著者の所属・活動拠点の国は、ニュージーランド、ベトナムです。

掲載誌:Journal of Applied Phycology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

収穫した海藻は、保存性と品質を保つために乾燥させてから加工されるのが一般的です。乾燥によって微生物の増殖や酵素の働きが抑えられる一方、酸化しやすい有用成分が変化してしまうおそれもあります。さらに乾燥には多くのエネルギーと時間がかかるため、どの乾燥方法を選ぶかは、品質とコストの両面で重要な問題です。

研究チームが対象としたのは、ニュージーランド南島の沿岸で大きな群落をつくる在来の大型海藻ジャイアントケルプ(Macrocystis pyrifera)と、北西太平洋原産で船舶を介して世界各地に定着したワカメ(Undaria pinnatifida)です。どちらも、フコイダンなどの有用成分を取り出す産業の原料になり得ると著者らは考えています。フコイダンは褐藻の細胞壁に含まれる硫酸基をもつ多糖類で、食品や医薬品などの分野で関心を集めている成分です。

この研究の目的は、乾燥条件の違いが、2種の海藻の部位ごとに、水による抽出で得られるフコイダンや総ポリフェノール(フェノール性化合物の総量)の量にどう影響するかを調べ、あわせて抽出液の抗酸化活性を評価することでした。研究チームは当初、低温・真空下で水分を除く凍結乾燥がもっとも成分を保ちやすく、熱風乾燥では温度が高いほど乾燥時間は短くなる一方で、成分の量や活性は下がると予想していました。

何をどのように調べたか

2024年9月、ニュージーランド・オタゴ湾の養殖場で10か月間育てたジャイアントケルプと、そのすぐ隣の岩礁に自生していたワカメを同じ日に採取しました。それぞれについて、平たい葉の部分(葉状部)と、胞子をつくる部分(胞子葉。ワカメではメカブにあたる部位)を試料としました。

乾燥は7通りの条件で比較しました。熱風乾燥機による45℃、60℃、80℃の乾燥、凍結乾燥、電子レンジによる220W、440W、660Wの乾燥です。乾燥後の試料は粉砕し、海藻と水を1対100の割合で混ぜ、70℃で24時間おく熱水抽出を行いました。

得られた抽出液について、フコイダン(精製前の粗フコイダン)の量と総ポリフェノール量を測定しました。抗酸化活性は、試験管内で人工的な不安定分子(ラジカル)を消去する力を見る2種類の方法と、鉄イオンを還元する力を見る方法の、計3つの指標で評価しました。

主な結果

乾燥にかかる時間は方法によって大きく異なりました。凍結乾燥がもっとも長く、21〜33時間を要しました。熱風乾燥は45℃と60℃で17〜21時間かかりましたが、80℃では4〜4.5時間に短縮されました。電子レンジ乾燥はもっとも速く、出力を上げるにつれて約0.35時間から0.07時間まで短くなりました。

フコイダンの量は、海藻の種類、部位、乾燥方法によって異なりました。どちらの種でも、胞子葉は葉状部より多くのフコイダンを含んでいました。ワカメの胞子葉では、凍結乾燥した試料が乾燥重量100gあたり40.5gと高い値を示し、60℃の熱風乾燥を除くほかの方法を上回りました。ワカメの葉状部では、60℃の熱風乾燥で乾燥重量100gあたり29.1gともっとも多く得られました。一方、ジャイアントケルプでは、凍結乾燥した試料のフコイダン量がどの部位でももっとも少なくなりました。

総ポリフェノール量への乾燥方法の影響も、種と部位によって異なりました。たとえば、ジャイアントケルプの胞子葉では、660Wの電子レンジで乾燥した試料のほうが、凍結乾燥した試料より約35%多く検出されました。

抗酸化活性については、乾燥方法による違いよりも、種や部位による違いのほうがはっきり表れました。3つの指標のうち乾燥方法の影響が統計的に認められたのはラジカル消去を見る指標の1つだけで、その影響の出方も部位によって異なりました。鉄イオンを還元する力は、ジャイアントケルプがワカメの5〜8倍高い値を示しました。

この研究が示すこと

著者らは、乾燥方法がフコイダンの得られる量を左右し、その最適な方法は海藻の種によって異なると結論づけています。ワカメの胞子葉には凍結乾燥が有効でしたが、ジャイアントケルプでは熱風乾燥や電子レンジ乾燥のほうが同等かそれ以上の量をもたらしました。ジャイアントケルプで凍結乾燥の量が少なかった理由として、細胞壁の構造が壊れずに残り、成分が抽出されにくかった可能性を挙げています。ただし、この研究ではフコイダンの構造そのものは分析しておらず、こうした違いが生じるしくみは確認されていないと著者らは述べています。また、すべての試料を乾燥前にいったん冷凍しており、その処理が成分に影響した可能性も指摘しています。

電子レンジ乾燥や中程度の温度での熱風乾燥は、処理時間の面で大きな利点があります。一方、抽出液の抗酸化活性は乾燥方法による違いが小さく、種や部位による違いが大きいという結果でした。研究チームは、成分の保持、抽出効率、大規模化のしやすさのうち何を重視するかに応じて乾燥方法を選ぶべきだとしています。収穫後の処理方法をどう選ぶかが、海藻から得られる成分の量を左右し得ることを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Duong M. Le(Department of Marine Science, University of Otago, New Zealand. 360 Leith Street, Dunedin, 9016, New Zealand)、Tang V. Nguyen(Department of Food Technology, Nha Trang University, No. 2 Nguyen Dinh Chieu, Bac Nha Trang, Khanh Hoa, 57000, Vietnam)、Daniel W. Pritchard(TMK Research Limited, New Zealand. 10 Bone Street, Dunedin, 9013, New Zealand)、Matthew J. Desmond(Department of Marine Science, University of Otago, New Zealand. 360 Leith Street, Dunedin, 9016, New Zealand)、Christopher D. Hepburn(Department of Marine Science, University of Otago, New Zealand. 360 Leith Street, Dunedin, 9016, New Zealand)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Duong M. Le, Tang V. Nguyen, Daniel W. Pritchard, et al. Drying method influences the yield and activity of bioactive compounds extracted from the kelp species Macrocystis pyrifera and Undaria pinnatifida in New Zealand. Journal of Applied Phycology 2026-10-28. DOI: 10.1007/s10811-026-04048-8. 原著ライセンス:CC BY.