵保存という組み合わせが、試した条件のなかで酸度の安定性を最も予測しやすいものだったとまとめています。なお、モデルのあてはまりが悪い条件では、半減期の数値も酸度の変化を十分に説明できていないことに注意が必要です。
この報告が示すこと
この研究が伝えているのは、タマネギペーストの品質が「何を加えたか」「どんな容器か」「どの温度で置くか」の組み合わせで決まってくる、ということです。単に保存前後を比べるのではなく、変化の速さを数値として表す試みが行われている点が特徴です。
著者らは、こうした数量的なデータが、タマネギペーストの保存方法を検討したり、品質管理の目安を立てたり、保存中の損失を減らすための土台になりうると位置づけています。同時に、モデルのあてはまりが条件によって大きくばらついたという結果自体も、どの条件なら見通しが立てやすいのかを考えるうえでの手がかりになっています。
著者:Md Masud Alam(Spices Research Centre, Bangladesh Agricultural Research Institute (BARI), Shibganj, Bogura-5810, Bangladesh)、Md. Golam Ferdous Chowdhury(Postharvest Technology Division, Bangladesh Agricultural Research Institute (BARI), Gazipur-1701, Bangladesh)、Robiul Islam(Postharvest Technology Division, Bangladesh Agricultural Research Institute (BARI), Gazipur-1701, Bangladesh)、Md. Mazharul Anwar(Planning and Evaluation Wing, Bangladesh Agricultural Research Institute (BARI), Gazipur-1701, Bangladesh)、Mohammad Faizul Hoque Shikder(SASNA Group, Dhaka-1206, Bangladesh)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Md Masud Alam, Md. Golam Ferdous Chowdhury, Robiul Islam, et al. Storage life and kinetic velocity of preserved onion paste at room and refrigerated temperatures. Asian-Australasian Journal of Food Safety and Security 2026-09-23. DOI: 10.3329/aajfss.v10i2.90510. 原著ライセンス:CC BY.