著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Gizi dan Teknologi Pangan Nutrismart
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
鉄欠乏性貧血の予防を意識したおやつづくり
鉄が不足して起こる鉄欠乏性貧血は、思春期の女性や妊娠可能な年齢の女性にとって、今も重要な栄養課題です。著者らは、体力や学習時の集中力、妊娠への備えに影響しうる問題として位置づけています。貧血対策には鉄剤などの補給が重要ですが、効果は継続して取り組めるかどうかにも左右されます。そこで、日常の食習慣になじむ身近な食品を補助的に活用する方法も検討されています。
研究チームが注目したのは、インドネシアで広く食べられ、手に入りやすく比較的安価な緑豆です。緑豆にはたんぱく質や食物繊維、ミネラルなどが含まれます。一方で論文は、植物性食品の鉄は「非ヘム鉄」と呼ばれる形で、吸収されにくい点も指摘しています。豆類に含まれるフィチン酸やポリフェノールが吸収を妨げることもあります。そのため、機能性をうたうには実際の鉄の量や吸収のされやすさを調べる必要がある、という立場を示しています。
この研究の目的は、緑豆粉を主原料にした蒸しスポンジケーキの最初の配合を作ることでした。そのうえで、色・香り・食感・味の4項目について、どの程度好まれるかを評価しています。特に、どの項目を優先して改良すべきかを見極めることを重視しました。
10人の試食者による好みの評価
ケーキは、粉全体の80%を緑豆粉とし、卵、砂糖、粉乳、マーガリン、バニラ、ベーキングパウダー、塩を加えて作りました。卵と砂糖を十分に泡立てて粉を混ぜ、約30分蒸しています。冷ましてから同じ大きさに切り分け、室温で試食に出しました。
評価には、専門的な訓練を受けていない10人の試食者が参加しました。各自が同じケーキの色・香り・食感・味を、「好きではない」から「とても好き」までの5段階で採点しています。「好き」と「とても好き」を合わせた割合は、好意的な反応として集計しました。同じ人が4項目すべてを評価しているため、項目間の比較には、こうした対応のある順序データに適した統計手法が使われています。
色と香りは好評、食感が最大の課題
完成したケーキは、黄緑がかった色で豆の香りがほのかにあり、生地はやや詰まった仕上がりでした。最も評価が高かったのは色で、平均は5点満点中4.00点でした。10人中8人が好意的に回答しています。次いで香りが平均3.80点で、好意的な回答は7人でした。著者らは、蒸す工程や他の材料によって、豆特有のにおいが強く出なかったと見ています。
味は平均3.50点で、好意的な回答は半数の5人でした。ばらつきが最も大きく、好みが分かれた項目です。最も低かったのは食感で、平均3.00点、好意的な回答は2人にとどまりました。
統計解析では、4項目の間で好まれ方に明確な差があり、項目の順位について試食者の評価はおおむね一致していました。どの組み合わせに差があるかを詳しく調べたところ、食感と色の差は統計的に意味のあるものでした。食感と香りの間にも差の傾向が見られました。著者らはこの結果から、食感の改良が最優先の課題だと結論づけています。
食感が低く評価された理由について、論文は次のように説明しています。緑豆粉には小麦粉のようなグルテンの網目ができないため、生地が気泡を保ちにくくなります。その結果、きめが詰まって重たい食感になりやすいと考えられます。
「おいしさ」の確認は第一歩
この研究で示されたのは、緑豆粉を主にしたケーキが見た目と香りの面では受け入れられやすく、食感と味には改善の余地があるという初期段階の結果です。著者ら自身も強調しているように、ケーキに実際に含まれる鉄の量や吸収のされやすさは測定されていません。また試食者は10人と少なく、対象としている思春期の女性を代表するものでもありません。今回の結果は貧血予防の効果を示すものではなく、あくまで食べてもらえるかどうかの最初の手がかりです。
栄養面で期待される食品も、おいしく食べ続けられなければ役立てることは難しくなります。この研究は、地元の食材を使った栄養補助のおやつを考える際に、栄養の中身と食べやすさの両方を確かめる必要があることを具体的に示しています。
原著論文の著者・所属:Azkia(D-III Nutrition Study Program, Department of Nutrition, Politeknik Kesehatan Kemenkes, Kalimantan Selatan, Indonesia)、Muhammad Sairaji Hasani(D-III Nutrition Study Program, Department of Nutrition, Politeknik Kesehatan Kemenkes, Kalimantan Selatan, Indonesia)、Nuroktarima Rahmawati(D-III Nutrition Study Program, Department of Nutrition, Politeknik Kesehatan Kemenkes, Kalimantan Selatan, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Azkia, Muhammad Sairaji Hasani, Nuroktarima Rahmawati Sponge Formula Based on Mung Bean Flour as a Functional Food Source of Iron for Preventing Anemia. Jurnal Gizi dan Teknologi Pangan Nutrismart 2026-07-31. DOI: 10.64146/j8esgg34. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。