新緑が目に眩しい5月、山あいの斜面や里山では、くるりと巻いた芽を伸ばす山菜が一斉に顔を出します。なかでもわらびは、古くから日本の春の食卓に欠かせない存在です。独特のぬめりとほろ苦さが春の訪れを感じさせるわらびを、数値データとともに深く知ることで、毎日の食事がもっと豊かになります。
この時期に注目したい栄養素
わらびの魅力として特に注目したいのが、食物繊維と鉄の豊富さです。最新の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)では、食物繊維の目標量は成人で1日あたり18〜21gとされており、現代の日本人の多くが摂取不足とされています。詳細は厚生労働省の最新資料をご確認ください。
生の状態のわらびは淡泊で低カロリーな食材ですが、乾燥させた干しわらび(乾)に至っては、食物繊維が100gあたり58.0gという驚異的な数値を示します。また鉄も100gあたり11.0mgと非常に豊富です。春は新生活や環境の変化による疲れが出やすい季節。鉄は体内で酸素を運ぶ赤血球の材料となるミネラルであり、日常的に意識して摂りたい栄養素のひとつです。
おすすめ食品とその数値データ
今回注目するのは、干しわらび(乾)です。乾燥によって栄養素が凝縮されており、100gあたりのデータは以下の通りです。
- エネルギー:216 kcal
- たんぱく質:20.0g
- 脂質:0.7g
- 炭水化物:61.4g
- 食物繊維:58.0g
- カルシウム:200mg
- 鉄:11.0mg
干しわらび(乾)はたんぱく質も100gあたり20.0gと、植物性食品としては高い水準にあります。脂質はわずか0.7gと低く、カロリーも216kcalと乾物としては比較的穏やかです。カルシウムも200mg含まれており、バランスのよい山菜食材といえます。
比較として参考にしたいのが、同じ山菜の生ぜんまい(若芽・生)です。こちらは100gあたりエネルギー27kcal、たんぱく質1.7g、食物繊維3.8g、鉄0.6mgと、生の状態では全体的に控えめな数値となっています。ぜんまいを乾燥させた干しぜんまい(乾)は100gあたりエネルギー277kcal、食物繊維34.8g、鉄7.7mgと、こちらも乾燥によって栄養素が凝縮されています。食物繊維の含有量では干しわらび(乾)の58.0gが干しぜんまい(乾)の34.8gを大きく上回っており、わらびの特徴的な強みが数字に表れています。
毎日の食事への取り入れ方
干しわらび(乾)は水で戻してから使います。たっぷりの水に一晩浸けて十分にふやかし、アク抜きをしてから調理するのが基本です。戻したわらびは重量が大幅に増えるため、実際の食事での摂取量は乾燥時より少なくなりますが、食物繊維や鉄は戻した後も食卓で活躍してくれます。
おすすめの食べ方をいくつか紹介します。
- 煮物・おひたし:だし・醤油・みりんで薄く味付けしたシンプルな煮物は定番。ごまをたっぷりかけると風味が増します。
- 炊き込みごはん:戻したわらびを細かく切って米と一緒に炊けば、春らしい山菜ごはんが完成します。油揚げと組み合わせると旨みがアップします。
- みそ汁の具:戻したわらびをみそ汁に加えるだけで、ぬめりが汁に溶け込み、ほっとする一椀になります。豆腐や油揚げと合わせると、たんぱく質も同時に補えます。
- パスタや炒め物に応用:和食に限らず、にんにくと一緒にオリーブ油で炒めてパスタと和えるなど、洋風にアレンジしてもわらびのコクと食感が生きます。
なお、わらびにはアク(あく)が強いため、必ず十分なアク抜きを行ってください。重曹や木灰を使った伝統的な方法が一般的です。アク抜き後は流水でよく洗い、苦みを取り除いてから調理すると食べやすくなります。
食事量の工夫としては、乾燥品を一度に大量に食べるのではなく、1食あたり少量を戻して使い、副菜や汁物に組み込む形が長続きします。毎食の食物繊維補給のひとつとして、日常的に取り入れる意識が大切です。
まとめ
5月のわらびは、低脂質・高食物繊維・豊富な鉄という個性が際立つ山菜です。乾物として年間を通じて手に入る干しわらび(乾)は、旬の今だからこそ積極的に活用したい食材です。山の恵みを食卓に取り入れながら、5月の青々とした季節を存分に味わってください。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。