著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Multidisciplinary Indonesian Center Journal

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:身近なおやつで食物繊維を補えるか

「ボル・ククス」は、インドネシアで広く食べられている伝統的な蒸しケーキです。安くて柔らかく、甘くて食べやすいため、年齢や暮らし向きを問わず親しまれています。一方で、原料は精製した小麦粉が中心のため、食物繊維やミネラルは多くありません。

論文によると、インドネシアでは10歳以上の約95.5%が食物繊維を十分にとれておらず、1日の平均摂取量は約10.5グラムと推計されています。保健省が定める成人の推奨量(女性32グラム、男性37グラム)の3分の1にも届かない水準です。

そこで研究チームは、国内で広く栽培され手に入りやすいカボチャ(学名 Cucurbita moschata)と、豆(学名 Vigna radiata。論文の英語表記は green pea で、インドネシア語では緑豆を指す kacang hijau)を粉にし、小麦粉の一部をこれらに置き換えたボル・ククスを作りました。そのうえで、栄養成分、食べた人の好み、製造コストを評価しました。著者らは、これまでの研究ではどちらか一方の粉を使ったものが中心で、2種類を同時に組み合わせた検討は少なかったと述べています。

何を比べたのか

比較したのは3種類のケーキです。AF09は小麦粉だけを使った対照品です。BW91は小麦粉70、カボチャ粉10、緑豆粉20の割合で、CB88は小麦粉70、カボチャ粉15、緑豆粉15の割合で作られています。粉の配合以外の材料と分量は、3種類ですべて同じにそろえました。

栄養面では、外部の検査機関が水分、灰分(ミネラル量の目安)、たんぱく質、脂質、粗繊維(食物繊維のうち主に溶けにくい部分を測る指標)を測定しました。炭水化物は、全体からほかの成分を差し引く計算で求めています。

おいしさの評価には、調理教育を学ぶ大学生50人が参加しました。全員が評価の訓練をある程度受けています。色、香り、味、食感について「好き」「嫌い」の度合いを答えてもらい、配合の違いで好みに差が出るかを統計的に調べました。

主な結果:カボチャ粉の多い配合が高評価

水分、灰分、たんぱく質、脂質の値は、3種類ともインドネシア国家規格(菓子パン類)の基準内に収まっていました。粗繊維が最も多かったのはCB88で0.69%でした。対照品は0.45%、BW91は0.43%です。著者らは、カボチャ粉の割合が多いほど粗繊維が増える傾向があったと報告しています。CB88は100グラムあたりのエネルギーが269.88キロカロリーで、3種類のなかで最も低い値でした(対照品は282.72キロカロリー)。脂質も最も少ない1.64%でした。灰分とたんぱく質は、緑豆粉の多いBW91で最も高くなりました。なお、計算で求めた炭水化物は、3種類とも規格の目安である40%を上回っていました。著者らはこの理由を、砂糖や卵、粉乳などケーキに欠かせない材料によるものとしています。

おいしさの評価では、色、味、食感で配合による統計的に意味のある差がみられました。香りには差がありませんでした。CB88はカボチャ由来の黄色からオレンジ色がはっきり出ており、90%の人が色を「好き」と答えました。食感も、対照品より柔らかいとされ、88%が好意的に評価しました。味については、食べ慣れた対照品が最も親しみやすいとされました。一方で、豆の風味が苦手な人には加えた配合が受け入れにくい場合もありました。それでもCB88は78%が「好き」と答えています。著者らは、色の良さはカボチャに含まれるβカロテンによるものとしています。柔らかさについては、カボチャのペクチンが水分を抱え込んでゲル状になることが関係していると考えています。

製造コストは、CB88で55グラム1個あたり3,374ルピアと算出されました。著者らは、経済的にも十分成り立つ水準だと評価しています。

この研究が示すこと

研究チームは、小麦粉の3割をカボチャ粉と緑豆粉で半分ずつ置き換えたCB88が、最もバランスのよい配合だと結論づけています。粗繊維が多めでエネルギーは控えめ、見た目と食感の評価も高く、費用も抑えられるという理由です。著者らは、学校での栄養改善や食の多様化の取り組みに向いたおやつになりうると述べています。身近な伝統菓子に地元の作物を組み合わせることで、栄養面の工夫と食べやすさを両立させようとした試みといえます。

原著論文の著者・所属:Yoana Kusumaningsih Limin(Sekolah Tinggi Ilmu Kesehatan Sint Carolus)、Paramitha Wirdani Ningsih Marlina(Sekolah Tinggi Ilmu Kesehatan Sint Carolus)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yoana Kusumaningsih Limin, Paramitha Wirdani Ningsih Marlina NUTRITIONAL QUALITY, SENSORY ACCEPTABILITY, AND ECONOMIC FEASIBILITY OF FUNCTIONAL STEAMED SPONGE CAKE (BOLU KUKUS) FORTIFIED WITH PUMPKIN (CUCURBITA MOSCHATA) AND GREEN PEA FLOURS. Multidisciplinary Indonesian Center Journal 2026-08-13. DOI: 10.62567/micjo.v3i3.3019. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。