著者の所属・活動拠点の国は、イラン、韓国です。
掲載誌:Future Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究のねらい
生の鶏肉は冷蔵していても傷みやすい食品です。研究チームは、食品の品質を保つ働きを持たせた「アクティブ包装」と呼ばれる包材を開発し、生の鶏肉の切り身の保存期間を延ばすことを目指しました。
土台にしたのは、バジルの種を水に浸すと出てくるぬるぬるした成分(粘質物)から作った、食べられる薄いフィルムです。その表面を、ゼラチンとキトサン(カニやエビの殻などに含まれる成分に由来する素材)でできたごく細い繊維の層で覆いました。この繊維には、ウコンの黄色い色素成分として知られるクルクミンが閉じ込められています。
どのように調べたか
繊維の層は、電圧をかけて溶液を極細の糸状に引き出す「エレクトロスピニング」という方法で作られました。クルクミンの濃度は0〜0.6%の範囲で変えています。
研究チームは、できたフィルムの水分量や水への溶けやすさ、水蒸気の通しにくさ、強度、熱への強さ、表面の様子、抗酸化性、抗菌性などを調べました。さらに、フィルムで包んだ生の鶏肉の切り身を4℃で9日間冷蔵し、肉の酸性度(pH)、脂質の酸化の程度を示す指標、細菌の数を、フィルムで覆わない対照と比較しました。あわせて、人の感覚で試料の好ましさを判定する官能評価も行われています。
主な結果
論文によると、クルクミンの濃度を上げるにつれてフィルムの水分量は44.89%から41.4%へ、水への溶けやすさは57.66%から43.90%へ下がり、水蒸気も通しにくくなりました。一方で、フィルムは厚く、不透明になり、抗酸化性の目安となる試験値は16.62%から55.91%へ高まったと報告されています。また、クルクミン0.4%では成分同士の結びつきと熱への強さの向上が確認され、繊維は0.4%までは均一でしたが、0.6%では固まり(凝集)が見られました。
鶏肉の保存試験では、クルクミン0.6%を含むフィルムで包んだ切り身は、覆わない対照と比べて、pHが6.03(対照6.80)、脂質の酸化の指標が1kgあたり0.45mg(同0.84mg)、脂質の酸化で生じる過酸化物の量を示す過酸化物価が1kgあたり2.66meq(同6.06meq)、1gあたりの細菌数が対数値で4.23(同8.90)と、いずれも有意に低い値でした。官能評価では、クルクミンを使ったフィルムで処理した試料の総合的な好ましさが優れていたとされています。
研究チームは、このフィルムによって生の鶏肉の切り身の保存期間が3日延びたと報告しています。
研究が示すこと
この研究は、植物由来の可食フィルムにクルクミン入りの極細繊維を組み合わせることで、冷蔵中の生の鶏肉で酸化や細菌の増加を抑えられる可能性を、保存試験で示したものです。著者らは、この包材が鶏肉向けの生分解性アクティブ包装の有望な選択肢になりうると結論づけています。
原著論文の著者・所属:Mohammad Noshad(Department of Food Science & Technology, Agricultural Sciences and Natural Resources University of Khuzestan, Mollasani, Iran)、Mohammad Hojjati(Department of Food Science & Technology, Agricultural Sciences and Natural Resources University of Khuzestan, Mollasani, Iran)、Parisa Ghasemi(Department of Food Science & Technology, Agricultural Sciences and Natural Resources University of Khuzestan, Mollasani, Iran)、Seyyed Mohammad Ali Noori(Department of Nutrition, School of Allied Medical Sciences, Ahvaz Jundishapur University, of Medical Sciences, Ahvaz, Iran)、Jong-Whan Rhim(Department of Food and Nutrition, BioNanocomposite Research Center, Kyung Hee University, Seoul, Republic of Korea)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mohammad Noshad, Mohammad Hojjati, Parisa Ghasemi, et al. Basil seed mucilage-based edible film reinforced with gelatin/chitosan electrospun nanofibers encapsulating curcumin for extending the shelf life of raw chicken fillets. Future Foods 2026-09-29. DOI: 10.1016/j.fufo.2026.101206. 原著ライセンス:CC BY.