この研究は、スペインの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Children
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
思春期の食事と歯ぐきの健康に注目した理由
思春期は体が急速に成長し、必要な栄養が増える時期です。一方で、この時期には食事の質が下がりやすく、精製された炭水化物、甘い飲み物、超加工食品が多く、栄養の密度が低い食事になりがちだと指摘されています。著者らは、こうした食事が歯ぐきの炎症に関わる可能性に注目しました。
歯周組織、つまり歯を支える歯ぐきや周囲の組織の病気は、思春期によく見られます。著者らによると、歯周病による取り返しのつかない組織の損傷は、思春期の後半から成人期の初めに始まると考えられています。成人では栄養と歯周病の関係が多く調べられてきましたが、思春期の若者で個々の栄養素の摂取量を調べた研究は限られています。そこで研究チームは、スペイン・マヨルカ島の若者を対象に、歯周組織に病変がある人とない人で栄養素の摂取量を比べることを目的としました。
どのように調べたか
研究チームは、マヨルカ島の中等教育学校に通う15歳の生徒156人(女子81人、男子75人)を対象に、ある一時点の状態を調べる横断研究を行いました。学校は、都市部・都市周辺部・農村部という地域と、公立・私立という学校の種類で分けたうえで選ばれています。
歯ぐきの状態は、世界保健機関(WHO)の方法に沿って、訓練を受けた歯科医師が地域歯周疾患指数(CPI)で評価しました。CPIでは、口の中を6つの区画に分け、それぞれについて健康か、器具で軽く探ったときに出血があるか、歯石があるかなどを記録します。すべての区画が健康な人を「歯周組織が健康」、少なくとも1区画に出血や歯石がある人を「歯周病あり」と分類しました。なお、この研究では、歯と歯ぐきの間の深い溝である歯周ポケットが見られた人はいませんでした。
食事については、訓練を受けた栄養士が、前日24時間に食べたものを聞き取る方法で1回調査し、栄養素の摂取量を計算しました。さらに、欧州食品安全機関(EFSA)が示す摂取の目安となる値をどの程度満たしているかも調べました。
主な結果
156人のうち、歯周組織が健康と分類されたのは46人、歯周病ありは110人でした。性別と歯ぐきの状態の間には、統計的に意味のある関連は見られませんでした。
2つのグループを比べると、1日のエネルギー摂取量や、たんぱく質、炭水化物、脂質の量には意味のある差はありませんでした。一方で、健康なグループは、食物繊維、マグネシウム、セレン、ビタミンA、ビタミンCの摂取量が統計的に有意に多いと報告されています。たとえばビタミンCの平均摂取量は、健康なグループで1日あたり約107ミリグラム、歯周病ありのグループで75ミリグラムでした。
これら5つの栄養素について、EFSAの目安を満たす人の割合は全体として低いものでした。ただし、マグネシウム(26.1%対11.8%)、ビタミンA(37.0%対14.5%)、ビタミンC(47.8%対28.2%)では、健康なグループのほうが目安を満たす人の割合が高くなっていました。食物繊維とセレンは、どちらのグループでも目安を満たす人が少数でした。
次に研究チームは、性別、総エネルギー摂取量、上記の5つの栄養素を同時に考慮する分析を行いました。モデル全体としては統計的に有意でしたが、ほかの要因の影響を考慮すると、個々の栄養素のうち歯周病と独立して関連しているといえるものはありませんでした。
この研究が示すこと
著者らは、エネルギーの総量には差がなかったことから、健康なグループで見られた栄養素の多さは、食べる量の多さではなく、食事の栄養密度の高さを反映している可能性があると考えています。また、特定の1つの栄養素よりも、食事全体の栄養バランスの良さが思春期の歯ぐきの健康と関連している可能性があると述べています。
この研究は一時点の状態を調べたもので、食事が歯ぐきの状態を変えたという因果関係を示すものではありません。また、食事の調査は1日分の聞き取りに基づいており、普段の食習慣を個人ごとに正確に表すものではないことや、生活習慣や社会経済的な要因は考慮していないことも、著者ら自身が述べています。それでも、思春期の若者で歯ぐきの状態と栄養素の摂取に関連が見られたことは、この年代の食事の質と口の健康を合わせて考える手がかりとなる報告です。
著者:Pablo Estebala Alández(Adema-Health Group of University Institute for Research in Health Sciences (IUNICS), 07211 Palma, Spain)、Irene Coll Campayo(Adema-Health Group of University Institute for Research in Health Sciences (IUNICS), 07211 Palma, Spain)、Daniela Vallejos Rojas(Adema-Health Group of University Institute for Research in Health Sciences (IUNICS), 07211 Palma, Spain)、Maria Luisa Bonet(Artificial Intelligence Research Institute of the Balearic Islands (IAIB), 07122 Palma, Spain)、Nora López-Safont(Artificial Intelligence Research Institute of the Balearic Islands (IAIB), 07122 Palma, Spain)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Pablo Estebala Alández, Irene Coll Campayo, Daniela Vallejos Rojas, et al. Influence of Nutrient Intake and Oral Health Among Adolescents in Mallorca: A Cross-Sectional Study. Children 2026-09-26. DOI: 10.3390/children13101311. 原著ライセンス:CC BY.