著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Tropical Animal Health and Production

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

熱帯・亜熱帯の羊の生産では、乾季に牧草が不足するため、保存した飼料が欠かせません。サイレージは、刻んだ植物を密封して発酵させた保存飼料です。サトウキビは収量が多く育てやすいため、サイレージの材料として広く使われています。一方、著者らによれば、サトウキビのサイレージはタンパク質が少なく、アルコール発酵が起きやすく、保存中に乾物(水分を除いた成分)が失われやすいという弱点があります。

そこで研究チームが着目したのが、ワサビノキとも呼ばれるモリンガ(Moringa oleifera)です。モリンガはタンパク質を多く含み、成長が速く、乾燥に強い植物とされています。研究チームは、サトウキビのサイレージの一部をモリンガのサイレージに置き換えても、子羊の枝肉や肉の品質が保たれるかを調べました。枝肉とは、皮や内臓などを除いた食肉用の胴体部分のことです。

どのように調べたか

実験はブラジル・サンパウロ州で行われ、6か月齢の雄の子羊16頭(サンタイネス種とドーパー種の交雑種)が使われました。子羊は8頭ずつ2つのグループに無作為に分けられました。一方のグループにはサトウキビのサイレージを、もう一方にはサトウキビとモリンガを乾物の重さで半分ずつ混ぜたサイレージを与えました。どちらの餌にも市販の配合飼料が加えられ、粗飼料と配合飼料の割合は60対40にそろえられています。

子羊は15日間の慣らし期間の後、60日間にわたって飼育・測定されました。餌の摂取量は、個体を識別できる電子給餌システムで記録されました。試験の終わりには、絶食後の体重、枝肉の重さ、内臓の重さ、部位ごとの肉の重さが測られました。肉については、pH、色、加熱したときに失われる水分などの量(加熱損失)、機械で測った硬さ、成分組成、脂質の酸化の程度が調べられました。

主な結果

60日間の平均の乾物摂取量は、2つのグループで差がありませんでした。ただし、摂取量の時間的な変化のしかたは餌によって異なりました。試験の終盤にはどちらのグループでも摂取量が減りましたが、その減り方はモリンガを含む餌のグループのほうが緩やかでした。

モリンガを含む餌を与えた子羊は、サトウキビだけの子羊に比べて、絶食後の体重と、解体直後の温かい状態の枝肉の重さが低くなりました。冷却後の枝肉の重さの平均は、サトウキビのグループが16.8キロ、モリンガを含むグループが14.7キロでしたが、この差は統計的に意味のある水準には達しませんでした。第一胃(ルーメン)と腸の重さも、モリンガを含むグループで低くなりました。一方、心臓や肝臓などの臓器の重さ、枝肉の形の評価、脂肪の付き方、解体後のpHには差がみられませんでした。

肉の質については、多くの項目で差がありませんでした。水分、タンパク質、脂質、灰分といった成分組成、肉の色、硬さ、部位ごとの肉の重さは同程度でした。脂質の酸化の目安となる値にも差はなく、モリンガで酸化が進んだ様子も、抑えられた様子も確認されませんでした。異なったのは加熱損失で、モリンガを含むグループのほうが多くなりました。著者らはこの結果から、肉が水分を保つ力が低かった可能性を指摘しています。ただし、pHや成分組成には差がなかったため、その仕組みは分かっていないとしています。

研究が示すこと

サトウキビのサイレージの半分をモリンガのサイレージに置き換えたところ、肉の成分や色、硬さなど多くの品質項目は保たれました。その一方で、体重や枝肉の重さが低くなり、加熱損失は多くなりました。

著者らは、モリンガをサトウキビのサイレージに全面的にまさる代わりの飼料とはみなしていません。熱帯の子羊の生産で飼料の選択肢を広げる、補完的な飼料と位置づけています。また、この研究では経済性や食べたときのおいしさは評価されていない点も述べています。

原著論文の著者・所属:Gustavo Delmilho(Center for Nuclear Energy in Agriculture (CENA), University of São Paulo (USP), Piracicaba, São Paulo, Brazil. [email protected])、Adibe Luiz Abdalla(Center for Nuclear Energy in Agriculture (CENA), University of São Paulo (USP), Piracicaba, São Paulo, Brazil; Center of Carbon Research in Tropical Agriculture (CCarbon), University of São Paulo (USP), Piracicaba, São Paulo, Brazil)、Natana Mendes Marques(Animal Science Institute (APTA/SAA), Nova Odessa, São Paulo, Brazil)、Theyson Duarte Maranhão(Center for Nuclear Energy in Agriculture (CENA), University of São Paulo (USP), Piracicaba, São Paulo, Brazil)、Vagner Ovani da Silva(Center for Nuclear Energy in Agriculture (CENA), University of São Paulo (USP), Piracicaba, São Paulo, Brazil)、Lumena Souza Takahashi(Center for Nuclear Energy in Agriculture (CENA), University of São Paulo (USP), Piracicaba, São Paulo, Brazil)、Leticia dos Santos Menezes(Animal Science Institute (APTA/SAA), Nova Odessa, São Paulo, Brazil)、Mauro Sartori Bueno(Animal Science Institute (APTA/SAA), Nova Odessa, São Paulo, Brazil)、Rafael Silvio Bonilha Pinheiro(Department of Animal Production and Veterinary Medicine, Faculty of Veterinary Medicine and Animal Science, São Paulo State University (UNESP), Botucatu, São Paulo, Brazil)、Márcia Mayumi Harada Haguiwara(Institute of Food Technology, Meat Technology Center, Campinas, São Paulo, Brazil)、Ricardo Lopes Dias da Costa(Animal Science Institute (APTA/SAA), Nova Odessa, São Paulo, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Gustavo Delmilho, Adibe Luiz Abdalla, Natana Mendes Marques, et al. Effects of partial replacement of sugarcane silage with Moringa oleifera silage on carcass traits and meat quality of lambs. Tropical Animal Health and Production 2026-09-01. DOI: 10.1007/s11250-026-05309-x. 原著ライセンス:CC BY.