著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Journal of Nutrition Explorations

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

インドネシア北端のサンギヘ諸島には、代々受け継がれてきた魚の燻製づくりの伝統があります。代表的な製品は4つあります。ムロアジ属の魚を開いて燻した「ピネクヘ」、カツオの燻製、サメを使った「ティナパ」、そして小型魚ジュルンジュルン(Hemirhamphus属)を燻した「ロア」です。いずれも地域の重要なたんぱく源であり、経済的・文化的な価値も持っています。

著者らによると、これらの燻製魚についての科学的な記録は断片的でした。微生物だけ、あるいは成分だけを調べた研究はありましたが、複数の製品について栄養成分、食べたときの好ましさ、衛生状態を同時に評価した研究はなかったといいます。そこで研究チームは、4種の燻製魚の化学的・官能的・微生物学的な特徴をまとめて明らかにし、製品ごとの長所と課題を整理することを目指しました。

何をどのように調べたか

研究チームは、4か所の生産拠点から燻製魚を集めました。試料は各製品3点、合計12点です。地元で行われている燻製工程も観察し、記録しています。魚は内臓などを除いて洗い、水を切ってから、マンゴー、ココヤシ、チークの木とココナツの殻を燃料にした伝統的なかまどで約6時間燻されていました。

栄養面では、インドネシア国家規格(SNI)の方法に沿って「一般成分」を測定しました。一般成分とは、水分、灰分(燃やした後に残る、主にミネラルに由来する成分)、脂質、たんぱく質、炭水化物のことです。炭水化物は直接測ったものではなく、100%から他の成分を差し引いて求めた値です。

食味の評価には、学生30人がパネリストとして参加しました。見た目、香り、味、食感について、「非常に嫌い」から「非常に好き」までの9段階で採点しています。衛生状態は「一般生菌数」で調べました。これは、食品1グラムあたりに生きている細菌がどれだけいるかを示す、衛生の一般的な指標です。

主な結果

一般成分は、すべての項目で製品間に統計的に意味のある差が見られました。ロアは水分が約17.5%と最も少なく、たんぱく質(約23.8%)と灰分(約4.2%)は最も多くなりました。著者らは、灰分の多さは小魚の細かい骨に由来するミネラルを反映していると考えています。ただし、ロアのたんぱく質量はカツオとの間では統計的な差が認められませんでした。ロアは炭水化物の計算値も約50%と高く出ています。著者らはこの値について、差し引きで求める方法の誤差などが積み重なった可能性があり、慎重に解釈する必要があるとしています。

ほかの製品では、ティナパの水分が約57.7%と最も多く、著者らは傷みやすい製品だと指摘しています。カツオの燻製は脂質が約6.3%と最も多い結果でした。

食味の評価では、カツオの燻製が見た目で最も高い評価を得ました。味ではピネクヘが最も高い評価でした。一方、ロアは見た目と食感の評価が低く、食感は9段階で4.6にとどまりました。

一般生菌数は、すべての試料がSNIの上限値(1グラムあたり50万個)を下回りました。ただし、カツオ(1グラムあたり約25万個)とピネクヘ(約24万個)は上限の半分ほどに達しており、著者らは衛生管理の改善が必要だと述べています。水分が最も少ないロアは約1500個と最も低い値でした。研究チームは、水分の多さと細菌数の多さが対応していることを、水分が細菌の増殖に関わる重要な要因であることを示すものと解釈しています。

この研究が示すこと

著者らは、4つの燻製魚にはそれぞれ異なる長所があり、すべての面で優れた製品はないとまとめています。ロアは保存性と栄養面に強みがある一方で、食感や見た目の評価は低めでした。カツオは見た目の評価が高く、ピネクヘは味が好まれました。そのうえで、水分が比較的多い製品は、安全性と日持ちを高めるために衛生的な取り扱いがより重要になると指摘しています。

なお、今回の衛生評価は細菌の総数を見たもので、サルモネラなど特定の病原菌は調べていません。著者らは、この結果を、地域に根ざした燻製魚の品質を高めていくための最初の科学的な手がかりと位置づけています。

原著論文の著者・所属:Eko Cahyono(Politeknik Negeri Nusa Utara)、Frans Gruber Ijong(Politeknik Negeri Nusa Utara)、Yana Sambeka(Politeknik Negeri Nusa Utara)、Wendy Alexander Tanod(Politeknik Negeri Nusa Utara)、Frets Jonas Rieuwpassa(Politeknik Negeri Nusa Utara)、Novalina Maya Sari Ansar(Politeknik Negeri Nusa Utara)、Yosephina Margaretha Jawa Batafor(Institut Keguruan dan Teknologi Larantuka)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Eko Cahyono, Frans Gruber Ijong, Yana Sambeka, Wendy Alexander Tanod, Frets Jonas Rieuwpassa, Novalina Maya Sari Ansar, Yosephina Margaretha Jawa Batafor Holistic Quality Assessment of Traditional Smoked Fish from the Sangihe Islands: Proximate, Sensory, and Microbiological Profiles. Journal of Nutrition Explorations 2026-08-07. DOI: 10.36568/jone.v4i3.743. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。