著者の所属・活動拠点の国は、ベトナムです。
掲載誌:Materials Research Express
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、酸化亜鉛(ZnO)の粒子に、キトサンオリゴ糖と天然の泥炭から得たフミン酸を多く含む成分を組み合わせた材料「ZnO/COS/HA」を合成し、その性質と用途の可能性を報告しました。キトサンオリゴ糖は、キトサンと呼ばれる天然由来の多糖を短い鎖に分解した糖です。フミン酸は、植物などが長い時間をかけて分解されてできる有機物の一種で、泥炭に多く含まれます。
著者らは、この材料が細菌の増殖を抑える働きと、植物の発芽や生育を助ける働きを併せ持つかどうかを調べています。
材料の作り方と構造の確認
論文によると、合成された材料の酸化亜鉛は、大きさ約11.4〜23.7ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の微小な結晶が集まり、1マイクロメートルに満たない程度の棒状の粒子を形づくっていました。これらの粒子は、キトサンオリゴ糖とフミン酸によって安定化されているとされています。
研究チームは、X線回折や電子顕微鏡観察、ラマン分光法、赤外分光法、元素分析など複数の手法で材料を調べました。その結果、無機物である酸化亜鉛と有機物が一体となった「有機・無機ハイブリッド」と呼ばれる構造ができていることを確認したと報告しています。
抗菌性と植物への作用
抗菌性の試験では、黄色ブドウ球菌、枯草菌、大腸菌、緑膿菌、エンテロバクター属菌の5種類の細菌に対して、この材料が増殖を抑える作用を示しました。細菌の増殖を抑えるのに必要な最小の濃度である「最小発育阻止濃度」は、1リットルあたり75〜100ミリグラムだったと報告されています。
植物への作用としては、まずクリ(Castanea mollissima)の種子で発芽と初期の根の発達が調べられました。材料を与えると発芽や根の成長が促され、最も良い結果は1000ppmの濃度で得られました。一方、それより濃度を高めると発芽や根の成長がかえって低下し、著者らは濃度によっては植物に害を与える可能性(植物毒性)があることを示唆しています。
さらに、2025年1月から4月にかけて行われた圃場での試験では、ラッカセイ(Arachis hypogaea)の葉にこの材料を散布しました。何も処理しなかった区画と比べて、生育や収量に関わるいくつかの指標が改善し、収量は約14.9%増えたと報告されています。
研究が示すこと
著者らは、抗菌作用や植物の生育を促す作用がどのような仕組みで生じるのかについては、今回直接は調べていないと明記しています。そのうえで、この材料が抗菌性と植物の生育促進という複数の性質を併せ持つことが示され、両方の働きを兼ねる材料として役立つ可能性があると述べています。同時に、クリの種子での結果からは、効果が使う濃度に左右されることもうかがえます。
原著論文の著者・所属:Nguyen Mau Thanh(Quang Binh University)、Nguyen Giang Nam(Hue University; Quang Tri)、Nguyen Thanh Binh(Dalat Nuclear Research Institute)、Pham Khac Lieu(Hue University)、Le Lam Son(Hue University)、Dinh Quang Khieu(Hue University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nguyen Mau Thanh, Nguyen Giang Nam, Nguyen Thanh Binh, et al. Synthesis and application of ZnO/chitosan oligosaccharide/humic acid derived from natural peat. Materials Research Express 2026-09-08. DOI: 10.1088/2053-1591/aea473. 原著ライセンス:CC BY.