同じ「魚を干して保存する」という発想でも、塩の量はまるで別物になる。まあじ開き干しの食塩相当量は100gあたり1.7gなのに対し、すけとうだら すきみだらは18.8g。同じ「干物」という言葉でくくってしまうと、この10倍以上の開きが見えなくなる。
すきみだらは、すけとうだらを三枚におろして塩干しにしたもの。ナトリウム量は100gあたり7400mgで、これに2.54を掛けると食塩相当量18.8gになる。塩そのものを使って水分を抜く昔ながらの製法が、数値にそのまま表れている形だ。一方のまあじ開き干しは、一般に「あじ」といえば真あじを指す、そのなじみ深い魚を開いて干したもので、塩分は控えめ。同じ干物でも、どれだけ塩に浸かっているかで数字はまったく違ってくる。すきみだらは1枚まるごと食べるものではなく、少量を戻して使う食材なので、100gあたりの数値をそのまま「1食分」と考えないことが大切だ。
塩の多い干物に、乾物の野菜を添える
ナトリウムの排出には、カリウムが助けとなる働きがあるとされる。塩気の強い干物を食べるときは、カリウムを含む野菜の乾物を献立に添えるという選び方ができる。
切干しだいこんはカリウムが100gあたり3500mg、干しずいきにいたっては100gあたり10000mgにのぼる。ずいきはさといもの茎のことで、干しずいきは別名「いもがら」とも呼ばれる、その茎を干した保存食だ。煮物1人分の目安量は切干しだいこんが約10g、干しずいきが約20g(干し1本で約6g)なので、実際に口にする量はごくわずかだが、乾物にすることで水分が抜け、同じ重さあたりの数値は生の野菜より大きくなる。ちなみに干しずいきは鉄も100gあたり9mg含む(鉄の推奨量は成人30〜49歳で男性7.5mg・女性6.0mg〈月経なし〉、女性は月経ありで10.5mg)。亜鉛も5.4mg含む(亜鉛の推奨量は成人30〜49歳で男性9.5mg・女性8.0mg)。
切干しだいこんは、だいこんの根をせん切りなどにして天日で乾かした乾物だ。同じ株でも、根から切り落とされるだいこんの葉は、根とは別の緑黄色野菜として扱われ、生の状態ではβ-カロテンが100gあたり3900µg、ビタミンCが53mgと、根には少ない成分を含む。同じ「だいこん」でも、乾かした根の乾物と生の葉とでは、まったく別の顔を持つと考えるとわかりやすい。
山菜は塩よりも下処理がものを言う
干物や乾物が塩や乾燥で保存性を高めるのに対し、生わらびは塩蔵ではなく「あく抜き」という下処理で安全に食べられるようにする山菜だ。わらびにはプタキロシドという物質が含まれ、山菜として食べる際は伝統的にあく抜きをしてから用いるとされている。ビタミンB2を100gあたり1.09mg含むが、まず大切なのはあく抜きを済ませてから食卓にのせることだ。1本あたり約6gと小ぶりなので、下処理さえ済ませれば普段の副菜に取り入れやすい。
まとめ 名前の中に製法が隠れている
「干物」も「乾物」も一つの言葉でまとめられがちだが、まあじ開き干しとすきみだらの塩分差が示す通り、その中身は製法によって大きく異なる。塩でしめて干すのか、乾燥だけで水分を抜くのか、あるいはあく抜きという別の知恵で扱うのか。名前と製法の違いを知っておくと、干物や漬物を選ぶときの塩分の見立ても変わってくる。食塩相当量の目安は日本人の食事摂取基準で成人(30〜49歳)の目標量は男性7.5g以下・女性6.5g以下、カリウムは成人(30〜49歳)の目安量は男性2500mg・女性2000mgとされている。次に成分表の空欄が埋まったら、また数字を見比べに来たくなる。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・e-ヘルスネット「ナトリウム」(厚生労働省)