著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。

掲載誌:Plants

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられがちな果皮を成長段階ごとに調べる

オレンジの果皮は果実重量の4割ほどを占めるとされ、加工の過程で大量に生じます。多くは廃棄されるか、家畜の飼料など付加価値の低い用途に回されています。一方で果皮はポリフェノールやフラボノイド、ビタミン、ミネラル、精油などを含むため、天然の抗酸化成分や機能性素材の原料として期待されてきました。

果皮の成分や働きは、果実の成長に伴って大きく変化すると考えられています。しかし、その変化の幅はまだ十分に分かっていません。これまでの研究の多くは、特定の成分群に注目するか、一時点の果皮だけを調べたものでした。そこでこの論文では、果実の成長段階が果皮の化学組成と生物活性にどう影響するかを調べました。そのために、多くの成分群と抗酸化能、抗菌活性を同時に測定しています。

開花後120日から250日まで、6時期の果皮を分析

著者は、トルコ・アンタルヤ県の農家の果樹園で栽培されたバレンシア種のオレンジを対象にしました。果実は6つの時期に採取しました。最初は開花後120日の小さな緑色の実で、色づきが始まる時期を経て、最後は開花後250日の収穫期です。まず果実の大きさや重さ、果皮の厚さ、果汁の糖度や酸性度(pH)を測りました。次に果皮を乾燥・粉砕してメタノール水溶液で成分を抽出し、乾燥させた抽出物を分析に用いました。

抽出物については、まずポリフェノール類とフラボノイド類の総量を調べました。あわせて抗酸化能(物質を酸化から守る力を化学的に測る指標)も測定しました。さらに質量分析などの手法で、カロテノイド、フラボノイド、フェノール酸、有機酸、水溶性ビタミン、香り成分を一つ一つ測定し、ミネラルの量も調べました。

抗菌活性は、細菌を広げた寒天培地に抽出物を置いて評価しました。主な指標は、その周りに細菌が育たない透明な範囲(阻止円)がどれだけ広がるかです。対象は大腸菌、腸球菌の一種エンテロコッカス・フェカーリス、黄色ブドウ球菌、セレウス菌の4種です。

成分は一様ではなく、種類ごとに異なる変化

果実の長さ・幅・重さ、果肉の乾燥重量、糖度は、成長とともにおおむね増加しました。例外は果皮の厚さで、成長が進むにつれて薄くなりました。果汁のpHは期間を通じて大きくは変わらず、酸性を保っていました。

果皮抽出物のポリフェノール総量とフラボノイド総量、抗酸化能は、成長初期に高く、成長が進むにつれて低下しました。調べた58成分のうち、量を測定できたのは38成分です。主要な成分は、カロテノイドではβ-カロテン、フラボノイドではヘスペリジン、フェノール酸ではフェルラ酸でした。個々のカロテノイド、フラボノイド、フェノール酸の量は、おおむね成長とともに増える傾向が報告されています。ただし、エピカテキンとシリンガ酸は例外でした。

有機酸ではクエン酸とリンゴ酸が多く含まれていました。水溶性ビタミンではアスコルビン酸(ビタミンC)が中心で、5番目の時期に最大値の1キログラムあたり1508.3ミリグラムに達しました。香り成分ではリモネンが最も多く含まれていました。ミネラルは成長とともに一貫して減少し、主要な元素はカルシウム、カリウム、マグネシウムでした。

抗菌活性は、成長段階と細菌の種類によって異なりました。セレウス菌は、すべての時期の抽出物で増殖が抑えられました。最も大きな阻止円(直径27.67ミリメートル)が観察されたのは、2番目の時期の抽出物をエンテロコッカス・フェカーリスに作用させたときです。また、主成分分析(多数の成分データをまとめて傾向を見る統計解析)では、成分の組み合わせによって成長段階を区別できました。最初の2つの軸で、全体のばらつきの84.63%が説明されています。

果皮の性質は成長段階によって変わる

この研究は、バレンシアオレンジの果皮の成分と働きが、成長の過程で一斉に増えたり減ったりするわけではないことを示しました。動き方は成分ごとに異なります。ポリフェノールやフラボノイドの総量と抗酸化能は若い時期に高い一方、個々のカロテノイドやフラボノイド、フェノール酸の多くは成長とともに増えていました。著者は、果皮の利用可能性を評価する際には果実の成長段階を考慮することが重要だとまとめています。

原著論文の著者・所属:Sercan Önder(Department of Agricultural Biotechnology, Faculty of Agriculture, Isparta University of Applied Sciences, Isparta 32200, Türkiye)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sercan Önder. Developmental Dynamics of Bioactive Composition and Biological Activities of Methanolic Extracts from Orange (Citrus sinensis) Peel: Comprehensive Metabolite Profiling, Antioxidant Capacity, and Antibacterial Activity. Plants 2026-10-01. DOI: 10.3390/plants15193017. 原著ライセンス:CC BY.