著者の所属・活動拠点の国は、インドネシア、タイです。

掲載誌:Food Technology and Biotechnology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

研究チームは、食用キノコのHypsizygus属から取り出したキトサンを、インドネシアの伝統的なチーズ「ダンケ」の保存に使えるか調べました。キトサンは、キノコの細胞壁などに含まれるキチンを加工して得られる物質で、食品を覆う食べられる膜の材料になります。

ダンケは製造や保存の間に微生物による品質低下が起こりやすい食品です。著者らは、このキノコ由来のキトサンで表面を覆うことで、チーズの成分や味、食感を保ちながら、微生物の増殖を抑えられるかを検討しました。

何を、どのように調べたか

研究チームは、乾燥させたキノコをアルカリ処理してキトサンを抽出し、赤外線を使って化学構造の特徴を調べ、キトサンが得られたことを確認しました。次に、キトサン濃度が0.1%と0.2%の液を作りました。これは液100 mL当たり、それぞれ0.1 g、0.2 gのキトサンを含む濃度です。

約2 gのチーズを液に30秒間浸して表面を覆い、コーティングしないチーズと比較しました。各処理は3反復で行い、保存開始時と5日目、9日目、11日目に、好気性菌の総数、腸内細菌科の細菌、乳酸菌、酵母・カビを培養して調べました。

併せて、水分やたんぱく質、脂質などの成分、酸性・アルカリ性の程度を示すpH、表面の微細な構造を測定しました。味やにおい、食感、見た目、全体的な好ましさは、18~30歳の訓練を受けていない10人が5段階で評価しました。

主な報告結果

保存9日目と11日目には、0.2%のキトサンで覆ったチーズで、好気性菌の総数が3条件の中で最も少なく、条件間に統計的に有意な差がありました。同じ時点の腸内細菌科の菌数も、0.1%、0.2%の両条件で、コーティングしないチーズより有意に少なくなりました。

一方、乳酸菌はコーティング後も生存していました。特に0.1%の条件では、保存5日目以降、乳酸菌数がコーティングなしと0.2%の条件より有意に多くなりました。

酵母とカビは、9日目と11日目にはコーティングの有無にかかわらず、すべての条件で検出されませんでした。このため著者らは、この減少をキトサンだけの効果とは判断できないとしています。

たんぱく質、脂質、炭水化物、水分の割合は、コーティングしたチーズとしないチーズの間で有意な差がありませんでした。pHは、すべての条件で11日間の保存中にわずかに低下しました。

官能評価では、食感と見た目の評価は各条件で似ており、著者らはコーティングしたチーズも全体として受け入れられると報告しました。ただし、味については、コーティングした両条件で、コーティングなしよりも好ましくないという評価が多くなりました。

この報告が示すこと

著者らは、Hypsizygus属のキノコ由来キトサン、特に0.2%のコーティングが、ダンケの主要な成分を大きく変えずに、保存中の微生物による品質低下を抑える材料になり得ると結論づけています。ただし、味への影響は、受け入れられやすさを左右する課題として残りました。

また、試験開始時から、すべての条件で腸内細菌科の菌数が非常に多く、著者らはコーティング前の汚染を研究上の限界に挙げています。今回の報告は、食べられるコーティングの保存材料としての可能性を示すものであり、酵母・カビへの効果まで明確になったわけではありません。

原著論文の著者・所属:Zahra Fitri Annisa(Universitas Gadjah Mada)、Wannisa Raksamat(Praboromarajchanok Institute Ministry of Public Health)、Sari Darmasiwi(Universitas Gadjah Mada)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zahra Fitri Annisa, Wannisa Raksamat, Sari Darmasiwi. Application of Hypsizygus sp. Chitosan as an Edible Coating to Prolong Shelf Life of Dangke Cheese. Food Technology and Biotechnology(出版社:University of Zagreb) 2026-11-06. DOI: 10.17113/ftb.64.04.26.9177. 原著ライセンス:CC BY.