この研究は、オランダ、スペインの研究機関の研究論文です。

掲載誌:International Journal of Food Microbiology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

高圧処理(HPP)は、食品に高い圧力をかけて微生物を不活化する加工技術です。加熱に頼らないため、食品の品質を保ちながら微生物による危害を抑えられる方法として位置づけられています。

研究チームは、食中毒の原因となる細菌やウイルスが高圧処理にどの程度耐えるのかを、既存のデータをまとめて定量的に評価することを目指しました。抄録によれば、その結果をもとに、微生物ごとの耐性を評価するための意思決定支援の枠組みも作られています。

何を調べたか

著者らは、15種類の微生物危害について、45℃以下の温度でさまざまな圧力をかけた際のD値を2692件集めました。D値とは、ある条件で微生物の数を10分の1に減らすのに必要な時間を指し、この値が大きいほど処理に強いことを意味します。

集めたデータには、圧力とD値の関係を表すビゲローモデルが当てはめられ、基準圧力500メガパスカルでのD値が推定されました。共通の圧力でそろえることで、異なる条件で得られたデータどうしを比べやすくしています。

主な結果

500メガパスカルでのD値にもとづき、微生物はすべての食品をまとめた評価で三つの耐性区分に分けられました。D値が1分以下の「感受性」群には、ビブリオ属菌、エロモナス・キャビエ、カンピロバクター属菌、ロタウイルス、クロノバクター属菌、A型肝炎ウイルス、ノロウイルスが入りました。

D値が1分を超え3分以下の「中程度」群には、エルシニア・エンテロコリチカ、リステリア・モノサイトゲネス、ウシ型結核菌、非チフス性サルモネラ、E型肝炎ウイルス、大腸菌が含まれました。D値が3分を超える「耐性」群は、黄色ブドウ球菌とセレウス菌(芽胞ではない栄養細胞)でした。

一方で、論文は食品の組成が微生物の耐性に強く影響したと報告しています。微生物が利用できる水分の度合いを示す水分活性が0.95以下の低い食品では微生物が守られる傾向があり、pH4.5以下の酸性の食品や水分活性が0.95を超える食品では不活化が進みやすくなっていました。

重回帰分析という、複数の要因が結果にどう関わるかを同時に調べる統計手法では、微生物の種類、水分活性、pHが不活化の有意な予測因子とされました。たんぱく質や炭水化物の含有量といったほかの食品特性の影響は限られていたと報告されています。

研究が示すこと

研究チームが作った枠組みは、500メガパスカルでの耐性順位、食品の種類別に分けた不活化の推定、水分活性とpHを使った回帰モデルという三つの方法を組み合わせたものです。著者らは、これらが互いに補い合い、使えるデータの量や種類が異なる状況でも微生物の耐性評価を支えるとしています。

高圧処理の効き方は微生物の種類だけでなく、食品の水分や酸性度によっても変わることが、多数のデータの統合から示されたといえます。

著者:Kah Yen Claire Yeak(Food Microbiology, Wageningen University & Research, Wageningen, the Netherlands)、George Pampoukis(Food Microbiology, Wageningen University & Research, Wageningen, the Netherlands)、Cristina Serra-Castelló(Food Microbiology, Wageningen University & Research, Wageningen, the Netherlands)、Sara Bover‐Cid(Institute of Agrifood Research and Technology (IRTA), Food Safety and Functionality, Monells, Spain)、Heidy M.W. den Besten(Food Microbiology , Wageningen University & Research , Wageningen , the Netherlands)、Marcel H. Zwietering(Food Microbiology, Wageningen University & Research, Wageningen, the Netherlands)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kah Yen Claire Yeak, George Pampoukis, Cristina Serra-Castelló, et al. Quantitative assessment of high-pressure processing inactivation of foodborne bacteria and viruses in foods. International Journal of Food Microbiology 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.ijfoodmicro.2026.112100. 原著ライセンス:CC BY.