著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:データの少ない部位「ジョウル」を数値で捉える

ポークジョウルは、豚の首の下側にある、筋肉と脂肪が自然に一体になった部位です。研究チームによると、この部位は韓国の焼き肉、広東料理のチャーシュー、日本のラーメンのチャーシューなどに使われ、イタリアでは乾燥熟成させたグアンチャーレの原料にもなります。一方で、食感や栄養成分、香りについて数値で体系的に調べた研究は限られているといいます。

加工食品の製造では、原料肉を経験に頼らずデータに基づいて選ぶ流れが強まっています。そのためには部位ごとの品質指標が必要です。著者らはこの点を踏まえ、ジョウルを豚バラ、肩肉(ボストンバット)、スペアリブという一般的な3部位と比べました。目的は、ジョウルの特徴を多面的に記述すること、そして他の部位と区別できる特徴を見つけることでした。

何を調べたか:同じ豚から4部位を採取して比較

研究では、中国で商業生産に広く使われるデュロック・ランドレース・大ヨークシャーの三元交雑豚10頭を用いました。いずれも去勢豚で、同じ環境と飼料で育てられています。と畜後に枝肉を24時間冷却し、1頭ごとに4部位を採取しました。同じ個体から全部位を取ることで、個体差の影響を抑えて部位どうしを比べられるようにしています。

測定項目は多岐にわたります。加熱時と遠心分離時に失われる水分の割合(肉が水分を保つ力の目安)、色、硬さや噛みごたえなどの食感、たんぱく質・脂肪・アミノ酸・脂肪酸の組成を調べました。肉の中の水がどの程度自由に動けるかは、低磁場核磁気共鳴(LF-NMR)という手法で評価しました。さらに、80℃で試料から立ちのぼる香り成分を分析し、それぞれの濃度が「におうとされる最低濃度」の何倍にあたるかを示す値(OAV)を計算して、香りに寄与しうる成分を推定しました。香り成分の分析には、10頭のうち6頭のデータが使われています。

主な結果:部位ごとにはっきり異なる特徴

ジョウルは、4部位の中で加熱損失(26.35%)と遠心分離による損失(28.07%)が最も大きく、水分を保つ力が比較的弱いという結果になりました。LF-NMRでは、ジョウルで最も動きやすい水の割合が高く、その動きやすさも大きいことが示されました。著者らは、これが水分損失の大きさと一致する傾向だと述べています。食感では、ジョウルの切断に必要な力、硬さ、噛みごたえが最も大きく、今回の条件では最も硬い部位でした。最も柔らかかったのは豚バラです。

栄養成分では、肩肉がたんぱく質と必須アミノ酸などの含量で最も高く、脂肪は最も少なくなりました。ジョウルは、脂肪酸のうち一価不飽和脂肪酸の割合が最も高く、脂肪酸組成から算出する2つの指標(動脈硬化指数・血栓形成指数)は数値上最も低い値でした。ただし、n-6系とn-3系の多価不飽和脂肪酸の比率は最も高くなっています。スペアリブは多価不飽和脂肪酸の割合が最も高い部位でした。

香りについては、7つの化学グループにわたる65種類の成分が推定的に同定されました。香り成分の合計量はスペアリブが最も多く、OAVの合計でもスペアリブが最大で、ジョウルは最小でした。著者らは、量の多い成分が必ずしも香りに強く寄与するわけではないことも指摘しています。におうとされる濃度の基準は成分ごとに大きく異なるためです。多変量解析では4部位を判別でき、部位を区別する候補となる香り成分が10種類選ばれました。

この研究が示すこと

この研究は、これまでデータが乏しかったジョウルについて、食感、栄養、水分の状態、香りの面からほかの部位との違いを数値で示しました。ジョウルは水分を保ちにくく硬めである一方、脂肪酸組成には独自の特徴があります。部位ごとに異なる性質を持つことが、具体的なデータとして整理されたといえます。

一方で、著者らはこの成果を予備的な特徴づけと位置づけています。対象は1つの商業生産集団の10頭に限られ、香りの分析は6頭分です。また、人による官能評価などで香りを確かめてはいません。そのため、どの部位が味や加工に優れているかを示す証拠ではない、と明記しています。今回の結果は、部位に応じた原料選びを考えるうえでの基礎的な手がかりとなります。

原著論文の著者・所属:Shuanshuan Xue(Food Laboratory of Zhong Yuan, Luohe 462300, China)、Wanli Zhang(Food Laboratory of Zhong Yuan, Luohe 462300, China)、Jiaqi Sun(Food Laboratory of Zhong Yuan, Luohe 462300, China)、Bing Yang(Food Laboratory of Zhong Yuan, Luohe 462300, China)、Yingjian Hou(Food Laboratory of Zhong Yuan, Luohe 462300, China)、Minnan Liu(Food Laboratory of Zhong Yuan, Luohe 462300, China)、Zhenxia Cao(Food Laboratory of Zhong Yuan, Luohe 462300, China)、Jing Yan(Food Laboratory of Zhong Yuan, Luohe 462300, China)、Heng Wang(Food Laboratory of Zhong Yuan, Luohe 462300, China)、Lishui Chen(Food Laboratory of Zhong Yuan, Luohe 462300, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shuanshuan Xue, Wanli Zhang, Jiaqi Sun, et al. Comparative Characterization of Pork Jowl and Three Commercial Cuts from DLY Pigs: Instrumental Quality, Nutritional Composition, Water Distribution, and Volatile Profiles. Foods 2026-08-13. DOI: 10.3390/foods15162823. 原著ライセンス:CC BY.