著者の所属・活動拠点の国は、アルメニア、イタリアです。

掲載誌:Journal of Xenobiotics

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

研究チームは、アルメニアの異なる場所で採取したローズヒップとシーバックソーンの果実について、糖やビタミンC、必須元素と非必須元素、抗酸化活性を比較しました。植物の成分は種類や生育環境、成熟段階、収穫後の処理などによって変わるため、一つの成分だけでなく、複数の指標を組み合わせて特徴を捉えることを目指しました。

また、体外から取り込まれる化学物質への曝露という観点から、ヒ素、カドミウム、鉛など、必須ではなく有害となり得る元素にも注目しました。

何を、どのように調べたか

成分分析の対象は、生のローズヒップ7試料、そのうち3地点の陰干し試料、生のシーバックソーン4試料でした。ローズヒップには3種類のバラ属植物が含まれていました。ビタミンCの分析では、ローズヒップは種を取り除いた果肉を使い、シーバックソーンは種を除かずに均質化して調べました。

研究チームは、成分を分離して測るクロマトグラフィーで果糖、ブドウ糖、ショ糖、ビタミンCを定量し、元素分析でカリウム、カルシウム、マグネシウムや微量元素などを測定しました。抗酸化活性は、抽出液がDPPHという試験用のラジカルをどれだけ消去するかを、阻害率として評価しました。この試験には、選んだ2地点のローズヒップの生・陰干し試料と、生のシーバックソーン4試料を用いました。

試料ごとに独立した生物学的な反復がなかったため、統計的な検定は行わず、測定した試料間の違いを記述する比較としました。

主な報告結果

分析した試料では、ローズヒップの糖とビタミンCの濃度はシーバックソーンより数値上高くなっていました。生の果実100 g当たりのビタミンCは、ローズヒップで130~900 mg、シーバックソーンで11.9~40.0 mgでした。生のローズヒップでは、果糖とブドウ糖の合計が100 g当たり10.79~36.67 gだったのに対し、生のシーバックソーンでは最も高い試料でも0.731 gでした。ショ糖はいずれの分析試料でも検出されませんでした。

一方、DPPH試験の反応はビタミンC濃度と一貫して対応しませんでした。シーバックソーン4試料の阻害率は94.90~95.18%でした。ローズヒップでは、セバンの試料が生で86.22%、陰干しで3.37%、ゴグトの試料が生で67.54%、陰干しで9.80%でした。ゴグトの生試料はセバンの生試料よりビタミンCが多いにもかかわらず、DPPH阻害率は低く、著者らはビタミンCだけではこの反応を説明できないとしています。

元素では、カリウム、カルシウム、マグネシウムが主な成分でした。分析したローズヒップでは、シーバックソーンよりカルシウムとマグネシウムが数値上多く、鉄はシーバックソーンの方が多く測定されました。

有害となり得る元素の検出状況も試料によって異なりました。ローズヒップでは鉛は検出されませんでしたが、一部でカドミウムやヒ素が検出されました。シーバックソーンではカドミウムは検出されず、ヒ素や鉛は一部の試料で検出されました。

この報告が示すこと

著者らは、これらの果実の特徴を捉えるには、単一の成分を目安にするのではなく、植物の種類、収穫後の処理、元素組成などを合わせて見ることが重要だと結論づけています。ただし、植物の種類や採取時期などが異なり、土壌などの環境条件も同時に測っていないため、試料間の違いを産地だけの影響とは判断できません。

陰干しに関する比較は選んだ2組の試料に限られ、乾燥の効果を統計的に示したものではありません。また、他の抗酸化成分の寄与は定量されておらず、シーバックソーンのDPPH阻害率が近かったことも、総合的な抗酸化能力が同じであることを意味しません。

非必須元素の濃度についても、摂取量や体内への吸収されやすさ、適用される規制基準を評価していないため、そのまま健康リスクや製品の安全性を示す数値とは解釈できません。この報告は、調べた果実試料の化学的な多様さを示す比較データと位置づけられます。

原著論文の著者・所属:Lusine Sahakyan(Institute of Pharmacy, Yerevan State University, Yerevan 0025, Armenia)、Avetis Tsaturyan(Institute of Pharmacy, Yerevan State University, Yerevan 0025, Armenia; Scientific and Production Center “Armbiotechnology”, National Academy of Science, Yerevan 0056, Armenia)、Ela Minasyan(Institute of Pharmacy, Yerevan State University, Yerevan 0025, Armenia; Scientific and Production Center “Armbiotechnology”, National Academy of Science, Yerevan 0056, Armenia)、Lusine Hayrapetyan(Institute of Pharmacy, Yerevan State University, Yerevan 0025, Armenia)、Ani Chakhoyan(Institute of Pharmacy, Yerevan State University, Yerevan 0025, Armenia)、Valodya Mirzoyan(Institute of Pharmacy, Yerevan State University, Yerevan 0025, Armenia)、Narine Zakaryan(Faculty of Biology, Yerevan State University, Yerevan 0025, Armenia)、Rosanna Palumbo(Institute of Biostructures and Bioimaging (IBB), National Research Council of Italy (CNR), 80145 Naples, Italy)、Caterina Vicidomini(Institute of Biostructures and Bioimaging (IBB), National Research Council of Italy (CNR), 80145 Naples, Italy)、Giovanni N. Roviello(Institute of Biostructures and Bioimaging (IBB), National Research Council of Italy (CNR), 80145 Naples, Italy)、Ashot Saghyan(Institute of Pharmacy, Yerevan State University, Yerevan 0025, Armenia; Scientific and Production Center “Armbiotechnology”, National Academy of Science, Yerevan 0056, Armenia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lusine Sahakyan, Avetis Tsaturyan, Ela Minasyan, et al. Phytochemical Composition, Elemental Profiles, Antioxidant Activity, and Xenobiotic Relevance of Rosehip and Sea Buckthorn Fruits from Armenia. Journal of Xenobiotics 2026-10-21. DOI: 10.3390/jox16060202. 原著ライセンス:CC BY.