著者の所属・活動拠点の国は、ルーマニアです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ヘンプ(産業用大麻、Cannabis sativa L.)の種子は、たんぱく質や脂質、食物繊維、ミネラルなどを多く含む植物性の食品素材として利用が広がっています。欧州連合で栽培が認められている産業用ヘンプは、精神作用をもつ成分THCの含有量が低い品種に限られます。著者らによれば、種子の成分は品種によって異なることが海外の研究で示されてきましたが、ルーマニアの品種についての比較情報は乏しい状況でした。

そこで研究チームは、ルーマニアの雌雄同株ヘンプ6品種の種子について、栄養成分、ミネラル、脂肪酸の組成、抗酸化に関わる成分を比較しました。雌雄同株とは、1つの株に雄花と雌花の両方がつく性質を指します。目的は、食品素材としての利用可能性を評価し、品種ごとの特徴を明らかにすることです。対象は、ダキア・セクイエニ、セクイエニ・ジュビレウ、ラツァ、ゼニット、スッチェシブ、オリビアの6品種で、いずれもTHC含有量0.3%未満の認可品種です。

何を調べたか

試料には、ルーマニア北東部セクイエニの農業研究所が2023年に収穫した種子を用いました。各品種について、別々の3区画の圃場から試料を採取しています。種子は乾燥後に粉末にし、同じ条件で分析しました。

分析項目は、たんぱく質・脂質・繊維・灰分といった基本的な栄養成分、カルシウム・リン・銅・鉄・マンガン・亜鉛のミネラル、脂肪酸の組成です。抗酸化に関わる成分は2系統に分けて調べました。水に溶けやすいものとしてポリフェノール類と複数の抗酸化力の指標を、油に溶けやすいものとしてビタミンEの仲間であるトコフェロール類とカロテノイド色素を測定しています。抗酸化力の指標は試験法ごとに捉える性質が異なり、品種の順位が試験法によって一致しない場合もあります。さらに、多数の測定項目をまとめて品種間の違いを見渡すため、主成分分析という統計手法も用いました。

主な結果

たんぱく質(乾物あたり)は、ダキア・セクイエニ、セクイエニ・ジュビレウ、ラツァ、オリビアの4品種で24.79〜25.57%と高く、スッチェシブが23.96%で最も低くなりました。脂質はセクイエニ・ジュビレウが30.96%と最も高く、スッチェシブが25.62%と最も低い値でした。品種間の差が最も大きかったのは繊維で、ラツァ(38.85%)とゼニット(37.97%)が高い値を示しました。

ミネラルでは、ダキア・セクイエニがリン(1.32%)とマンガン(138.91mg/kg)で最も高く、ゼニットは鉄(105.21mg/kg)、オリビアは亜鉛(90.35mg/kg)で最も高い値を示しました。カルシウムには品種間で有意な差がみられませんでした。

脂肪酸は、どの品種でも多価不飽和脂肪酸が主体で、検出された脂肪酸全体の72.74〜78.10%を占めました。ダキア・セクイエニはオメガ3系のα-リノレン酸の割合が19.76%と最も高く、オメガ6とオメガ3の比は2.78と6品種中で最も低くなりました。反対に、ラツァはこの比が3.64と最も高く、オレイン酸の割合(16.47%)も最も高い品種でした。ゼニットはγ-リノレン酸の割合が4.307%と最も高く、オリビアはリノール酸の割合が56.16%と最も高い値を示しました。

油に溶けやすい成分では、ダキア・セクイエニの総トコフェロール量が227.44mg/kgと最も多く、どの品種でもγ-トコフェロールが主な型でした。カロテノイドではルテインが主で、スッチェシブが79.46mg/kgと最も多く含んでいました。なお、アスタキサンチンとカンタキサンチンとされた成分は、確認分析を経ていない暫定的な同定と著者らは記しています。

水に溶けやすい成分では、ゼニットがポリフェノール量(1.50mg GAE/g)とABTS法による抗酸化力で最も高い値を示しました。DPPH法による抗酸化力と金属をとらえる働き(キレート作用)はスッチェシブが最も高く、リンモリブデン法で測った総抗酸化能はオリビアが最も高い結果でした。主成分分析では、同じ品種の3区画の試料どうしがまとまり、品種による違いが一貫して現れていることが示されました。

研究が示すこと

著者らは、ルーマニアのヘンプ種子がたんぱく質、必須脂肪酸、ミネラル、抗酸化成分の供給源として価値をもつと結論づけています。同時に、品種ごとに得意とする成分が異なることから、目的に合わせて品種を選ぶことが、ヘンプを使った食品素材づくりに役立つとしています。ただし、今回の比較は1か所の産地と1年分の収穫に基づくものである点も、論文に明記されています。

原著論文の著者・所属:Petru Alexandru Vlaicu(Feed and Food Quality Department, National Research and Development Institute for Animal Biology and Nutrition, Calea București No. 1, 077015 Balotesti, Ilfov, Romania)、Arabela Elena Untea(Feed and Food Quality Department, National Research and Development Institute for Animal Biology and Nutrition, Calea București No. 1, 077015 Balotesti, Ilfov, Romania)、Iulia Varzaru(Feed and Food Quality Department, National Research and Development Institute for Animal Biology and Nutrition, Calea București No. 1, 077015 Balotesti, Ilfov, Romania)、Lorena-Diana Popa(Agricultural Research and Development Station Secuieni, Agriculturii Street No. 15, 617415 Secuieni, Neamt, Romania)、Raluca Paula Turcu(Feed and Food Quality Department, National Research and Development Institute for Animal Biology and Nutrition, Calea București No. 1, 077015 Balotesti, Ilfov, Romania)、Mihaela Saracila(Feed and Food Quality Department, National Research and Development Institute for Animal Biology and Nutrition, Calea București No. 1, 077015 Balotesti, Ilfov, Romania)、Florin Nenciu(Testing Department, National Institute of Research-Development for Machines and Installations Designed to Agriculture and Food Industry—INMA Bucharest, 6 Ion Ionescu de la Brad Avenue, 013813 Bucharest, Romania)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Petru Alexandru Vlaicu, Arabela Elena Untea, Iulia Varzaru, et al. Nutritional Contribution and Bioactive Properties of Romanian Monoecious Hemp Seed (Cannabis sativa L.) Varieties for Potential Food Applications. Foods 2026-09-22. DOI: 10.3390/foods15193363. 原著ライセンス:CC BY.