暑さが続くと、台所に立つのが少し億劫になります。火を使う時間は短く、それでいて食べごたえはほしい。そんなときに手が伸びるのが鶏むね肉(皮つき・生)です。後味がさっぱりしているので、食の細る時期でも一皿を食べきりやすいのが持ち味です。ちなみに店に並ぶ鶏肉の大部分は、肉用に育てられた若い鶏、いわゆるブロイラー。地鶏や特産鶏とは成分の値が違うこともあるとされています。

1枚で、その日のたんぱく質の大半がまかなえる

可食部100gあたりのたんぱく質は21.3g。女性30〜49歳の1日の推奨量50gの43%にあたります。むね肉は1枚200gぐらいが目安ですから、まるごと食べればおよそ42.6g。日本人の食事摂取基準の推奨量に対して8割を超える計算になります。エネルギーは133kcal、脂質5.9g、炭水化物0.1gと、全体に軽やかです。

皮つきのまま焼けば、表面はぱりっと、身はしっとり仕上がります。冷しゃぶ風にゆでて冷やす、さっと蒸して香味だれをかけるなど、火を長く使わない仕上げ方とも相性がよく、暑い時期にはありがたいところです。

あっさりしているのに、味は薄くならない

むね肉のアミノ酸を多い順に見ると、先頭はうま味のもとで知られるグルタミン酸で3000mg。次いでアスパラギン酸1900mg、リシン1800mgと続きます。むね肉のうま味は、このグルタミン酸の多さに支えられているといえそうです。

ビタミンB6は、焼くと少し目減りする

100gあたり、ナイアシンは11.0mg、ビタミンB6は0.57mg、パントテン酸は1.74mgです。ビタミンB6は女性30〜49歳の推奨量1.2mgの48%にあたります。ただしビタミンB6は加熱にも水にも弱く、肉を焼いたり揚げたりしたときに残る割合は中央値でおよそ6割とされています。調理で目減りする分は、見込んでおくとよさそうです。ナイアシンは体内の酵素のはたらきを助ける成分として、B6はアミノ酸の代謝に、パントテン酸は糖や脂肪酸の代謝に関わる成分で、いずれも皮膚や粘膜の健康維持を助けるとされています。

傷みやすさへの備えが、そのまま平日の段取りになる

むね肉は牛肉や豚肉に比べて水分が多く、特に傷みやすいといわれます。買ってすぐ使わない日は、下味をつけるか、加熱してから保存しておくとよいとされています。厚みが均一になるようにそぎ切りにして、1枚ずつすき間なくラップで包んでおけば、暑い季節でも使い切りやすくなります。塩やしょうゆで下味をつけて冷凍しておけば、帰ってきてそのまま焼くだけで一皿が仕上がります。

まとめ

そぎ切りにして下味をつけ、冷凍しておく。そのひと手間を先に置いておくだけで、気力の落ちる日でも焼くだけの一皿になります。脂質が控えめで後味が軽いというむね肉の持ち味は、暑い時期の食卓とよく合います。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 日本人の食事摂取基準