著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:ご飯の弱点を「混ぜて炊く素材」で補う

炊いたご飯は時間がたつとでんぷんが再び硬くなる「老化」を起こし、食感が落ちやすいことが知られています。研究チームは、こうした品質の問題を改善しつつ栄養面も高めたご飯をつくる方法として、クルミ油とフラクトオリゴ糖(FOS)を組み合わせた素材に着目しました。

クルミ油はリノール酸やα-リノレン酸などの多価不飽和脂肪酸、ポリフェノール類、植物ステロールなどを含む油です。FOSは腸内の有益な微生物の栄養源となる、いわゆるプレバイオティクスの一種です。ただし油は水に溶けないため、炊飯水の中に均一に混ぜるには、油を細かな粒にして水中に分散させた「乳化液(エマルション)」にする必要があります。

乳化液はもともと分離しやすい性質があり、一般的な高速かくはんで作ると油の粒が大きく不ぞろいになり、保存中に分離しやすいという課題があります。そこで著者らは、液体を高圧で細い流路に通し、衝突や強いせん断(ずれの力)、気泡の発生と崩壊などの作用で粒を細かくする「高圧マイクロ流動化」という物理的な処理に注目しました。論文は、乳化剤の種類や量、処理圧力が乳化液の性質にどう影響するかについての体系的な検討がまだ不十分だとしています。

何を調べたか:配合を絞り込み、圧力を変えて比較

研究チームはまず、食品用の乳化剤3種類(ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、DATEMと呼ばれる有機酸モノグリセリド系の乳化剤)を用い、FOSを溶かした水とクルミ油の比率を9:1から5:5まで変えて乳化液を作りました。乳化のしやすさの指標、外観や顕微鏡で見た油滴の様子、油滴の大きさとそのばらつき、光の透過率、20日間保存したときの分離の程度などを比べ、最も適した乳化剤と水と油の比率を選びました。

続いて、選んだ乳化剤の量を油の重さに対して1〜5%の範囲で変えて最適量を調べました。最後に、その配合で作った乳化液を30〜150MPaの5段階の圧力で高圧マイクロ流動化処理し、油滴の大きさや分布、表面の電気的な性質、抗酸化力、保存中の安定性を評価しました。さらに、この乳化液などを加えてご飯を炊き、水分量や吸水率、色、硬さなどの食感、香り成分を測定する試験も計画・実施しています。

主な結果:圧力を上げるほど油滴が細かく、安定に

乳化剤の比較では、ショ糖脂肪酸エステルが油の割合が多い条件で特に良好な乳化性を示し、水と油の比率6:4で最も高い値になりました。DATEMはどの比率でも乳化性が最も低く、油の割合が増えると分離や大きな油滴の凝集が目立ちました。乳化剤の量については、ショ糖脂肪酸エステルを増やすと乳化性の指標がおよそ60から160まで上がりましたが、5%では逆に低下しました。著者らは、余った乳化剤が油と水の境目に付かず水中で集まってしまうためと説明しています。これらから、ショ糖脂肪酸エステル、水と油の比率6:4、乳化剤量4%が最適な配合とされました。

この配合の乳化液を高圧マイクロ流動化処理すると、圧力が高いほど乳化性の指標が上がり、30MPaでは約100分だった値が150MPaでは約340分と3倍以上になりました。油滴の平均の大きさも30MPaの362ナノメートルから150MPaの約255ナノメートルへと小さくなり、大きさのばらつきを示す値も0.392から0.287へ下がって、粒がそろうことが示されました。顕微鏡観察でも、圧力を上げるにつれて油滴が細かく密に、均一に並ぶ様子が確認されています。

油滴の表面はマイナスの電気を帯びていましたが、その強さは電気的な反発だけで安定を保つには不十分な水準でした。論文は、この乳化液の安定性はおもに、電気を帯びない性質の乳化剤であるショ糖脂肪酸エステルが油と水の境目に整然と付着することで支えられていると考察しています。抗酸化力はDPPH法という測定では90MPaで最も高く、それより高い圧力ではわずかに低下しました。ABTS法という別の測定では、圧力による変化は小さいものでした。また、どの圧力で処理した乳化液も、室温で20日間保存した後も分離や油の浮き上がりが見られず、乳白色の均一な状態を保っていました。

この研究が示すこと

この研究は、クルミ油とFOSを一つの乳化液としてまとめる際に、乳化剤の種類と量、水と油の比率、高圧マイクロ流動化の圧力が仕上がりを大きく左右することを、段階的な比較で示しました。とくに、化学的な添加物に頼らない物理的な処理で圧力を高めることで、油滴が細かく均一になり、保存中も分離しにくい乳化液が得られたという点が主な成果です。

著者らはこの乳化液を、ご飯の食感や風味、栄養価の改善に役立つ素材として位置づけ、炊飯試験も行っています。なお、本稿では乳化液そのものの性質に関する結果を中心に紹介しており、ご飯の品質への具体的な効果については取り上げていません。

原著論文の著者・所属:Maman Baligen(College of Food Science and Pharmaceutics, Xinjiang Agricultural University, Urumqi 830002, China)、Zhiqiang Lu(College of Food Science and Pharmaceutics, Xinjiang Agricultural University, Urumqi 830002, China)、Ruoxi Wei(College of Food Science and Pharmaceutics, Xinjiang Agricultural University, Urumqi 830002, China)、Yansong Gao(College of Food Science and Pharmaceutics, Xinjiang Agricultural University, Urumqi 830002, China)、Qiang Ma(College of Food Science and Pharmaceutics, Xinjiang Agricultural University, Urumqi 830002, China)、Zhenchao La(College of Food Science and Pharmaceutics, Xinjiang Agricultural University, Urumqi 830002, China)、Tulehanjiang Dilare(College of Food Science and Pharmaceutics, Xinjiang Agricultural University, Urumqi 830002, China)、Tuoheti Ayiguli(College of Food Science and Pharmaceutics, Xinjiang Agricultural University, Urumqi 830002, China)、Haowen Liu(College of Food Science and Pharmaceutics, Xinjiang Agricultural University, Urumqi 830002, China)、Lingming Kong(College of Food Science and Pharmaceutics, Xinjiang Agricultural University, Urumqi 830002, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Maman Baligen, Zhiqiang Lu, Ruoxi Wei, et al. Study on Walnut Oil–Fructooligosaccharide Emulsions Fabricated by High-Pressure Microfluidization and Their Application in Improving Rice Quality. Foods 2026-08-18. DOI: 10.3390/foods15162885. 原著ライセンス:CC BY.