栗ごはんのふたを開けると、白い米の間に黄色い栗が顔を出します。ごはんと一緒にほおばれば、もっちりした米に、ほくほくとほどける栗。砂糖を加えなくても感じる、穏やかな甘さが秋の食卓に似合います。

栗の旬は、おおむね9月から10月。その間、売り場には成熟する時期の違う品種が順に届きます。さらに、収穫したあと低温で貯蔵し、甘みを引き出してから出荷する栗もあります。同じ秋の栗でも、食べ頃を迎えるまでの道のりは一つではありません。

秋が深まると、栗の顔ぶれも変わる

茨城県は、栗の収穫量が全国一の産地です。2024年は3,780トンで、2位の熊本県の2倍以上。県内では9月上旬から10月下旬にかけて、早生・中生・晩生の栗が順に収穫されます。

9月上旬から中旬の「丹沢」は、果肉の鮮やかな黄色が特徴です。甘露煮のほか、裏ごしして菓子に使うペーストにも向きます。9月下旬から10月上旬の「銀寄」は、大粒で甘みが強く、香りも豊か。蒸し栗にすると、その風味を味わえます。

10月上旬から中旬の「石鎚」は、煮崩れしにくい品種です。実の形を残して仕上げる甘露煮や渋皮煮に向きます。

冷たい貯蔵庫で、でんぷんが糖に変わる

品種がもつ甘みに、収穫後の貯蔵で変化が加わります。栗に多く含まれるでんぷんが、低温で貯蔵する間に糖に変わり、甘みが増します。茨城県の笠間地域では、品種ごとに貯蔵への適性を調べ、冷蔵施設を使った貯蔵栗づくりが進められてきました。

茨城町の「飯沼栗」は、晩生品種の石鎚を基本に、栽培から貯蔵・選別までの方法を定めた地域ブランドです。

飯沼栗づくりは、木に実る段階から始まります。一般的な栗は一つのイガに三つの実が入りますが、飯沼栗では一つのイガに一つの実を育てることを目標にしています。実際には一つから二つの実を大きく育て、中央にできやすい平たい栗を少なくしています。

収穫後は全ての栗を洗い、おが粉をまぶして乾燥を防ぎながら冷温貯蔵し、出庫後には適度に乾かして選別します。貯蔵の前後と集荷所で、合わせて三回の選別を行います。甘みを引き出す時間と、傷んだ実を取り除く仕事が組み合わされています。

飯沼栗が販売されるのは、おおむね10月下旬から11月中旬。収穫期の遅い品種を選び、貯蔵にも時間をかけるため、秋が深まってから届きます。

でんぷんの多い栗には、食物繊維やビタミンCも

食品成分表の日本ぐり(生)は、くるみやごまと同じ種実類です。ただ、栗は脂質が少なく、でんぷんをはじめとする炭水化物を多く含みます。炭水化物という数字の全てが、甘く感じる糖というわけではありません。

生とゆでた日本ぐりの栄養成分を並べました。どちらも皮を除いた可食部100g当たりの値です。ビタミンとミネラルは主な成分を掲載しています。

日本ぐりの栄養成分(各状態の可食部100g当たり)
栄養成分生ゆで
たんぱく質2.8g3.5g
脂質0.5g0.6g
炭水化物36.9g36.7g
食物繊維4.2g6.6g
ビタミンB10.21mg0.17mg
ビタミンC33mg26mg
カリウム420mg460mg
マグネシウム40mg45mg

出典は文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」です。これらは生とゆでた日本ぐりの成分値で、特定のブランドや、貯蔵後の甘さを測った値ではありません。

皮のむきやすさも、品種で違う

栗ごはんを作るときに手間がかかるのが、硬い鬼皮の下にある渋皮です。実にぴったり張りついたこの皮にも、品種による違いがあります。

農研機構が育成した「ぽろたん」は、実に切れ目を入れて軽く加熱すると、渋皮がむけやすくなる日本ぐりです。渋皮が離れやすい天津甘栗には中国ぐりが使われますが、ぽろたんの祖先は全て日本ぐり。日本ぐりの中から、皮をむきやすい性質を受け継いだ品種が育てられました。収穫期はつくばで9月上中旬と、秋の早い時期です。

10月下旬からは、飯沼栗のように、収穫後に甘みを引き出してから届く栗も出回ります。次に栗ごはんを炊くなら、そんな栗を選んでみるのも楽しみです。収穫のあとにも育つ甘さを、秋の食卓で味わえます。

※参考資料

以下の公開資料をもとにNutriMapが構成・執筆しました。