5月も末を迎え、日本海の海が少しずつ夏の気配をまとい始めるこの時季、北陸・富山湾では「幻のえび」とも称される富山白えびが最盛期を迎えています。桜色のなめらかな透明感、とろけるような甘さで知られる白えびですが、その栄養面の実力はまだあまり知られていません。一般的なイメージと実際のデータを照合すると、いくつかの「驚きの事実」が浮かび上がってきます。
この時期に注目したい栄養素
白えびが旬を迎える春から初夏にかけては、新生活の疲れが蓄積しやすい時期でもあります。体の回復と維持に欠かせないのがたんぱく質とミネラル類です。えび全般はたんぱく質が豊富というイメージがありますが、白えびはその中でも特に鮮度が命の繊細な食材。産地・富山ではほぼ水揚げ当日に流通するため、鮮度由来の栄養ロスが少ない点も見逃せません。
また、甲殻類全般にはタウリン(アミノ酸の一種)が含まれることが知られており、疲労感が気になるこの季節に積極的に取り入れたい食品のひとつといえます。なお、詳細な摂取目安については、最新の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)をご確認ください。
おすすめ食品とその数値データ
富山白えびについては、当システムのデータベースに数値データが未格納のため、公的機関のデータをもとにご紹介します。富山県農林水産総合技術センター水産研究所が公表している資料によれば、白えびには一般的なえび類と同様にたんぱく質・カルシウム・亜鉛が含まれています(出典:富山県農林水産総合技術センター水産研究所)。また、農林水産省「うちの郷土料理」においても白えびは富山湾を代表する高たんぱくな食材として紹介されています(出典:農林水産省)。
一般に可食部100gあたりで比較したとき、えび類は低脂質・高たんぱくの食材群に分類されます。白えびはその中でも可食部が小さく1尾あたりの量は少ないものの、殻ごと食べられる「素干し」や「かき揚げ」の形で摂取すると、カルシウムをはじめとするミネラルを丸ごと取り込めるのが大きな特長です。「殻ごと食べられるえび」という点が、白えびを他のえびと一線画する栄養的なポイントといえるでしょう。
さらに見落とされがちなのがアスタキサンチンの存在です。白えびのあの淡いピンク色は、このカロテノイド系色素に由来します。アスタキサンチンは抗酸化作用との関連が研究者の間で注目されており、消費者庁の機能性表示食品制度においても素材として採用実績があります(出典:消費者庁)。もちろん食品から一度に大量に摂取できるものではありませんが、日常の食卓に取り入れることで色素成分も含めて楽しめる点は、産地ならではの「生食」スタイルが最も活かせる部分です。
毎日の食事への取り入れ方
富山を訪れる機会がある方なら、ぜひ試してほしいのが白えびの刺身(踊り食い)と白えびのかき揚げの食べ比べです。刺身では鮮度そのままのうま味とたんぱく質を、かき揚げでは殻ごと揚げることでカルシウムまで余さず摂れます。産地ならではのふたつの食べ方を一度に楽しめる「白えびの二刀流」は、栄養面でも理にかなった選択です。
産地以外にお住まいの方には、乾燥・加工品として流通している白えびせんべいや白えびの素干しもおすすめです。素干しを細かく砕いてご飯に混ぜたり、みそ汁のだしとして活用したりすると、殻ごと摂取できるミネラルを無理なく日常食に組み込めます。加熱しても失われにくいカルシウムやミネラルは、こうした加工品でも十分に期待できます。
また、白えびと組み合わせるならビタミンDを含む食材(鮭・きのこ類など)を一緒に摂ることで、カルシウムの吸収をサポートできると考えられています。シンプルな「白えびと舞茸の炊き込みご飯」は、栄養バランスと旬の風味を同時に楽しめる一皿としておすすめです。
まとめ
「幻のえび」と呼ばれる富山白えびは、その美しい見た目と繊細な甘さだけでなく、殻ごと摂れるミネラルやカロテノイド色素など、栄養面でも見どころの多い食材です。5月末のこの時季、北陸の豊かな恵みを食卓に迎え入れ、旬の味わいと体への恩恵をぜひ一緒に楽しんでみてください。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。