穂先がくるりと巻いたまま、白い綿毛をまとっている。山野に自生するしだ類の一種、ぜんまいの若芽は、その姿が新鮮さのしるしだ。旬は3〜6月ごろ。高知・徳島・新潟などの山里から届くぜんまいも、6月中旬には旬の終わりに差しかかる。綿毛が落ちて葉が広がると食べどきを過ぎるため、今週の食卓こそが「名残の旬」を楽しむぎりぎりのタイミングだ。

ぜんまいの葉酸量を数字で見る

栄養の数字から、ぜんまいの若芽はもう一つの顔を持つ。可食部100gあたりの葉酸は210µgある。日本人の食事摂取基準で定められた女性(30〜49歳)の推奨量240µg/日に対し、88%に相当する量だ。

葉酸は、ビタミンB群の一種である水溶性ビタミンで、さまざまな食品に分布する。細胞が新しく生まれるときにDNAの合成を助ける補酵素として働き、正常な造血をサポートする役割を持つとされる。不足すると貧血を引き起こすことがあり、とくに妊娠を考えている人・妊娠中の人には広く知られた栄養素でもある。なお、妊婦の葉酸推奨量は480µg/日と一般成人女性(240µg/日)の倍に設定されており、上記の88%という割合はあくまで一般成人女性向けの目安である。妊娠前・妊娠初期にはサプリメントによる葉酸補給が推奨される場合があり、食事だけで必要量をまかなうことが難しいケースも多い。山菜類は旬の食材として楽しむ一方で、妊娠中は過剰摂取を避けたい。

葉酸はビタミンB12と協力して赤血球をつくるとされるため、B12を含む食品(魚介・乳製品など)と組み合わせると相性がよいとも言われる。食事から摂る天然の葉酸には耐容上限量は設定されていないが、サプリメントや強化食品由来のプテロイルモノグルタミン酸では耐容上限量が設定されており、過剰摂取には別途注意が必要だ。通常の食事でぜんまいを一皿食べる範囲では、気にしすぎる必要はない。

あえ物60gという、現実的な一皿

食卓に並ぶあえ物1人分は約60g(生の可食部からの換算)。この量での葉酸は、単純換算でおよそ126µg——推奨量の50%強を一皿で補える計算になる。ただし塩ゆでなどの加熱調理によって葉酸の一部が損失するため、実際の摂取量はこれより少なくなる可能性がある。旬の時期に食卓へ取り入れる食品の一例として、葉酸量を意識して選ぶ一皿にしてみるのもよい。

食べ方はシンプルなほど旬が映える。塩ゆでして水気を切り、ごまあえや辛子みそあえに仕立てるのが定番だ。独特の歯ごたえと山の香りは、濃いめの味つけともよく合う。仕上げにかつお節をひとつまみ乗せれば、B12を含む食品を添える一例としてよい組み合わせになる。

買ってきたらすぐに塩ゆでして、塩水とともに空気を抜いた袋に入れ冷蔵保存するか、ゆでてから天日干しにして乾燥させると保存が利く。巻いたままの若芽を丁寧に下ごしらえする——それだけで、6月の台所に小さな季節の仕事が生まれる。

「今だけ」を食べる

山菜には旬がある、とよく言われる。ぜんまいに限っては、その旬の終わりが姿でも見てとれる。穂先が巻いたうちにしか食べられず、葉が開けば旬が終わる。名残の旬を逃さないなら、買ってきたその日にさっと塩ゆでし、ゆで汁を切って、旬のうちに食べきりたい。渦を巻いた穂先のあるあいだだけの、6月の小さな台所仕事だ。

数値は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準に基づきます。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準e-ヘルスネット「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」(厚生労働省)

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。